
横断的な「断らない相談」の展開へ新制度を創設 厚労省、来年にも法改正へ
多様化・複合化している地域の支援ニーズに市町村がより柔軟に対応できる環境を整備するため、厚生労働省は新たな制度的枠組みを創設する方針を固めた。
介護、障害福祉、子育て支援、生活困窮者自立支援など、既存の制度の範囲内だけに使途が限定されている国からの交付金について、必要に応じて横断的に活用できるようルールを改める。5日の有識者会議に提示した報告書の素案にこうした考えを盛り込んだ。
来年の通常国会に関連法案を提出する計画。早ければ2021年度にも実施できるよう調整していく方針だ。
地域共生社会の実現に向けた施策の一環。従来の縦割りを超えて対応する「丸ごと相談」「断らない相談」などの普及につなげる狙いがある。
現行のルールは融通が利かず取り組みにくい、といった声が自治体からあがっていた。例えば、窓口機能を担う地域包括支援センターへの交付金が包括の業務に対してのみ支給されているため、子育てや生活困窮などの相談に職員が一体的に応えられないケースがあるという。
厚労省は現場の仕事を妨げるこうした障壁を取り除く考え。実際にどんな相談体制を敷くかは個々の市町村が実情を踏まえて決めていく。法改正が実現すれば、包括のケアマネジャーや社会福祉士などの自由度を上げることも可能となる。
よりスムーズな窓口対応の実現に向けて
今月5日の有識者会議で、「地域共生社会の実現に向けて(当面の改革工程)」(*1)に基づき、既存の制度の範囲内だけに使途が限定されている国からの交付金を、必要に応じて横断的に活用できるようルールを改めるとした素案を報告書に盛り込んだ。
(*1)厚労省「地域共生社会」の実現に向けて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184346.html
高齢化や人口減少が進み、地域・家庭・職場という人々の生活領域における支え合いの基盤が弱まってきているという背景があるなか、縦割りだけの支援では多様化しているニーズに対応しきれない。
そのため対象者別・機能別に整備された公的支援を、様々な分野の課題が絡み合って複雑化しているケースにも対応できるようにするのが目的である。これにより、複合的な支援を必要とするといった困難ケースへの、スムーズな対応が可能になる。
横断的な相談対応で相談者の安心度も高まる
例としては、
1. 子育てをしながら、親の介護をしている。
2. 高齢者の親と障害の疑いのある無職の子供が同居している。
など、多岐に渡る。
現行の相談窓口は、各自治体の地域包括支援センター(高齢者)・子育て世代包括支援センター(子供)・基幹相談支援センター(障害者)などであり、相談内容に合わせてそれぞれ足を運び、事情を説明し支援を受ける形である。
例えば1の場合、子育てと介護の両立で疲弊してしまったが、頼れる親族や知人などがいない。誰かに相談にのってもらいたいといったときに、子育て世代包括支援センターと地域包括支援センターに相談に行かなくてはならない。
また2の場合では、地域包括支援センターと基幹相談支援センターの介入が必要であるため、やはり親と子の相談を別々の支援センターで行う。
緊密な連携を図っている自治体もあるだろうが、相談に行く当事者にとっては活用しづらい。できれば一ヶ所に相談して、まるごと支援してもらえることが望ましいのは確かだ。
今回の素案が実施されるようになれば、横断的な相談対応が可能になり支援の切れ目が減少するとのこと。どこに相談しても最適な支援が行われる社会は、安心して暮らせることに繋がる。
サービス事業所にも同じような改革を望む
また、サービス事業所もさまざまなケースに対応できるようになればいいと考える。以前、ある研修会に参加したときのことであるが、休憩時間に障害のある児童を受け入れてくれる施設はないか、協力を求める話しがあった。
現在障害のある児童がショートステイとして利用できる施設がほとんどなく、親たちが困っている。そのため介護施設も障害のある児童のために、空床を提供してほしいという内容であった。
こういったケースも、国の交付金が横断的に活用されるようになるのであれば、複雑な事務処理をなくして臨機応変に対応できないものだろうか。もちろん看護職員が常駐し、障害のある児童の対応に熟知した職員の配置などが必要であるとは思うが、可能になれば誰でも過ごしやすい開かれた地域社会になると考える。