パナソニックがデイサービス向けリハ支援システム開発〜最大限に活用するためには加算の算定要件の変更も必要

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パナソニックがデイサービス向けリハ支援システム開発〜最大限に活用するためには加算の算定要件の変更も必要

動画や顔認証で自動記録! パナソニック、通所介護向けリハ支援システム発表

パナソニックがデイサービス事業者の機能訓練をサポートする新たなクラウドシステムを開発した。

体を動かす利用者を動画で撮影するだけで、実施した訓練の回数や所要時間を測定。自動で記録・蓄積し、レポートにまとめていく機能を備えている。2020年度下期の製品化を目指す。

動画の解析によって利用者の骨格の動きを推定する独自のシステムを搭載。顔認証技術も用い、同時に訓練を行う利用者を最大5人まで判別することができる。

将来的には、動画で得た情報をAIに分析させて利用者の身体能力を測定する機能も付与する計画。「測定した身体能力を反映することで、より個々人に合った訓練計画を作れるようになる。客観的なデータに基づいた質の高い訓練の提供が可能となっていく」。パナソニックはそう説明している。

□人手不足に配慮して設計

新たなクラウドシステムでは、必要なアセスメントシートや訓練計画書の作成、訓練結果の記録・管理などの自動化を図った。ノウハウやマンパワーが不足している事業者でも、取り組みを効果的・効率的に進められるように配慮したという。自立支援・重度化防止を重視する国の施策の方向性に沿った設計だ。

例えば訓練開始時。利用者へのヒアリングをもとに選択式の質問に回答していけば、アセスメントシートが自動で作られるようにした。その内容をもとに、専門家が監修・協力したプログラムで利用者の日常生活を営む能力を評価。適切な訓練計画を自動を提案する。

加えて、一連の業務をガイドする機能やスケジュール管理の機能も持たせた。現在は「個別機能訓練加算」のみが対象だが、今後は「生活機能向上連携加算」や「ADL維持等加算」などに対応させることも検討していく。

今月25日、パナソニックの介護事業を展開しているパナソニックエイジフリーは、2030年度までに売上高を1000億円以上へ伸ばすプランを公表した。電機メーカーとして培ってきた技術や知見を活かし、AIやロボットなどをこの分野でさらに活用していく方針を打ち出している。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1106.html

クラウドシステムで機能訓練をサポート

2019年9月25日にパナソニック株式会社が、タブレット一台で手軽に導入できる、デイサービス事業者向けのリハビリ支援クラウドシステムを開発したことを公式サイトで発表した。(*1)

(*1)デイサービス事業者向けリハビリ支援クラウドシステムを開発 | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan
https://news.panasonic.com/jp/press/data/2019/09/jn190925-1/jn190925-1.html

今後、AIを活用した身体能力分析機能を加え、2020年度下期の製品化を目指すとしている。

リハビリ支援クラウドシステムは、人手不足で機能訓練を思うように実施することができないデイサービス事業者をサポートすることが目的である。生活機能訓練の一連の業務のガイドやスケジュール管理、書類の自動作成機能を備えているとこのと。

すでにパナソニックが運営する「パナソニックエイジフリー」の事業所で試験運転したところ、約8割の業務が軽減できたとしている。

加算算定要件によって技術が生かしきれていない?ケースも

通所介護では、1名以上の機能訓練指導員を配置することが基準で定められているが、兼務も可能だ。(*2・第七章第二節第九十三条四)

(*2)平成十一年厚生省令第三十七号 指定居宅サービス等に事業の人員、設備及び運営に関する基準
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=411M50000100037#AE

人員が不足している事業所では、じっくり機能訓練に取り組むことが難しいと考える。そのような事業所にリハビリ支援クラウドシステムがあれば、兼務をしながらでも機能訓練を行うことができる。

しかし個別機能訓練加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)の加算を算定する場合は、専従でなければならない。業務負担が軽減されたとしても、実質的にその他の業務の人員が少なければ専従として勤務できず、加算の算定は難しいということだ。

平成30年11月に独立行政法人福祉医療機構の経営サポートセンターが行った「平成30年度介護報酬改定の影響に関するアンケート」では、 個別機能訓練加算を算定している通所介護事業所の割合は44.5%、算定をしていない事業所は55.5%という結果だ。(*3・P28)

(*3)平成30年度介護報酬改定の影響に関する アンケート結果(詳細版)
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/181105_No005_detail_2.pdf

約半数以上の事業所が加算の算定ができていない。これは人員不足に加え、事業所の規模も影響していると考える。

専従、しかも常勤でなければならない個別機能訓練(Ⅰ)においては、利用者が10名など少ない事業所では、機能訓練指導員が専従では手持無沙汰である。また個別機能訓練(Ⅱ)では、マンツーマンで機能訓練を実施するため、規模の大きい事業所では対応しきれず算定が難しい。

個別機能訓練(Ⅰ)は身体機能の向上、(Ⅱ)ではADLやIADLなどの活動や、役割の創出や社会参加といった生活機能の向上であり実施内容が異なる。本来事業所としては、事業所の特徴としてどちらを特化していくかを選びたいところだが、小規模の事業所では(Ⅱ)、大規模の事業所では(Ⅰ)を選択するのが妥当だ。

因みに平成30年に創設された生活機能向上連携加算は、通所事業所の職員と外部のリハビリ専門職が連携して、機能訓練のマネジメントをすることを評価する。共同で利用者のアセスメントを行い、個別機能訓練計画書を作成。その後は進捗状況を3月ごとに1回以上評価し、必要であれば計画や訓練内容などの見直しを行うものだ。

この一連の業務にシステムを利用するのであれば、業務が軽減され両者にメリットがある。しかし多くの事業所ではリハビリの専門職へ依頼することが難しく、実際に加算を算定している事業所はわずか3.5%とのこと。(*3・P28)

せっかく優れたシステムが開発されても、思うように活用できないのでは宝の持ち腐れである。今後はAIなどを活用している事業所の加算算定要件を、変更・緩和していくことも課題であると考える。

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