厚労省、介護現場のペーパーレス化へ|現場では事業所が作成・保管する文書の方が負担?委員会で出た意見を元に考察

更新日:
厚労省、介護現場のペーパーレス化へ|現場では事業所が作成・保管する文書の方が負担?委員会で出た意見を元に考察

介護の書類、押印や役所への持参を年度内にも効率化 厚労省方針

介護の現場を悩ませているペーパーワークの負担軽減に向けて、厚生労働省は新たな具体策を今年度中にも実施する計画だ。

年内に大枠の内容を固め、可能なものから通知などを出して改善を図っていく。18日に開催した社会保障審議会の専門委員会で明らかにした。

紙媒体にはんこを押して提出しろと指示される、わざわざ役所まで出向いて書類を出すよう求められる、同一・酷似した添付書類が散見される − 。

こうした現場の不満をできるだけ解消する方針。どこまで徹底した措置を講じるかは今後の検討。専門委でのこれまでの議論では、「押印や役所への持参が欠かせない文書もある」との指摘も出ている。

厚労省はこのほか、実地指導の更なる効率化に向けた具体策も早ければ今年度中に実施する構えだ。既に出している書類の再提出を不要とするほか、可能な限り画面上のチェックだけで済ませるペーパレス化を浸透させる案などを示している。

行政に提出すべき書類、あるいは事業所に保管しておくべき書類のぺーパレス化を徹底的に進め、一部の例外を除いてオンラインで事足りる環境の整備を目指す姿勢もみせているが、これはより中長期的な構想と位置づけた。

厚労省の担当者は「もう少し詳しい議論を深めたい」と話す。委員からは、ロードマップを作って着実に具体化していくべきとの注文が相次いだ。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1096.html

介護現場における文書類の簡素化・標準化に向けて

介護現場で負担となっている文書などの軽減に関する専門委員会が、9月18日に3回目の会議を行った。今回はこれまでの意見を基に、今後検討すべき主な論点を取りまとめた。(*1)

(*1)社会保障審議会介護保険部会(第3回) 介護分野の文書に係る負担軽減について
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000548275.pdf

文書類の簡素化・標準化により、ICT化の推進にも繋がるとしている。

第2回目までの事業者団体のヒアリングや、委員が発言した意見は多岐に渡る。指定申請・報酬請求・指導監査の分野には共通する項目が多いため、横断的な観点を念頭に置きながら文書類の軽減を検討していくとのこと。

意見のなかには事業主や管理者ではなく、介護の現場に関する文書類の軽減も多く取り上げられているので、いくつか紹介したい。

その他の加算の要件を確認する文書(*1・P16/26)

・加算の要件の評価期間を前年度の実績に統一し、届出後の可否の判断も標準化すべき。

これは、加算の種類により算定要件が細かく異なり、直近3ヶ月の状況や3ヶ月前の平均数を算出、前々年度の1年間のうち6ヶ月以上利用した期間など加算ごとに評価期間が異なる。さらに、利用者の介護度やその介護度人数の割合、職員の常勤換算数などが合わさるため、ゆとりを持って加算を算定できる状態でなければ届出をしない事業所もある。

なぜなら要件を満たさなくなった場合は直ぐに取り下げをしなくてはならず、大変面倒だからだ。届出と取り下げを繰り返すのは正直苦痛でしかない。

報酬改定への対応(*1・P16/26)

・報酬改定に際し、半年近く出続けるQ&Aを追いかけて事業所において理解をするのが負担。グレーゾーンの解釈等についてまとまった形で早めに出すべき。

このQ&Aも報酬改定が決まり、新加算や既存の加算の変更がスタートした時点でも新たな解釈としてQ&Aが次々と「介護保険最新情報」のネット上に掲載される。改定があった月から新しい加算を算定予定であっても、算定要件に曖昧な点があり請求に間に合わないような場合は、請求を遅らせるか、それとも過誤であった場合は返戻するかで、実際に決めかねたこともあった。

曖昧なまま介護保険請求を行うわけにはいかないため、福祉事務所へ問い合わせを行うが、返答は遅い。報酬改定の内容を実施する6ヶ月前には報酬改定の内容を確定し、不明点の問い合わせを受け付け、余裕を持ってQ&Aを発信してもらいたいものだ。

行政が求める文書以外の文書(*1・P22/26)

・居宅介護支援事業所が月に一度利用者宅を訪問するに際し、認知症等の場合に確認印を得ることが負担。

これは利用者に印鑑が必要であると説明することよりも、印鑑が見当たらず毎回探すのに時間がかかるのではないかと思われるが如何か。しかし訪問したことが分かるものがないと、行ってもいないのに訪問をしたと言いだす者も出てきそうだ。

・ケアマネ事業所と介護サービス事業所との月末の実績報告のやり取りを電子化できないか。難しい場合は1ヶ月の合計単位数のみの報告に簡素化できないか。

実績報告については、事業所側はケアマネから渡される提供票に実績を手書きで記入し、封書や手渡しなどでケアマネに届ける。ケアマネは不明点(休みになっていた・多く利用している・入浴をしていないなど)があれば事業所へ問い合わせて対合するのだが、お互いに担当している利用者の人数が多いため負担である。また定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用している利用者の場合はもっと煩雑だ。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスは、利用者が他のサービスを利用した日は算定ができないため、通所や短期入所などのサービス事業所と利用日の確認を行う。そして、それぞれがケアマネと利用日の確認を行う。たった1人の利用者の実績確認なのだが、どの事業所とも交わることはなく、それぞれが確認を行う形だ。

現場では行政絡みの文書より、事業所単位の文書の方が負担に?

現場の感覚としては行政が求める文書よりも、事業所が作成・保管する文書(ケア記録等)の方が介護職員等の負担という意見が出ていることに胸を撫で下ろす思いだ。専門委員会では、指定申請や報酬請求がどの程度事業所の負担になっているかの視点も必要だとしている。優先的に現場の文書類の軽減に努めていただきたい。

Designed by Freepik