社会資源と施設サービスを繋げる施設ケアマネジメントとは?第13回 日本介護支援専門員協会 全国大会での議論

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社会資源と施設サービスを繋げる施設ケアマネジメントとは?第13回 日本介護支援専門員協会 全国大会での議論

大島老健局長「ケアマネが自信を持てる環境作りに取り組む」

徳島市で8月31日から2日間にわたって開催された日本介護支援専門員協会の全国大会で、厚生労働省の大島一博局長が講演した。

大島局長はこの中で、高齢化の更なる進行などで介護ニーズが一段と拡大していく今後に備え、引き続き地域包括ケアシステムの構築に注力する姿勢を改めて示した。

そのうえで、「様々なサービスを有機的に機能させる橋渡し役であるケアマネジャーの活躍、あるいは地域課題の把握や地域作りを担う主任ケアマネの活躍に対する期待は一層高まっていく」と強調。2021年度に控える次の制度改正・報酬改定を念頭に、「ケアマネが自信と誇りを持ちながら国民の期待に応えられるような環境作りに取り組んでいく。そのことも踏まえて制度を考えていきたい」と約束した。

加えて、「専門職どうしのネットワークがやはり大事。日頃からそれをどう形成しているかが大きなポイント」と指摘。「利用者の状態に応じた最適なサービスへといかにつないでいくか、ケアマネが果たす役割は非常に大きい」と述べた。

□「地域作りそのものに関わって」

大島局長はこのほか、サービスの担い手の減少や厳しい財政、認知症の高齢者の増加、生活支援ニーズの拡大、健康寿命の延伸といった今後の課題を踏まえ、地域作りの重要性を繰り返し訴えた。

「介護保険の給付に基づくサービスの展開と、介護保険の給付を使わずに高齢者が地域の中で安心した、充実した暮らしを送れるようにする取り組みとを、バランス良く進めていくことになる。そういう方向へ向かう」と説明。全国の関係者に対し、「ぜひ地域作りそのものに関わって頂きたい。自分の地域はどんな課題を抱えているのか? そうしたことにも関心を持ち、自ら課題の解消を図る地域の主体的な動きを引っ張って頂きたい。それが今後の日本にとって大切なことではないか」と呼びかけた。

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg918.html

第13回 日本介護支援専門員協会 全国大会の開催

2019年8月31日から2日間の日程で開催された第13回日本介護支援専門員協会の全国大会。テーマは「つながり ささえ愛 広がる未来 」である。(*1)

(*1)第13回 一般社団法人 日本介護支援専門員協会 全国大会 in 四国
https://docs.wixstatic.com/ugd/745dd4_22eda91ab446411eb1ac4507552c07ae.pdf

厚労省の老健局長大島一博氏が初日に行った基調講演では、ケアマネが自信を持って業務を遂行できる環境作りや専門職員同士のネットワーク作りなどを述べた。2日目の分科会では基調講演に沿った5つのテーマが設けられ、そのうちのひとつは、在宅生活を継続させるためのツールのひとつとして捉えられている「介護支援専門員の専門性を生かす施設ケアマネジメントを考える」についてだ。

担当地域とケアマネは今ひとつ連携できていないのが現状か

在宅で暮らす要介護者等の支援だけがケアマネの業務ではなく、施設に入所している利用者たちの支援もケアマネの役目であるのは確かだ。施設では施設内の専門職員同士の連携を緊密に行い、可能な限り個別性を活かしたケアプランを作成しているのだが、分科会では、地域に存在する様々な社会資源との連携と活用が注目されていることに加え、利用者支援においては施設と地域を一本の線でつなげる視点が求められているとした。

入所利用者のケアプランは多職種が集まってカンファレンスを行い、専門的な視点で意見を交わし合いケアマネがまとめあげるのだが、地域の社会資源が組み込まれることは少ない。そのため利用者のニーズに応じた個別性の高いケアプランだとは言い切れないのが現状だ。

施設内だけのサービスに偏りがちで、地域との連携が密に図れている施設は少ないと思われる。多くの施設で実施している地域との連携は、ボランティアによる余興などがメインであり、地域に開かれた施設として積極的に取り組んでいる施設では週に1~2度、通常は月に1~2度実施している程度ではないだろうか。

地域の社会資源と施設サービスを繋げるとのことだが、100名の利用者の支援を行う施設ケアマネは、日々の業務に追われモニタリングも満足にできていない者もいるほどだ。地域の社会資源を探し、連携を図ることに費やす時間がない。

また地域にもよると思われるが、地域ケア会議においても参加している施設ケアマネはほぼ皆無だ。はじめから施設ケアマネに召集をかけていない地域包括支援センターもあり、地域の情報を収集しにくい環境である。

実際に社会資源との結びつきを考えるのは難しいところも

在宅での暮らしを継続したいと望んでいた利用者が本来望んでいることは何か。そのなかで施設サービスと繋げやすい社会資源は何かを考え、希望に合う社会資源を探しケアプランにのせていくことは難しい。

個人的には、個別対応の外出が施設では難しいため、移動や付き添い支援の社会資源と繋げたいと考えるが、事故などのリスク面が懸念される。分科会ではどのような議論が交わされたのか、気になるところである。

「介護支援専門員の専門性を生かす施設ケアマネジメントを考える」分科会のポイントは以下の通り。

キーワード

①ターミナルケアにおけるケアマネジメント
②在宅復帰に向けた支援
③施設における多職種連携
④施設における介護支援専門員の役割
⑤介護支援専門員が機能を発揮できる施設の環境づくり
⑥ICT、介護ロボットを活用したケアマネジメント
⑦本人の想いの実現

引用:第13回 一般社団法人 日本介護支援専門員協会 全国大会 in 四国

そのほかの分科会では、在宅医療に伴う自己決定や意思決定支援、地域連携、認知症ケアマネジメントなどの討議が行われた。

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