ケアマネ事業所の実地指導、チェック項目の削減へ〜同時に帳票類の削減も課題では?

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ケアマネ事業所の実地指導、チェック項目の削減へ〜同時に帳票類の削減も課題では?

ケアマネ事業所の実地指導、チェック項目を4分の1に大幅減 厚労省

厚生労働省が先月末に公表した介護保険の事業所に対する実地指導の新たな運用指針 − 。自治体が調べるべきチェックポイントが最も少なく設定されたのは居宅介護支援だ。

新たな運用指針で示された居宅の「標準確認項目」は27項目。約100項目あった以前の「実地指導マニュアル」のおよそ4分の1となっている。訪問介護や通所介護など他のサービスも大幅に減ったが居宅が一番だ。

「サービスの質の確保や利用者の保護といった観点から特に重要な項目だけに絞り込んだ」。厚労省はそう説明する。

狙いは実地指導の効率化だ。事業所の数は増え、地域の状況は以前にも増して複雑になっている。一方で自治体の体制には限界があり、あらゆる要素を網羅的に調べ上げる実地指導はもはや難しい。

厚労省は新たな運用指針で、「標準確認項目」とそれに対応した「標準確認文書」を規定。不正が疑われるなど特別な理由が無い限り、これ以外のチェックは行わないよう自治体に呼びかけた。

「今回の措置でチェックできなくなる要素も出てくる」。厚労省はそう認めたうえで、「実地指導の効率を上げることの方が重要と考えた」とアナウンスしている。「ここだけは必ず」というポイントのみに敢えて限定し、自治体により多くの事業所へ入ってもらうことを優先させた形だ。

□27項目の中身は?

居宅の「標準確認項目」は、大きく「人員」と「運営」の2つに分かれている。

「人員」は4項目だけだ。「職員数は適切か」「専門員証の有効期限は切れていないか」「管理者は常勤専従か。兼務体制は適切か」。これらを勤務実績表や資格証などで確かめるルールとなっている。

残りの23項目は「運営」だ。

「利用者や家族への説明・同意の手続きをとっているか」「重要事項説明書の内容に不備はないか」「定期的にモニタリングを行っているか」「サービス担当者会議を開催し、担当者から意見を求めているか」。

これらを重要事項説明書や利用契約書、アセスメントシート、ケアプラン、モニタリング記録などでチェックすることとされた。「集合住宅などで利用者の意思に反し、同じ敷地内の事業所のみを位置付けていないか」との項目もある。

このほか、運営規程や従業員の秘密保持誓約書、研修計画などもチェックの対象とされた。チラシやパンフレットなどを基に、「広告が虚偽・誇大になっていないか」も調べられる。苦情を受け付ける窓口があるか、事故が起きた際の対応方法が定まっているか、なども確認する決まりとなっている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg628.html

ケアマネの確認項目、27項目に削減へ

先月、質より数をこなすことに重点を置かれた各事業所の実地指導の確認項目が一新され、「標準確認項目」が厚労省により規定された。ケアマネのいる居宅介護支援事業所も同様に、約100項目あった確認項目が27項目に絞り込まれた。(*1・P8)

(*1)介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2019/0531131609781/ksvol730.pdf

取り扱う書類の多いケアマネたちにとっては大変ありがたいことである。

書類の多さから入力漏れが生じてしまうことも

ケアマネの日常業務のひとつに、利用者や家族のニーズに沿った利用計画が記されている「サービス計画書」に基づいた「サービス利用票」と、利用料金の書かれている「サービス利用票別表」などを毎月発行するという業務がある。

この「サービス利用票・別表」を利用者の自宅へ訪問して内容を説明し、同意を得てサインと印鑑をもらう。その後次の月までにモニタリングを行い、「サービス計画書」に書かれている短期目標に対しての達成度を確認し、継続するか目標の変更をするかなどを見極め、次の月の「サービス利用票」に反映させていくのだが、このモニタリングの記録が抜けてしまうことがある。

また利用者(代筆可)のサインや印鑑をもらい忘れることもあるのだが、実地指導ではこのモニタリングや同意のサインは必ずチェックされる。今回の「標準確認項目」のなかにもあったが、実地指導の前には全て漏れがないか確認を行う。これが膨大な量であるため、かなりの時間を要す。

実際にモニタリングの漏れが多く、介護報酬の返還請求を受けたケアマネもいた。毎月利用者の自宅へモニタリングやサインと印鑑をもらいに行っていても、記録と印鑑がなければ行ったことが証明できないのだから仕方がない。

帳票類の削減も一つの課題では

とあるA居宅介護支援事業所では、モニタリング記録を介護の基幹ソフトへ入力していたが、一定のタイミングで印刷し、利用者の個人ファイルへ綴じる作業が出てくると思われる。B居宅介護支援事業所では、モニタリング表に手書きで記入し、そのままファイルへ綴じていた。C施設ケアマネは、エクセルへ入力をし、定期的に印刷をしていた。

また、ケアマネは利用者に渡した「サービス利用票」の控えを給付管理用に持っている。サービス事業者から「サービス提供票」が届いたら、実績内容を確認して「サービス利用票控え」に転記していくためなのだが、この「サービス利用票控え」にモニタリング記録をする欄を設けると、記録忘れや印刷忘れがなくなると考える。

とにかく書類が多すぎるケアマネ業務。実地指導の確認項目が減るのはうれしいが、そもそも帳票類が減れば、実地指導で準備する手間も省けるというものではないだろうか。まとめられるものは簡潔にしていただきたい。そうすれば、うっかりミスも少しは防ぐことができる。

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