ケアマネの合格率、過去最低の10.1%!この数字が意味するものは?

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ケアマネの合格率、過去最低の10.1%!この数字が意味するものは?

第21回介護支援専門員実務研修受講試験が平成30年10月14日に行われた。

ケアマネ試験、合格率は過去最低の10.1% 合格者数は超大幅減
厚生労働省は11日、今年度の介護支援専門員実務研修受講試験の合格率が過去最低の10.1%だったと公表した。これまでで最も低かった2016年度の13.1%を3ポイント下回っている。

第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について

今回のケアマネ試験の結果は例年より注目を集めた。受験者数が4万9333人にとどまり、13万1560人だった前年度から一気に6割以上も減ったためだ。

ふたを開けてみれば合格率は最低。合格者数は4990人と5000人を下回った。2万8233人だった前年度のわずか17.7%。1年で8割以上も少なくなる衝撃の結果となった。厚労省の担当者は合格率の低迷について、「試験問題が例年より難しかった可能性は否定できない」としている。

合格者数を都道府県別にみると、最も多かったのは469人の東京都。最も少なかったのは29人の鳥取県で、昨年度はゼロだった100人未満のところが33県にのぼった。
https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg84.html

試験項目の改定

今回から試験問題の出題範囲が変更となり、大項目の「地域密着型通所介護方法論」と「介護医療院サービス方法論」が新設され、「介護予防訪問介護方法論」と「介護予防通所介護方法論」が削除された。
この発表は同年5月28日に通達され、ここから新たな項目の試験勉強に取り組む形となった。

平成30年12月4日に行われた合格発表では予想を上回る過去最低の合格率となり、試験問題の改定の影響がうかがえる。
今年度新たに実務研修の受講資格を得られた合格者は全国でわずか4,990人。(*1)
昨年度の28,233人と比べると18%に満たない数字となった。

(*1)第21回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00003.html

受験要件も見直しに

しかし単に試験項目の改定だけがこの結果を招いたのではない。
今回から受験要件の見直しも行われ、ホームヘルパーなどの資格をもとに介護職として勤務していた者や、無資格で介護業務に10年かつ1800日以上従事していた者が受験できなくなり、受験者数も激減したからだ。

毎年、合格ラインの基準点が変わる試験のため、受験者数の少ない中で介護支援専門員の人員を増やしたいのであれば、基準点を下げれば良いだけの話である。
このとこから、国の見通しを考察してみたい。

今回の改定にいたった経緯とは

介護サービス事業所の加算となるサービス提供体制強化加算が平成21年度の介護保険改定で導入された。
この加算の算定要件に「介護福祉士の割合」が含まれる。
そのため各サービス事業所では、従業員に介護福祉士の資格取得を推進し介護福祉士を増やしてきた。

介護福祉士の受験資格は、専門学校などを出ていない場合3年の実務経験が必要である。(*2)
平成21年度の介護改定から、介護の仕事に従事した者は、平成24年度に介護福祉士の受験資格に必要な実務経験日数を満たして介護福祉士の資格を得、その後介護支援専門員を目指す場合、今回改定になった介護支援専門員の受験試験に必要な「保健医療福祉分野での実務経験(医師、看護師、社会福祉士、介護福祉士等) が5年以上である者」の要件が昨年度で満たされたのである。

(*2)介護福祉士を取得するには
http://www.jaccw.or.jp/fukushishi/shutoku.php

キャリアアップを目指す介護福祉士や、過酷な労働で足腰を痛めた介護福祉士の将来的な働き方を見据え、国は実務経験が足りないため受験資格が得られないと言った不満が上がらない年数を確保し、今回の介護支援専門員の受験資格要件が改定になったと考える。

介護支援専門員の質の向上が問われる中、やみくもに介護支援専門員を増やす事をやめ、介護支援専門員の重要な役割を果たせる人材を増やすために「介護支援専門員を目指したいのならば、介護福祉士の資格を取得し経験を積みなさい」という意味に捉えることもできる。

また、介護支援専門員になるまでの間、最低でも通算して8年間は介護福祉士として実務にあたることになり、介護職離れを少しでも引き止める手立てにもなっているようだ。

この先も受験者数は減少傾向に?

一方で、介護福祉士の受験資格にも変化が現れている。
今まで養成施設を卒業した者は国家試験が免除されていたが、社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、平成29年度(第30回)からは養成施設を卒業した者も国家試験を受験することになった。(*2)
平成33年度末までに卒業する者に対しては5年の猶予期間があるが、平成34年度以降に養成施設を卒業する者は、国家試験に合格しなければ介護福祉士になることができない。

平成34年度の介護福祉士の数が減り、その5年後の平成39年の介護支援専門員の受験者数がまた減少するのであろうか。
団塊の世代が75歳以上になる平成37年に、利用者の立場に立った適切なサービスを支援できる介護支援専門員が一人でも多く活躍していることを切に願う。

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