東京都の「弁当に食品群を表示する取組」自立高齢者のフレイル予防に最適だと考えられる理由とは?

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東京都の「弁当に食品群を表示する取組」自立高齢者のフレイル予防に最適だと考えられる理由とは?

東京都、フレイル予防でファミマと連携 共同で情報発信 背景に「中食」増加

東京都とファミリーマートが共同で、フレイルの予防に役立つ食生活についての情報発信を29日から開始する。

スローガンは「東京をおいしく元気に」。都内のファミリーマート約2400店で展開していく。例えば、フレイルの基礎知識や食事の工夫点、適切な食材の組み合わせ方などをまとめたリーフレットを配布する。

適切な食環境の整備や啓発などを進めることで、介護予防や健康寿命の延伸につなげていく狙いだ。

こうした取り組みの背景には、弁当や総菜などを買って持ち帰る「中食」を選ぶ高齢者が以前より多くなったことがある。高齢化や1人暮らし世帯の増加に伴う変化。

対象となる都内のファミリーマートでは今後、弁当・惣菜コーナーで個々の商品に使われている食品群が一目で分かる表示もなされる。また、栄養バランスを特に重視したメニューの提供も新たにスタートするという。

ファミリーマートはこれまでも、管理栄養士が監修した弁当の販売や高齢者向け弁当の宅配などを展開してきた。また2016年からは、栄養に関する相談などを店内で受ける「栄養ケア・ステーション」の設置を進めている。ライバルのローソンも「マチの健康ステーション」を軸とした事業戦略を打ち出しており、顧客獲得に向けたコンビニの対応が進んでいる。

一方、東京都は公式サイトで高齢者にやさしい簡単料理レシピを公開。ここでは、缶詰やカット野菜、サラダチキンなどコンビニで手軽に買える食材を活用したレシピが、主食、主菜、副菜といった種類ごとに紹介されている。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1152.html

東京都とファミリーマートでフレイル予防目的のお弁当販売開始

東京都とファミリーマートが、高齢者のフレイル予防を目的としたお弁当の販売を開始した。お弁当に含まれている10食品群を表示し、栄養素を偏りなく摂取する参考にしてもらいたいとのこと。食品群の表示は絵で示されており、誰が見ても分かりやすいように工夫されている。(*1)

(*1)東京都福祉保健局「10月29日スタート!東京都×FamilyMartフレイルの予防に役立つ情報発信を行います!」
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/10/24/21.html

フレイルとは虚弱のことである。疾患や加齢などが原因で筋力や認知機能が低下し、日常生活に困難をきたし始める状態のことだが、フレイルは適切な介入により再び健常な状態に戻るといわれている。(*2)

(*2)一般社団法人日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20140513_01_01.pdf

早い段階で栄養バランスの摂れた食事や、筋力の維持・向上となる運動などをすることが重要であり、そうすることで要介護状態にならず、生活の質を極力落とさずに歳を重ねていけるとされている。

総合事業としては、要支援の認定を受けた者やチェックリストにかかった事業対象者向けに、栄養面をフォローする生活支援サービスが行われているが、自立者に対しては何もない。加齢とともに低栄養になりがちな高齢者の食事面を支える今回のような取組みは、今後も注目されていくことと思われる。

高齢者の栄養バランスが崩れやすくなる理由は?

高齢者が栄養バランスに配慮した食事を摂取しづらくなる主な原因として、口腔機能の低下・倦怠感や認知機能の低下にともない社会生活への適合が困難・疾患による食事制限が考えられる。

口腔機能の低下では、口が渇き食べるとむせ込んでしまうため食欲が落ちる、筋力が落ちて固いものが噛めないといった者が多い。なかには入れ歯が合わずうまく噛めないため、食事の時間になると入れ歯を外す者もいる。

入れ歯が合わない者は歯科診療を受ける必要があるが、口腔機能に関して総合事業では、多様なサービスへの参加で口腔体操やカラオケ、会話を楽しむなどして維持・向上を図っている。

そして倦怠感や認知機能の低下にともない社会生活への適合が困難とは、主に買い物や食事の支度ができなくなってしまうことだ。買い物に行っても何を選んで良いのか思いつかない、食材が揃っていても作る気がしない、同じものしか作れないなど、食生活に困難をきたす。

自立している高齢者のフレイル予防の重要性

介護保険下では通所や入所サービス内で食事の提供を受ける。または訪問介護を利用してヘルパーの支援を受けるといったものしかないが、総合事業では独自に宅配弁当のサービスを実施しているところが多い。

しかし、市町村特別給付が受けられる条件は要介護者・要支援者であることがほとんどだ。要介護等にならないように予防したいが、自立の高齢者に向けた宅配弁当サービスは、民間企業に頼っているのが現状である。

民間の宅配サービスの利用は、費用や嗜好、利用回数の縛りなどにより好まない者もいると思われるが、今回の取組みのようにコンビニで好きなメニューの弁当を好きなときに選べるのはうれしいサービスだ。

もう一点欲を言えば、心臓病食・糖尿病食・腎臓病食というような表示をしてもらえると、疾患により食事制限のある高齢者が、弁当を選ぶときに迷わず手に取りやすいと考える。

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