ベテラン介護職員の賃上げ!事業所ごとに月8万円担保|その他職員への分配は?

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ベテラン介護職員の賃上げ!事業所ごとに月8万円担保|その他職員への分配は?

今回は、「ベテラン介護職員へ月に8万円担保」について考察してみた。

介護職の8万円賃上げ、“業界10年”も可 政府が決定 年収440万円ルールも
ベテラン介護福祉士らの処遇改善に向けて来年10月に創設する新たな加算について、政府は17日、現場を牽引する「リーダー級の介護職員」を主な対象とする方針を正式に決めた。

誰を「リーダー級」とするかは、基本的に事業者が裁量権を持って判断できるようにする。1つの法人に10年以上勤めている人だけでなく、“業界10年”の介護福祉士なども認められれば同様の恩恵を受けられる仕組みだ。個々の能力や職場内のバランスなどを考慮した柔軟な運用を可能とすることで、実情に合った無理のない賃上げが行われるようにする狙いがある。

政府はこのほか、月8万円の賃上げとなる人、あるいは賃上げ後に年収が440万円(全産業の平均賃金)を超える人が事業所内に1人はいなければいけない、とのルールを組み込むことも決定した。リーダー級の人材の賃金を他産業と遜色ないレベルまで引き上げる、と理由を説明している。

麻生太郎財務相と根本匠厚生労働相が折衝で合意した。10月からのスタートとなるため、来年度に投じられる公費は420億円。再来年度からはおよそ1000億円となる。制度のディテールは19日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)でまとめられる予定。

来秋の加算の新設は、深刻さを増す介護職員の不足を解消することが目的。ベテランが優遇されるのは、将来の生活を描きやすくしたりキャリアアップの道筋を分かりやすくしたりすることで、新規参入者の増加や離職の防止につなげていくためだ。厚労省はこうした施策の趣旨が損なわれないよう、加算の配分方法などに一定のルールを設ける方針を審議会などで固めていた。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg94.html

介護職員の処遇改善

平成30年12月12日に行われた第166回社会保障審議会介護給付費分科会で、介護職員処遇改善について(*1)話し合いが行われ、17日には政府によって方針が固められた。
介護離職ゼロに向け、最大の課題は介護人材の確保であるため、処遇改善を更に進める必要があるとのこと。

(*1)介護人材の処遇改善について
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000452469.pdf

介護業界全体の賃金は低く、労働条件が悪いため離職率が高いと言われているが、賃金に関しては介護業界全体というより介護職に限定されるようだ。

介護職員には賃金への加算項目が少ない

介護施設で考えると、確かに看護師やリハビリ職員、介護支援専門員などと比べると介護職員の賃金は低い。
この原因は介護職員が主体となる加算項目が少ないからと考える。

例えば病院の場合、医師の配置や技術が要件となっている診療報酬項目 (*2)が山ほどあり、しかも点数が高い項目ばかりである。
そのため医師がいることにより病院の報酬も増え、医師の賃金も高いという仕組みだ。

(*2)医師の配置や技術が要件となっている診療報酬項目
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1211-10e.pdf

これを介護保険の加算に置き換えてみると、看護師やリハビリ職員、介護支援専門員が主体となる加算項目は多いが、介護職の主体となる加算が少ない。
主体となっていなくても、すべての加算に関わりを持つ介護職員の働きが報われていない状況だ。
今回の「ベテラン介護職員へ月に8万円担保」の加算が介護職主体の加算であるのは喜ばしいことである。

「ベテラン介護職」にある落とし穴

しかし「ベテラン介護職」というところに引っ掛かりを感じている現場職員は多い。
ベテランであっても業務遂行能力に欠ける職員もいるからだ。

このため事業主は「その他」の介護職員にも配分をしなければ、勤続10年(業界10年)未満の職員から不満が出ることになる。
さもなければ、10年未満の職員は10年以上の職員が多くて職員全員に加算を分配している事業所へ転職してしまう。

事業主に委ねられてしまう部分も

また、今回の加算が新人職員へも分配されるようにしなければ、新規介護職員の確保にはつながらない。
公費で1,000億円投じられる新加算、その使い方は事業主の采配にかかっている。

定期的なベースアップがほとんどない事業所が多い介護業界だが、今回の加算で定期的なベースアップや千円単位でのベースアップを約束する事業所が増えることを願う。

介護職は他介護職や他職種と連携を図りながら働く職種である。
今回の加算で職員間がぎくしゃくして働きづらくならないように、事業主には職員全員が潤い、就職希望者も増える配分を望む。

果たして今回の加算は、例外的かつ経過的な取扱いであり恒久的ではない措置なのか、その場合いつまで行われるものなのか、早急に知りたいところである。

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