介護職員処遇改善の新加算提案!どうなる利用者負担は?

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介護職員処遇改善の新加算提案!どうなる利用者負担は?

先日、国が検討を進めていると発表した、新たな介護職員の処遇改善加算であるが、現行の処遇改善加算に加え2段階で取得できるというこである。
現場の職員達には喜ばしい加算であるが、利用する側にとってはどうなのか考察してみたい。

処遇改善の新加算、同じサービスでも加算率は2段階 手厚い配置を評価 厚労省提案
ベテランを中心とした介護職員の賃上げに向けて来年10月に創設する新たな加算をめぐり、厚生労働省は、同じサービスの中でも2段階の加算率を設定する方向で検討を進めている。介護福祉士の手厚い配置が要件の加算を取得しているなど、人材の確保・育成に力を入れている事業所を相対的に高く評価したい考えだ。

10日に開かれた自民党の介護委員会で説明した。12日の社会保障審議会・介護給付費分科会で提案する予定。ここでコンセンサスを得て年内に具体像を決める。

厚労省は新加算について、サービスごとに異なる加算率を設けてリソースを配分していく方針を既に固めている。既存の「処遇改善加算」と同様の設計だ。サービスごとの加算率を定める際は、「勤続10年以上の介護福祉士がどれだけいるか」を指標として新たに用いる。

ただこの手法だと、努力して専門性の高い人材を多く育てている事業所とそうでない事業所の評価に差が出ない。このため関係者から、同じサービスの中でも取り組みに応じてリターンを変えるよう求める声があがっていた。厚労省はこうした要望に応える構え。新加算の増収分を事業所内でどう振り分けるかは、事業者に一定の裁量を与える方向で調整を続けている。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg80.html

介護保険改定における利用者負担の変化

今年は3年に1度の介護保険改定の年であったが、利用者にとって好意的な内容の改定はあっただろうか。
平成30年8月から、現役所得並みの世帯(年金収入等の合計所得額が 220万円以上)は介護保険の利用負担割合が3割となった。(*1)

(*1)平成30年8月から現役並みの所得のある方は介護サービスを利用した時の負担割合が3割になります
https://www.mhlw.go.jp/content/000334525.pdf

経済諮問会議の資料には(*2)平成30年度予算ベースで利用負担が3割の利用者は12万人とある。介護保険利用者のうち、約2.4%の利用者が3割負担という計算だ。

(*2)⾼齢化や⼈⼝減少の中でも持続可能な制度としていく P91
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg1/300419/shiryou2-5.pdf

次に介護保険サービスの加算について見てみたい。(*3)
全体の介護報酬改定の改定率は0.54%UPで、新設された加算が軒並み顔を揃えている。

もちろん介護サービスの質の向上と、在宅で安心して暮らせることを考えての加算であるが、中身は事業所の体制や基本報酬の改定が多く、利用者側が加算を選択できるものが少ない。

(*3)平成30年度介護報酬改定の主な事項について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000192300.pdf

処遇改善の新加算は利用者にどう影響する?

そして今回発表のあった新処遇改善加算の創設である。
現行の処遇改善加算でも料率が1.0%~13.7%であるが、(*4)更に新処遇改善加算が算定されることになると、経済的負担が出てくる利用者が増えると考える。

なぜなら「質の良いサービス」より「利用料の安いサービス」を基準に事業所を選んでいる利用者が現にいるからである。
介護職の労働環境を整備するための加算であるのは重々承知しているが、利用者が「利用料が高い」という理由で加算を取得している事業所を選ばなくなってはおかしな現象が起きてしまう。

(*4 P3)平成29年度介護報酬改定の概要(案)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000148970.pdf

加算の少ない事業所は負担が増す可能性も

極端な話し、要件を満たせない加算の少ない事業所に利用者が殺到し、介護職員は疲労困憊してサービスの質が落ち、加算の多い事業所では利用者の数が少なくゆとりある介護が行われる。
ゆとりのある事業所では利用者が減少するため規模を縮小し、業界では人手不足といいながら早期退職やリストラなどが行われたりしたら元も子もない。

国には利用者の経済的負担と介護職員の労働環境のバランスを図りながら、新処遇改善の加算の料率や負担元をどこにするのか考えていただき、利用者への周知も早い段階で行える手筈を整えてもらいたい。

今回の新処遇改善加算で3年連続増加する利用者負担であるが、いったいどれだけの施設が取得できる要件になるのか早く知りたいところである。

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