介護ロボットが日常的に介護現場で活用されるための条件について考えてみた

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介護ロボットが日常的に介護現場で活用されるための条件について考えてみた

「介護ロボットを活用できる介護福祉士の養成を」 カリキュラム見直し、来年度から

介護ロボットの活用に向けた人材育成 − 。厚生労働省や経済産業省、日本医療研究開発機構らが13日、こうしたテーマのシンポジウムを都内で開催した。

講演した厚労省・福祉人材確保対策室の介護福祉専門官は、「介護ロボットを使う意義や目的を理解していること、現場で実際にうまく活用できることもこれからの専門職の役割」と説明。「今は必ずしも教育が十分とはいえない。介護福祉士の養成課程の中で皆がしっかりと学んでいけるようにしたい」と述べた。

介護福祉士の養成をめぐっては、来年度からバージョンアップされた新しいカリキュラムが導入されていく予定。この中では、「介護ロボットも含めた福祉用具」について学習することとされている。

介護福祉専門官は講演で、「介護ロボットを使うと、例えば腰痛などを防いで長く健康に働ける職場を作ることに役立つ。その時は少し時間がかかったとしても、長期的にみるとスキルのある人材が腰を痛めて辞めざるを得なくなる事態を防げる」と語った。

加えて、「職員の負担軽減だけでなく、ご利用者の力を引き出して自立支援に役立てられる機種も多い」と指摘。「介護の現場ではまだまだ『道具より人の手』という思いが強い。全く悪いことではないが、今後は学生が介護ロボットを活用する意義や目的もしっかり理解できるようにしたい」との意向を示した。

このほか、同じく講演した大阪人間科学大学の時本ゆかり准教授は、「今の学生は色々と多面的な考えを持っている」と説明。実際の授業の様子を紹介し、「サービスの質の向上につながる、介護職のイメージアップにつながる、といった意見が少なくない」と報告した。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg395.html

介護ロボットをより活用するために

2019年3月13日に経済産業省・厚生労働省・国立研究開発法人日本医療研究開発機構主催の「介護ロボットの活用に向けた人材育成シンポジウム」が開催された。

シンポジウムでは、介護現場及び教育現場における介護ロボットの認知度を高めるため、介護ロボット導入事例の紹介や活用方法の紹介、将来の介護現場の在り方やそれを実現するための教育カリキュラムの在り方に関するパネルディスカッション、介護ロボットの体験会などが行われた。

現在介護ロボットには移乗・移動・排泄・入浴・見守りの5分野8項目(*1)があり、介護従事者の負担軽減の観点から介護現場においてロボット技術の活用が強く期待されている。

(*1)経済産業省AMEDロボット介護機器開発・導入促進事業製品化機器一覧
http://robotcare.jp/wp-content/uploads/2018/12/20181201.pdf

介護ロボットのなかでも介護従事者が腰痛予防などのために使用する介護支援タイプの介護ロボットは率先して導入する価値があると考える。しかし利用者に対して使用される介護ロボットについては、介護従事者が日常的に介護ロボットを活用できるようになるまでの道のりは長そうだ。

まずは事業主が介護ロボットを購入またはレンタルして導入してくれないと始まらないのだが、事業主も導入した介護ロボットが1人の利用者にしか対応できない物では簡単に首を縦に振らないであろう。
できれば多くの利用者に対応できる介護ロボットを導入したいと思うのは当然の心理である。

自立支援の観点も踏まえると即座の導入は難儀か

また、多くの利用者が活用できる最新鋭の介護ロボットを導入した。だからほとんどの利用者にその介護ロボットを使用する。このような考え方は介護現場ではしない。

利用者の自立支援の観点も含めて考え、介護ロボットを利用する必要があるかどうかを検討するのだ。

例えば移乗動作を支援する介護ロボットを使用する場合、利用者本人の身体機能能力がどこまで残っているのかの判断が大切だ。一部介助の利用者の移乗支援の場合、本当はまだ足の力が残っているのにむやみに介護ロボットを使用して、筋力低下をまねく結果になってはならない。

残存している利用者の足の力を活かして利用できる介護ロボットもあるようだが、利用者の足の力には違いがあるため負荷の微調整やサイズの微調整ができる介護ロボットでないと多くの利用者が使用できない。

介護現場にフィットするロボットが少ない?

また、準備に手間が掛かりや操作が難しい介護ロボットも介護現場では歓迎されないだろう。いくらその介護ロボットが安全性に優れていても、準備や操作が困難では事故に繋がる。

介護ロボットのメーカー側が操作は簡単だと言っても、実際に全介助の利用者の移乗を行う際にシートなどを身体の下の決まった位置に敷くのは難しい。身体の下にシートを敷く行為を回避するためには介護ロボットを使用する利用者全員のベッドに、シーツ代わりにシートを常に敷いておくこと位しか思いつかないが如何か。

他には、メンテナンスが頻回に行われるかどうかも安全面を確保するには重要事項である。結果、日常的に活用され介護業界に普及する介護ロボットの条件は、サイズや負荷などの微調整ができ準備や操作に手間が掛からず、多くの利用者に使用できるメンテンナンスがしっかり行われる製品がということだ。

今だ介護ロボットの活用が進んでいないのは、こうした条件に見合った製品が少ない、又は周知されていないのではないかと考える。

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