2019年度ケアマネ試験、受験者数の大幅回復はなし〜受験者が増えない理由は「試験要件の厳格化」「処遇」「研修の増大」に?

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2019年度ケアマネ試験、受験者数の大幅回復はなし〜受験者が増えない理由は「試験要件の厳格化」「処遇」「研修の増大」に?

今年度のケアマネ試験、受験者数の大幅回復なし 東京・大阪などで微増の見通し

昨年度に受験者数が激減したケアマネジャーの実務研修受講試験 − 。10月13日に実施される今年度はどうか? さほど大きく変わらなそうだ。

都道府県からの報告が集まってきている。東京都や大阪府、北海道など受験者数の多い18都道府県の今年度の受験予定者数(*)は計3万3869人。昨年度の受験者数より2730人(8.8%)多い微増となっている。

* 受験予定者数は9月18日時点。今後変動する可能性あり。

この18都道府県では昨年度に3万1139人が受験。全体の63.1%を占める規模だった。

受験予定者数を多い順にみると、東京都が4077人で433人増、大阪府が3484人で513人増、北海道が3053人で164人増、神奈川県が2585人で288人増、兵庫県が2575人で436人増。この順位は昨年度の実績と変わらない。大阪府や兵庫県は伸び幅が大きかった。

このほか、福岡県や埼玉県、広島県、京都府などでそれぞれ100人から200人程度増えていた。一方で更に減少したところもある。宮城県は1329人で12人減、青森県は977人で128人減、熊本県は1113人で6人減だった。

ケアマネ試験をめぐっては昨年度、受験者数が非常に大きく減少して関係者にショックを与えた経緯がある。一昨年度が13万1432人、昨年度が4万9312人。一気に62.5%も減る衝撃の結果だった。

最大の要因は、5年以上の経験を持つ2級ヘルパーなどを除外した受験資格の厳格化とみられる。また、求められる役割や研修の量が増えて非常に忙しいこと、処遇がそれほど良くないことも背景にあると指摘する声が多い。

□受験手数料、各地で大幅増

今年度のケアマネ試験にはもう1つ特徴がある。受験手数料が軒並み上がったことだ。

18都道府県すべてでアップ。千葉県では8700円から1万4400円へ、愛知県と埼玉県では8700円から1万3800円へ、神奈川県では8790円から1万3800円へ、それぞれ5000円を超える大幅増となっている。受験者数の激減で1人あたりの経費が上がってしまったことが要因。

このほか、宮城県は8400円から1万2800円へ4400円増、広島県は8800円から1万2800円へ4000円増、東京都は9200円から1万2800円へ3600円増となっている。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1099.html

ケアマネの魅力を高め、試験受験者を増やす必要性

前年度から受験資格が厳格化され、一気に減少した介護支援専門員(ケアマネ)の受験者数であるが、今年度も大きく回復する様子はなさそうだ。

2019年10月1日の消費税増税にともない、介護福祉士を対象とした特定処遇改善加算が新しく算定できるようになり、今後人によってはケアマネの賃金を上回るようになる。これまでキャリアアップ・賃金アップとしてケアマネ資格を取得することを目標にしてきた介護福祉士は、ケアマネ資格への魅力を失いはじめていると考える。

さらに昨年度から厳格化されたケアマネの受験資格は、介護福祉士などの国家資格を有して5年以上の実務経験が必要だが、5年間介護の現場で実務経験を積んだ介護福祉士は、リーダー職になっている可能性が高い。

事業所によるが高賃金の対象となるのであれば、わざわざ改めてケアマネになろうという者も少ないであろう。確かに柴口会長の言うとおり、ケアマネの処遇改善や職種としの魅力を高める必要はある。しかしほかにも改善が必要なことがある。

研修の多さもケアマネ希望者減の原因に?

それはケアマネの研修の多さだ。「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」の議論において、介護支援専門員の養成に係る研修制度の見直しについて提言がなされたことから、カリキュラムの見直しと新カリキュラムにおける研修実施に係るガイドラインの整備などが進められた。(*1)

(*1)介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002s7f7-att/2r9852000002s7go.pdf

その結果、平成28年度から新カリキュラムに基づく各課程の養成研修が実施されるようになり、その時間数は87時間。以前のケアマネ実務研修時間数である44時間を大幅に上回ることになった。

これは既存の実務研修44時間に、任意であった資格取得後の実務従事者基礎研修33時間が統合された形だ。さらに専門課程研修Ⅰは33時間から56時間、専門課程研修Ⅱは20時間から32時間。実務未経験者の再研修(更新研修)は44時間から54時間へ変更された。

資格取得から5年以内(次回更新)までに、専門課程研修ⅠとⅡを受講するため、試験合格からの研修時間総数は175時間である。研修を終えなければ更新することができないため、ケアマネとして従事する者は必ず受講する必要がある。

受験資格は厳格化され、今後は国家資格を持ち医療福祉の業務に5年以上携わっている者しかいなくなるはずだが研修は増えた。資質の向上が必要なことは理解できるが、どうも矛盾した思いが残る。

ケアマネ資質の向上は理解できるが、その分受験者負担が増えているのも事実

さらに研修にかかる費用もアップしている。時間数が増えたのだから仕方ないが、各研修2万円~8万円だ。(※自治体と研修内容などの各要件により異なる)しかし介護福祉士には更新のための研修はない。一度合格し登録を済ませれば、一生介護福祉士として活躍できる。こうした差も、介護福祉士からケアマネになろうとする者の減少に繋がるのではないかと考える。

厚生労働省が9月19日に「教育訓練給付制度(特定一般教育訓練)」についての事務連絡を発出した。(*2)

2019年10月1日より、介護支援専門員の養成研修などが、特定一般教育訓練給付の対象になるとのことだ。これにより、少しは研修にかかる費用の負担が少なくなるが、果たしてケアマネの減少止めになるかは定かではない。

(*2)教育訓練給付制度の周知依頼について(介護支援専門員養成研修等、介護職員初任者研修及び生活援助従事者研修関係)
https://www.jcma.or.jp/wp-content/uploads/190919kyoikukunnren00.pdf

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