厚労省、ケアマネの処遇改善を検討〜ケアマネ不足を解消するには処遇以外にも見直すべき点が?

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厚労省、ケアマネの処遇改善を検討〜ケアマネ不足を解消するには処遇以外にも見直すべき点が?

厚労省「ケアマネの処遇改善が必要」 具体策の検討に着手

厚生労働省は9日の審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で、ケアマネジャーの処遇改善に向けた検討を進めていく方針を明らかにした。適切に人材を確保して質の高いケアマネジメントの推進につなげる狙いだ。

ケアマネジメントを議題として取り上げたこの日、提出した資料に「処遇改善を図ることで質の高いケアマネジャーを安定的に確保するとともに、事務負担の軽減など、ケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備を図ることが必要」と明記。その具体的な方策を今後の論点と位置付けた。

会合では多くの委員がこの方向性に賛同。異論は出なかった。2021年度の制度改正・報酬改定をめぐる議論の重要な要素の1つになるとみられる。

こうした流れができた要因として大きいのは、やはり“なり手”が急激に減ったことだ。

昨年度のケアマネ試験の受験者は4万9312人。一昨年度(13万1432人)から一気に62.5%も減る衝撃の数字だった。

都道府県からの報告によると、今月13日に実施される今年度の試験も大きく変わらない見通し。期待される役割や課される研修が増えて非常に忙しいこと、処遇がそれほど良くないことも背景にあるとみる関係者が多い。

厚労省の担当者はこの日の審議会で、「介護職員の賃金が上がってきたことで相対的に処遇が低くなっているのではないか、という指摘も頂いている」と説明した。

□「人材不足が深刻になった」

会合では市町村の代表として参加している香川県高松市の大西秀人市長が、「ケアマネの確保は重要な課題。処遇改善が必要。研修受講の負担軽減も検討すべき」と指摘。日本介護福祉士会の石本淳也会長は、「ケアマネの人材不足も深刻になってきた。業務量がかなり増えており、その評価をしっかりしていくべき」と意見した。

日本介護支援専門員協会の濱田和則副会長は、「業務の再評価と処遇の改善をお願いしたい」と要請。「末期がんなどに限定されている医療・介護連携の加算の対象を広げ、取得しやすくすることも検討して欲しい。ケアマネが医療機関への受診に同行して情報を共有する事例が増えているが、そうした取り組みへの評価も必要ではないか」と述べた。

厚労省は引き続き具体策の検討を深めていく考え。報酬改定による対応の中身は、社保審・介護給付費分科会で扱って来年末までに固める予定。財政的な制約がある中でどこまで成果を出せるかが課題となる。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1122.html

ケアマネ不足の深刻化にどう対策するか

2019年10月9日に行われた第83回目の社会保障審議会介護保険部会において、欠席した井上委員の提出資料を発端にケアマネの処遇改善を求める意見が交わされたとのこと。提出された資料の内容は以下の通り。

1.地域支援事業等の更なる推進
(1)ケアマネジメント
急速な高齢化の中で、地域に密着した質の高いケアマネジメントは、高齢者本人や家族にとって不可欠であり、真に必要とされる効率的な介護を実現するための要である。ケア マネジャーが、利用者との相談等にその専門能力を発揮できるよう、整備書類の削減、手続きの簡素化、IT化、またAIによる介護のケアプランの作成等々の環境整備を優先させ る必要がある。ケアマネジャーの処遇改善については、処遇と人材確保の関係、質や生産性向上の状況等の検証、また、利用者負担のあり方の検討を合わせて行うことが不可欠で ある。

※引用:社会保障審議会介護保険部会(第83回)井上委員提出資料

これまで介護職員の人材不足対策に講じてきたが、今後はケアマネ不足も深刻化していくと懸念する声もあがったようだ。昨年度から介護支援専門員実務研修受講試験の受験要項が変更となり、受験できるのは医師や歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、理学療法士、社会福祉士のように国家資格などを保有している者や、各施設で相談員業務に携わっている者である。

いずれも通算して5年以上の業務経験が必須条件であり、受験者数が激減している。こう言ってはなんだが、専門職として5年以上従事している者がケアマネ資格を取得しても、ケアマネ業務に転向する者は少ないのではないかと考える。

実際に自身の周りでは、看護師・理学療法士・管理栄養士・義肢装具士の資格を持つ者がケアマネ資格も保有していたが、誰ひとりとしてケアマネになろうという者はいなかった。看護師だった知り合いは「ケアマネにはならないから」と言って、更新さえもしなかった。

何故、時間と費用をかけてケアマネ資格を取得したのか聞いたところ、ケアプランの目標設定やニーズの把握方法、ケアマネの視点を知るために実務研修を受けたかっただけだと話していた。

ほかの者も同様だ。自分たちの専門分野の計画書を作成するにあたり、ケアプランを理解することが必要だったからとのことだ。以上のような理由からすると、もし、ケアプランに関する研修が各専門職団体の間で行われるようになれば、受験者数はさらに落ち込むはずだ。

ケアマネの処遇改善の前に見直すべき課題

そして資格取得後も増え続けているケアマネ研修についても、通常業務を逼迫し費用がかかるのでは、心身共に負担でありモチベーションが下がる。また、管理者要件の厳格化も、自分で事業所を立ち上げたいと考えていた者にとっては打撃だ。このように、業務量以外のことを考えても、ケアマネの魅力が落ちてきていると考える。

研修の受け方については、eラーニングを利用するなど遠隔でも可能になるような方法を検討する必要があるだろう。自分の手の空いた時間に受講できるシステムで費用負担も軽減されれば、ケアマネ資格を取得したいと考える者も増えると考える。さらに事業所の管理者要件になる、主任ケアマネ受講対象者の個別要件である業務経験年数を、5年から3年にするなど見直しては如何か。

研修の席で一緒になった理学療法士は、実務研修が終わったら1人くらい担当させてもらい、ケアマネとして利用者を支援したいと事業主に申し出たが、リハビリに専念してほしいと言われたと話していた。

理由は事業所の人員配置基準が満たされなくなるため、ケアマネ業務と兼務するのでは困るといったところだろうか。どの職種も人員確保が難しい介護業界。人員配置基準を緩和して、さまざまな業務と兼務できるようにすることも必要だと思われる。

また、常勤で採用している事業所も多いのがケアマネ職だ。非常勤として働ける場と環境が増えれば、子育て世代や自宅で家族の介護をしているケアマネも働きやすくなると考える。利用者負担も増加するケアマネの処遇改善のまえに、見直すべき課題がたくさんあるのではないだろうか。

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