介護予防のため、ポイントの付与などで通いの場への参加促す〜それらを担当する人員確保が課題か?

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介護予防のため、ポイントの付与などで通いの場への参加促す〜それらを担当する人員確保が課題か?

介護予防の“通いの場”、参加促すポイント付与を推進 リハ職らの関与も 厚労省

まだぼんやりとではあるが具体策の輪郭が見えてきた。

体操などの“通いの場”の開催を柱とする介護保険の「一般介護予防事業」をめぐる有識者会議 − 。厚生労働省は19日の会合で、より効果的な展開に向けた施策の方向性を示す中間報告の骨子案を提示した。

多くの高齢者に“通いの場”へ参加してもらうため、一定のリターンがあるポイントの付与や有償ボランティアなどをさらに推進していく考えを盛り込んだ。いわゆる「インセンティブ交付金(*)」を使って取り組みを促しつつ、運用のノウハウも提示して横展開を図る構想を描いている。

加えて、リハビリテーション専門職や看護職などに定期的に関与してもらう仕組みの強化に力を入れる方針も打ち出した。

* インセンティブ交付金
正式名称は「保険者機能強化推進交付金」。自治体の努力や成果、取り組み状況などに応じて配分を決めるルールで、「頑張ったところが報われる仕組み」として2018年度から創設された。今年度の財源は200億円。国が都道府県向け、市町村向けの評価指標をそれぞれ定めている。

厚労省は中間報告を来月にまとめる予定。その後、年末にかけてディテールを詰めていく計画だ。早ければ来年度から具体策を実行に移す。

(引用元より一部抜粋)

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg690.html

通いの場への継続的な参加が介護予防に効果ありとの結果

厚労省が2019年7月19日に、第3回一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会を開催した。検討会の構成員が調査を行った参考資料では、介護予防(主に通いの場)に関するエビデンスの現状について、以下のようにまとめている。

通いの場参加はフレイル発症を抑制
サロン参加3年以上で特に効果が大きい

※引用:「通いの場」の介護予防効果 検証はどこまで進んだか(P13)

まとめ

• 短期集中的な運動介入では、その効果の持続は難しく、要介護の抑制効果も限定的となった。
• 通いの場の形態としては、運動教室、食事会、茶話会、趣味活動など様々であり、いずれも 要介護の抑制効果が認められた。
• ボランティア活動にも要介護抑制の効果が認められており、継続した社会参加などが要介護の予防に重要となると考えられた。
• 運動プログラムとしては、レジスタンス運動の要素を組み入れることで、身体機能向上、ADL向上、転倒予防などの効果が得られやすいことが示された。
• 運動プログラムは、総実施時間が25時間以上(概ね1年以内)となるように設定することで、各種アウトカムがより改善しやすい結果となった。

※引用:通いの場に関するエビデンス 通いの場への参加や運動プログラムの効果(P9)

どちらも通いの場へ継続的に参加すると、介護予防の効果が得られるという結果を示している。通いの場の実施内容は、サロンでも運動教室や趣味活動、社会参加でも改善が望めるようだ。そのため国は、一般介護予防事業等の推進をしていく方針である。

方策としては、住民主体の通いの場への参加を促すために、ポイントの活用をさらに進めていくとしている。多くの人がボランティアの担い手として活躍できるように、有償ボランティア以外にもポイントの付与を検討していく方向だ。(*1・P19)

(*1)一般介護予防事業等の推進方策について
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000529367.pdf

現在、介護予防に資する取組みへの参加やボランティアなどへポイント付与を行っている市町村は全体の25%である。今後有償ボランティアに限らず、多角的にポイントが付与できる仕組みが構築されていけば、さらに実施する市町村は増えていくと考える。

付与されるポイント、各自治体での利用例は?

ところで、気になるのは付与されたポイントが何に使えるかだ。このポイントの使い道が、参加率を左右すると思われるため重要だ。

参考資料にある東京都稲城市では、介護支援ボランティアを行うとポイントが付与され、そのポイントは介護保険料に充当される。(*1・P17)最大で年に5,000円までだが、介護保険料が軽減されるのは喜ぶ人も多いのではないだろうか。

自身が知っている有料老人ホームでは、独自のボランティアポイント制度を行っており、貯めたポイントを本人や家族がホームを利用する時の前払金などに充当することができる。また居住地の自治体では、地元の商店街で買い物をするときにポイントが使えるようになっている。

他にも横浜市・相模原市・藤沢市・平塚市では換金や観戦チケット、神奈川県内の他の市町村では神奈川産品との交換(*2)、埼玉県春日部市では市内共通商品券(*3)、東京都八王子市では八王子市内で利用できる買物券や優待利用券(*4)との交換など多彩だ。

(*2)ボランティアポイント制度に係る本県の考え方 神奈川県保健福祉局 福祉・次世代育成部高齢福祉課 平成24年5月
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/u6s/cnt/f430007/documents/h24.pdf

(*3)介護支援ボランティアポイント事業/春日部市公式ホームページ
http://www.city.kasukabe.lg.jp/kenko_fukushi/kaigoyobou/kaigosihenvolunteer.html

(*4)八王子夢パックカタログ 八王子市福祉部高齢者いきいき課
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/welfare/004/004/001/p003861_d/fil/yumepakku.pdf

ボランテイアを担当する人員確保が課題か?

そしてもうひとつ気になる点が、施設で有償ボランティアを行う場合の受入体制である。施設にボランティア担当者がいないと、せっかく希望者がいてもスムーズに事が運ばない。

事前打ち合わせやボランティア保険の説明、個人情報の取り扱いに関する同意書への説明とサインのほか、当日の案内や次回の予定の把握など、結構やることは多い。ボランティアの人数や活動内容が増えるほど把握していくのが煩雑になっていくため、受入を行う担当者を作り、窓口をひとつにしておく必要がある。

人員が足りない施設では、このボランティア担当者を設置するのも困難を要するかもしれない。できれば参加する者は、継続して同じ施設でボランティアを行ってもらえると、毎回の説明が簡素化されるため施設側もありがたい。

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