介護離職防止はケアマネの役割なのか〜勤め先の理解や支援を得られることが第一では?

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介護離職防止はケアマネの役割なのか〜勤め先の理解や支援を得られることが第一では?

ケアラー支援、介護保険の対象として明確に 淑徳大・結城教授ら介護離職防止へ提言

介護離職の防止≒家族介護者の支援。こうした認識で法的・制度的な対応をとるよう呼びかけている。

淑徳大学の結城康博教授を主査とする研究班が26日、居宅介護支援の事業所に利用者の家族の介護離職について尋ねた調査の結果を公表した。

介護離職を防ぐことはケアマネの役割か?

大半の事業所が「そう思う」を選び、居宅サービスや地域密着型サービスの柔軟性を高めるべきだと答えた。一方、あくまでも本人への支援が責務で家族の問題にまでは踏み込みにくい、といった慎重な見方もあったと報告されている。

研究班はこれらを踏まえ、現行法の考え方を改めるべきだと提言。家族介護者への支援も介護保険制度の目的として明確に位置付け、もっぱら本人の介護必要度に着目して給付を決める今の仕組みを変えるべきだと主張している。

□「ケアマネはジレンマを抱えている」

この調査は、千葉県内の全ての居宅(1866事業所)を対象として昨年10月に行われたもの。42%の783事業所から有効な回答を得たという。千葉県は首都圏に通勤するサラリーマンが多く、農村部から大都市圏まで幅広い地域性を併せ持っているため、有意なデータを得やすいモデル地域として選ばれた。

結果をみると、これまでに主な家族介護者が介護離職に至ったケースが「あった」とした事業所は30.0%だった。「働き方を変えれば防げたか?」との問いには、57.4%が「防げなかった」と答えている。

介護離職の防止はケアマネの役割かと尋ねたところ、89.4%が「そう思う」を選択した。「そう思わない」の10.6%の理由では、「家族の問題に介入する責任は持てない」が最多。加えて、「利用者本人の支援が主たる業務だから」「利用者本人の意向を重視するから」などの意見もみられた。研究班はこれを踏まえ、「ケアマネは介護離職を防ぐ対応の必要性を感じつつジレンマを抱えている」と分析している。

介護離職を防ぐために必要なこと(複数回答)では、「地域密着型サービスの充実」が552事業所で最も多かった。以下、「施設への入所」が398事業所、「企業の就労継続支援の充実」が379事業所と続く。

「居宅サービスの利用を柔軟にできるようにすべきか?」との質問には、92.0%が「そう思う」。ケアマネの法定研修で家族介護者への支援を充実させることの必要性については、67.0%が「ある」との考えを示している。

□「ケアマネの業務負担への配慮も」

こうした結果を受けて研究班は、「家族介護者も介護保険の対象者として明確に位置づけ、いわゆる『ケアラー』の存在を社会的・制度的に認知させるべき」と提言。家族介護者の就労状況や健康などを十分に勘案せず、レスパイト機能も弱い現行制度を再考すべきと呼びかけた。

また、「家族介護者が社会的に支援の対象であると認められれば、徐々に職場内で『介護の相談をすることに抵抗感がない』という雰囲気が芽生えていくのではないか」などと利点を説明している。

主査の結城教授は、「ケアマネは日々の仕事に追われており、何でも全て任せればいいという話ではない」と指摘。属人的にならず社会全体で機能するシステムを作るため、ケアマネの業務負担の問題にも向き合うべきと訴えている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg646.html

ケアマネに相談する前に離職する介護者も

家族の介護のために離職をする介護者(家族)が近年取り上げられているなか、ケアマネージャーが認識する介護離職の実態について、介護離職問題調査研究会が「介護離職防止のための社会システム構築への提言」を公表した。(*1)

(*1)「介護離職」防止のための社会システム構築への提言 ~中間提言~ ケアマネジャーへの調査結果から
http://www.nikkeicho.or.jp/wp/wp-content/uploads/kaigo-tyukan1.pdf

この資料のケアマネージャーへのアンケートに、「4.孤立を防止するための相談窓口の必要性について」の結果(*1・P26)が掲載されているのだが、回答例のなかに「ケアマネに相談する前の相談窓口が必要ではないかと思う」「サービス利用後の離職率はほぼ0に等しい。介護サービス前に社会的支援があれば、未然に防げるのではないか。」という記述がある。

つまり、介護保険制度の利用を始める前に、介護離職をしてしまう家族(介護者)もいるのだ。怪我や病気で急に介護が必要になった場合や、介護者が親や親族の介護の必要性とその状況を把握した段階で起こると個人的には考えるが、この時に相談する窓口がない(もしくは知らない)場合、一人で悩んだ末に介護離職になる。

頼れる親族の少なさから介護離職に追いやられるケースも

自身が関わった利用者の介護者にも、介護離職をしていたケースがあった。

50代のA氏は、母親の介護をしながら仕事を続けていたが、父親も介護が必要な状態になり、仕事を辞めたと話していた。また、30代のB氏は、父親と二人暮らしで父親の介護をするために仕事をしていなかった。他にも、50代のC氏は、母親と二人暮らしで母親の介護をしながら仕事をしていたが、C氏も体調を崩し仕事を辞めたとのことだ。

どの介護者も妻や兄弟がいない(もしくは疎遠である)ため、一人で親の介護をし、親の年金でどうにか生活していたと記憶している。介護保険サービスを利用するまでは孤立していたというのも三者の共通点だ。

他にも、介護保険サービスの通所利用を始めたが、フルタイムで仕事を始めるには毎日サービスを利用しなくてはならない。パートタイムで仕事をするにしても、週に3日くらいはサービスを利用する必要がある。

しかし毎日利用すると利用限度額を超えて自己負担分が出る、週に2~3回の利用でも施設のお昼代などを合わせると月に1万~2万円の出費があるという理由で、皆週に1度の利用であった。
いずれもレスパイト(一時休止)として介護保険サービスを利用する形であったのだ。

勤め先の理解が最大の介護離職防止では?

アンケートの回答のように、これが離職をする前(または介護が始まったと同時期)に介護保険サービスが利用できていれば、A氏・B氏・C氏は離職しなかったのかどうか考えてみた。

離職前に介護サービスが利用できることを知ることができた場合、フルタイムで継続して働くには最低8時間の介護サービスを毎日利用できなくてはならない。A氏は近隣の企業で仕事をしていたため朝・夕に訪問介護を利用すれば可能だが、C氏は通勤に片道約1時間かかる場所であったため、自宅近くの店舗などへ移動でもなければ難しい。

ロングで夕飯まで食べて帰れる通所サービスもあるが、そのサービス事業所が自宅近くになければ話にならない。または月曜~金曜までショートステイを利用し、週末だけ自宅で過ごすという方法もあるが、本人が納得しなければ困難だ。

こう考えると現在の介護保険サービスだけで介護離職を減少させるのは無理がある。ケアマネが介護者の離職問題を支援するにしても、サービスが伴わなければどうにもならない。

やはり、勤め先の企業の理解が最大の介護離職防止になる。朝の出勤時間を遅らせ、早帰りができる時短勤務が可能になれば、ある程度の介護離職は予防できると考える。

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