
利用者のセクハラ・パワハラから介護職員を守ろう! NCCUと42社が集団協定
「職員が泣き寝入りをしているケースもある。本当にそれでいいのか?」。26日の会見ではそんな問題提起がなされた。
利用者や家族による悪質なセクハラ・パワハラから介護職員を守るため、労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」と介護事業者が集団協定を結んだ。ケア21やSOMPOケア、麻生介護サービスなど42社が参加している。
集団協定書にはハラスメントを防ぐために実施する対策を書き込んだ。新規の契約を行う際に、職員へのハラスメントに関する禁止事項やハラスメントがあった場合の法人としての対処方針を、利用者・家族に説明するとしている。社内に職員用の相談窓口を設けることに加え、そこに相談・通報した人が不利益を被ることのないようにすることも盛り込んだ。
□隙を作る方が悪い…?
体を触られる、性的な要求をされる、大声で怒鳴られる、人格を否定する物言いをされる…。認知症などでどうしてもやむを得ない場合もあるが、そうではない悪質なハラスメントを経験した介護職員は少なくない。
NCCUの調査結果(*)によると、「ハラスメントを受けたことがある」と回答したのは74.2%。被害を受けた職員の約8割が上司や同僚に相談していたが、そのうち約半数が「状況は変わらなかった」と答えていた。「うまくあしらうのがプロ、という風潮がある」「隙を作る方が悪いと言われた」「上司は利用者が大事で親身に聞いてもらえない」といった声が目立っている。
* 調査は昨年の4月から5月にかけて行われたもの。NCCUの組合員が対象で、訪問介護や通所介護、特別養護老人ホームなどで働く2411人の答えを集計した。
□「気持ちよく働ける職場を」
NCCUの久保芳信会長は26日の会見で、「介護人材の人手不足は深刻。職員の尊厳を守り、皆が気持ちよく働ける職場を作らないといけない」と強調。集団協定の代表幹事を務めるケア21の依田平社長は、「職員の人権をしっかり守っていくことがご利用者を守っていくことにつながる。協定書の施策を着実に実行していきたい」と述べた。今回の協定書には、被害を受けた職員の心のケアに努めること、管理者の意識改革を進めることなども盛り込まれている。
介護従事者を守るため、集団協定の締結へ
2019年2月26日に日本介護クラフトユニオン(NCCU)は、労使関係のある法人との間で2015年に発足した「介護業界の労働環境向上を進める労使の会」において、「ご利用者・ご家族からのハラスメント防止に関する集団協定』を締結したと発表した。(*1)
(*1)労使の会──NCCUと42法人が「ご利用者・ご家族からのハラスメント防止に関する集団協定」を締結
http://www.nccu.gr.jp/torikumi/detail.php?SELECT_ID=201902270001
NCCUが昨年実施した「ご利用者・ご家族からのハラスメントに関するアンケート」において、74.2%が何らかの被害を受け、一部には精神疾患に至る介護従事者がいることが明らかになった。
こうした結果から労使の会では、現状を看過してはならないとの共通認識を確認し、介護従事者を守るために集団協定の締結に至ったとのこと。
浮き彫りになった74.2%という数字。介護現場に限らず接客業では客からのセクハラやパワハラが起こりやすい環境にあるが、介護現場では日常茶飯事とされる出来事であるにも関わらず、今までこうした団体が無かったことが不思議なくらいだ。
それらのツケが今となって介護従事者の人手不足として回ってきているように感じる。
少しのセクハラくらい…といった問題意識の低さ
しかし利用者のセクハラとパワハラの境界線は非常に難しい。疾患からくる症状が影響しているのか、そうではないのか。その境界線をどう判断すれば良いのか明確に答えられる者は、ほぼ皆無であると考える。そのため、介護業界全体でのセクハラやパワハラに対しての意識も低い。
私の周りで実際にあった、セクハラに関する事例を取り上げてみたい。
デイサービスに新規利用の申し込みがあり、担当ケアマネから利用者の情報をもらった。
そこにはセクハラ行為のためこれまでに2ヶ所デイサービスを変えていると追記がしてあり、事業所内で検討会を行い受け入れ拒否した。
すると担当ケアマネから「老人の少しくらいのお触りくらい可愛いものだ。問題にする方がおかしい。」という返答がきたそうだ。それ以来、その担当ケアマネのいる事業所から新規の相談は全くこなくなった。
担当ケアマネは実際にセクハラを受けていないため、もしくはその風潮に毒されたが故にこのような事を言ったのだろうが、実際に2ヶ所のデイサービスでは利用者のセクハラ行為が問題で利用が中止となっている。
この時も同様の理由で新しいデイサービスを探すことになったはずなのに、担当ケアマネは利用者のセクハラについて真摯に受け止めていなかった。
業界だけでなく世間への認知度を高めることも課題
また、セクハラを家族に知らせ利用中止になったケースもあった。
トイレ介助の際、女性職員を何度も呼びつけセクハラ行為をする利用者がおり、家族に状況を伝えて改善策を試みようということになったが、相談後に家族から心外だという内容の手紙と共に利用中止の申し入れがあった。
あくまで一例だが、介護業界でのセクハラやパワハラについて、事業の特性上、その現実味を感じづらい状況にあるのだと感じている。
また、介護従事者も「きっと認知症が始まった(進んでいる)」「利用者はお客だから仕方ない」など、いくら嫌な思いをしても我慢しなくてはいけないという風潮が介護業界にはびこっているように感じる。
介護保険制度が措置から契約に変わり、利用者はお客様として扱われるようになったが、勘違いしている一部の利用者のセクハラやパワハラにより涙している介護従事者がいることを、世の中全体で受け止めなくてはいけない。