
EPAの外国人、介護の「特定技能」の在留資格へ移行可能に 厚労省発表
当事者のインドネシア人やフィリピン人、ベトナム人にとっては朗報と言えるかもしれない。
EPA(経済連携協定)の枠組みで来日し、4年間にわたって施設などで介護サービスに従事したキャリアを持つ外国人は、試験を受けることなく在留資格「特定技能」へ移行できる − 。
厚生労働省がそうアナウンスした。10日に「特定技能」の介護の運用要領を改正。求められる技能の水準、日本語能力の水準を既に満たしているものと認められると書き込んだ。
厚労省はあわせて、在留資格を変更する際に必要となる手続きについて説明する資料も公表した。
外国人が「特定技能」のビザを得るためには、介護の技能と日本語能力を測る試験をクリアしなければいけない。厚労省は今回、EPAの外国人がそもそも現地の看護過程などを修了してきた人材であること、日本の現場で実際に働きながらスキル、コミュニケーション力を磨いてきた人材であることを考慮したという。もっとも具体的な要件として、
○直近の介護福祉士国家試験において合格基準点の5割以上を得点している
○直近の国試において全ての試験科目で得点があるの2つを設定している。
EPAの外国人はこれまで、4年間の滞在中に国試に合格しなければ帰国を余儀なくされていた。今後はそうしたプレッシャーは軽くなりそうだ。「特定技能」の5年の間に介護福祉士を取れば、在留期間の上限はなくなり家族を呼び寄せることなども可能となる。
EPAの外国人、要件次第で在留資格「特定技能」へ移行可能に
介護福祉士国家試験に合格できなかったEPA介護福祉士候補者の在留資格が、特定技能1号へ移行できることになり、さらに最長で5年の在留資格を得ることが可能になった。(*1)
(*1)在留資格「特定技能1号」への移行について
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000507781.pdf
このことで胸を撫で下ろしている、EPAの外国人を受け入れている施設もあるのではないだろうか。
また国にとっては、介護人材不足を少しでも補うことができる。
EPA(経済連携協定)の受け入れは、インドネシア(平成20年度~)・ フィリピン(平成21年度~)・ ベトナム(平成26年度~)からはじまり、10年以上が経過した。(*2)
(*2)経済連携協定に基づく受入れの枠組「参考資料1」
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000493556.pdf
当初の滞在期間は、日本の介護施設などで働きながら4年目に介護福祉士国家資格受験を行い、不合格者は帰国。
もしくは、一定の要件を満たす者は1年間滞在期間を延長し、再受験という流れであった。(不合格者は帰国)
これが今回、不合格者でも日本語能力や介護技術が備わっているとして、技能試験及び日本語試験等が免除され、特定技能1号へ移行できるようになった。そのため5年間在留資格が延長できる。
*在留資格:「特定活動」→「特定技能1号」→介護福祉士国家資格取得「介護」
将来を見据え、受け入れ態勢の整備も念頭に
日本に残り、もっと介護分野を学びたいと考えている外国人にとっては嬉しい改正である。
また外国人が日本で活躍してくれることは、日本人からすれば大変ありがたいことだ。
しかし、EPAの外国人たちは、もともと日本の人材不足を補うことが目的で来日しているのではない。
皆、自国の看護師や介護の資格を保有する者であり、二国間の経済活動の連携の強化を図るために日本で活動しているのだ。
そのため日本の介護福祉士国家資格を取得後は、自国へ帰って自分のビジョンを叶えたいと思っている者もいると考える。
今回の在留資格の移行で、日本に残りたいというEPAの外国人が一人でも多くいることを願う。
また、これまでに試験不合格で帰国した元EPAの外国人も、要件(*1)を見ると同様の条件のようだ。
直近の試験結果通知書で判断されるのならば、既に帰国している者も再度試験を受けずに在留資格「特定技能1号」を取得することができる。
さらに帰国前と同じ施設で働くことができれば、当時の利用者たちも懐かしいと喜ぶであろう。
因みにEPA外国人のこれまでの全受験者数は94,610人・合格者数69,736人。
数字から読み取ると、24,874人の者が帰国していることになる。(*3)
(*3)第31回介護福祉士国家試験結果の内訳
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/000493552.pdf
今後、外国人労働者が増えていくと予想される。施設だけでなく地域も一体となって外国人やその家族をサポートし、住み心地が良く働きやすい環境を整えていかなければならないと考える。