業界初!医療・介護施設内に資格の分校〜そのメリットと理想像とは?

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業界初!医療・介護施設内に資格の分校〜そのメリットと理想像とは?

介護の学校を経営する日本総合福祉アカデミーでは、医療や介護現場などの空きスペースに分校を設け、介護関連の資格を取得できる仕組みを展開している。現在、全国に100ヶ所以上あり、3年後には300ヶ所にまで拡大予定とのこと。介護現場では、この分校を開設するにあたりどのようなメリットがあるだろうか。

近くて便利! 医療・介護施設内に資格学校 業界初の研修モデル、全国100ヵ所超に

「皆さんが働いているところに“学びの場”が存在するべきなんじゃないか」

そう語るのは介護の資格学校「日本総合福祉アカデミー」を展開するガネットの藤田達也社長だ。特養や有料老人ホーム、病院などの空きスペースに「分校」を設ける業界初のモデルで注目を集めている。分校では実務者研修や初任者研修、喀痰吸引等研修、各種国家試験対策講座などを展開。介護職員のキャリアアップを後押しし、人材の確保に貢献していく仕事を大きくしようと汗をかいている。

既に分校は全国100ヵ所を超えたという。このモデルの仕組みや魅力、今後の展望などについて詳しく語ってもらった。

(中略)

□もっと教育コストを捻出する必要性を

ーどんな法人が取り組んでいる?

今はだいたい社会福祉法人が5割、民間企業が4割、医療法人が1割です。施設・事業所の中だけでなく、近隣で相応しい場所を紹介して頂くケースも珍しくありません。今のところ地域で中核的な役割を担う施設が主体となるケースが多いです。複数の法人が足並みをそろえ、「この地域に1校」とお声がけ頂くケースもありました。

ー講座の実施はすべて御社で?

我々は講義内容の設計、講師の派遣、教材・機器の確保、行政とのやり取りなど、分校の運営に必要な一連の業務を請け負います。その施設のベテラン介護福祉士さんなどに、一定のトレーニングを経て講師としてご活躍頂く仕組みも作りました。我々が登壇費をお支払いし、新たなキャリアステージへの移行やダブルワークを後押ししています。

ー分校の受講費は誰が支払う?

施設側が受講生より多く負担するケースがほとんどです。資格取得を促進し、人材創出を後押しする上では、職員の金銭的負担感を取り除くことが非常に有効であることを、我々も施設側に繰り返し働きかけてきました。事業者がしっかりとお金を捻出し、職員が継続的にキャリアアップしていける環境、離職につながらない環境を主体的に作っていくことが、いま強く求められていると感じます。

ーまだそうなっていない?

他の業界では既に、職員の教育研修に大きなコストをかける企業がかなり増えています。かなり常識的な話ですが、介護業界では圧倒的に少ない…。人材不足の大きな要因の1つではないでしょうか。ここはちゃんと訴えていくべきところです。

ー今後の展開は?

分校はいま全国に104ヵ所あるのですが、これを向こう3年で300ヵ所まで拡大する計画です。個々の教室で受けられる講座・講義の幅を広げたり、教育の質をさらに高めていくことが重要なミッションになるでしょう。ネットをより効果的に活かせる映像(動画)連携型eラーニングシステムへの投資も思い切って進めます。外国人が増加した際に教育機会を確保することも重要ですから、様々な動向を見ながらスピード感をもって始められるよう準備しています。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg106.html

実務者研修への負担減

2016年から介護福祉士の国家受験資格に、実務経験3年以上の他に「実務者研修修了者」が義務付けられた。(*1)このため3年の実務経験を経て介護福祉士の資格を取得しようと考えている者は、約6ヶ月の研修を受講しなくてはならない。(養成施設により介護職員初任者研修・訪問介護員養成研修修了者は、既定の6か月よりも早く修了できる場合あり)

(*1)公益財団法人社会福祉振興・試験センター介護福祉士国家試験
http://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/k_08.html

このような場合に、自分の勤務している施設や交流のある施設の分校で研修を受けることができれば、「実務者研修」の受講期間に対する負担に思う気持ちが軽減するのではないだろうか。
さらに欲を言えば、受講時間も自由に選ぶことができると予定が立てやすく、仕事との両立が容易になり受講者は増加すると考える。
結果、落ち込み気味である介護福祉士の受験者数が増加することになる。

また、この分校では講師も研修を受けた現場職員が行えるシステムを導入している。
普段仕事を一緒にしているベテラン職員が講師であれば、もし講義で分からないことがあった場合に実践で体験しながら質問することができて効率的だ。

介護職員確保の架け橋に

そして最大のメリットは介護職員の確保である。人材不足の介護業界で唯一人材が確保できているのは、グループ内で養成学校の運営を行っている大規模の法人だ。
どの法人も養成学校から介護人材を確保したいと人事担当者は営業に走り回っているが、思うような採用には至らないのが現状である。

だからといって養成学校を新しく設置するのは難しい。しかし、分校であれば空きスペースさえあれば開講することができるのである。

これから介護職を目指そうと分校にやってきた「初任者研修」の受講者が、実習で施設に慣れ、丁寧に教えてくれた講師である職員と一緒に働けるのであれば、研修終了後にそのまま就職する可能性もある。
このように、分校の取組みにはメリットがたくさんある。

介護業界を変える一手となるか

現在、日本総合福祉アカデミーでは、ベテラン職員が行う登壇費の支払いをしている。これを国が支払うのはいかがだろうか。

今年10月にベテラン介護士の処遇改善加算が新設される予定だが、その加算対象を講師や人材確保の取組を行っているベテラン介護士にし、登壇費などとして充てるのである。
施設のために一躍を担っていることが目にみえて分かり、他の職員からの不満の声も小さいものになるはずだ。

また、登壇費が削減できた日本総合福祉アカデミーが受講料の費用を低く設定すれば、各資格取得のための入口が広がる。
このような仕組みが理想的であると考える。

ただし、分校を開設する施設が増加すると今度は受講生の取り合いが勃発しそうだが、現時点では画期的なモデルケースであることに間違いはない。

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