介護保険サービスの看護職員によくある退職理由と2025年の人手不足対策の課題について

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介護保険サービスの看護職員によくある退職理由と2025年の人手不足対策の課題について

看護職員、2025年に27万人の不足も 需給ギャップを推計 厚労省

医療や介護の現場を支える看護職員が、2025年におよそ6万人から27万人不足する恐れがある − 。厚生労働省が9月30日の有識者会議でそんな推計を公表した。

厚労省によると、保健師や看護師、准看護師などの看護職員は現在167.1万人。今回の推計では、2025年には174.6万人から181.9万人が供給されると見込んだ。

2025年の需要は、ワークライフバランスの充実も勘案して3つのシナリオに分類。それぞれ以下のように推計した。

○ 超過勤務10時間以内、年間5日以上の有給休暇=需要推計188.0万人
○ 超過勤務10時間以内、年間10日以上の有給休暇=需要推計189.7万人
○ 超過勤務無し、年間20日以上の有給休暇=需要推計201.9万人

需給ギャップは最小で6.1万人、最大で27.3万人となる。推計は病院や診療所、訪問看護事業所、介護施設などでの必要数を踏まえたもの。介護職員に加えて看護職員の不足もさらに加速していく懸念がある。

都道府県別にみたレポートでは、首都圏や関西圏などの都市部で特に不足が顕在化する可能性が指摘されている。一方で、鹿児島県や佐賀県、宮崎県、熊本県、島根県などでは、供給が需要を上回るとの見通しが示された。

厚労省は人材確保の対策として、医療機関、在宅、介護の現場といった領域別、あるいは地域別の偏在の是正に取り組む考え。また、過重な負担の軽減や勤務環境の改善、ハラスメントの防止による定着促進、離職者の復帰の支援などにも注力する方針だ。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1111.html

2025年の看護職員数に数万人単位で不足の恐れ

2019年9月30日に行われた第11回看護職員需給分科会の資料によると、微増ではあるが看護職員数は毎年増えている。2017年の看護職員の数は約167万人。前年より約1万人増加であるが、このペースでは2025年に必要な看護職員数188~202万人を満たせないようだ。(*1・P3・4)

(*1)医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ案(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/10805000/000554603.pdf

188~202万人の人数の幅は、看護職員の残業の有無や有給取得日数など、勤務状態により変動するとある。理想的な働き方である「1ヶ月における超過勤務時間なし、1年あたりの有給取得20日以上」を満たすには202万人の看護職員が必要になるとのことだ。緊急時対応などが発生しやすい看護職員では難しそうな設定であるが、離職者をなくし看護職員を増やすためには必要なことだと考える。

また分科会では、看護職員の「新規養成・復職支援・定着促進」が重要だとしている。病院以外に、介護保険サービス内でも看護職員は必要不可欠な存在であるのだが、定着が難しい。定時に帰宅できる事業所が多い傾向にあるため、病院よりは働きやすい環境だと思われるのだが、介護保険サービスで勤務している看護職員がなぜ定着しづらいのか理由を考えてみた。

“働きづらさ”が看護職員の離職を生む?

介護保険サービスの看護職員は、利用者の健康面を管理・サポートするだけではなく、救急搬送に値する状態であるかの判断や、利用者の毎日の状態観察のなかで重要な変化なのかなどを見極めていく。

そのため利用者や家族、そのほかの職員たちにとっては「心のよりどころ」と言っても過言ではない。しかしその分、看護職員にとっては責務の重圧感があり、判断をすることが苦手な看護職員は退職してしまうようだ。特に看護職員が1名(常勤換算)しかいない通所系サービスなどでは、早い者は3ヶ月と続かず、1年以上定着しない状態ということもあった。

また施設系のサービスでは、オンコールや夜勤が負担だという理由で転職していく者を何人も見てきた。夜間帯における緊急時対応の負担感は通所系サービスと同様であるが、ほかにも産休や育休を明けて、時短勤務が終わると退職していく者が多い。

子育て世代の看護職員にとって近隣に協力者がいない場合、夜勤などは困難である。夜勤をせずにパート勤務へ変更する者もいるが、正職員で夜勤のないクリニックなどに転職することを選択する者が目立つ。

需要の地域差から移行促進を検討課題とするが…

介護職員と比較すると給料面では優遇されている看護職員であっても、人手不足という状況。このまま看護・介護職員の人手不足が増加していくことになるのか。今後の対策次第では介護保険サービスの継続がさらに厳しくなっていく。

しかし分科会の資料のなかに、2025年時点で需要より看護職員の数の方が多くなる地域があるとのこと。(*1・P5)そのため看護職員の移行促進を今後の検討課題としていくようだが、家庭を持つ看護職員には難しいと考える。

推計結果では、主に首都圏が人手不足であり、九州地方が看護職員の総数が多くなると予測されている。医療・介護ともに、看護職員不足が解消することに期待したい。

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