財務省「要介護1・2を総合事業へ移行すべき」多様なサービスを利用する上で生じる支援側の負担は?

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財務省「要介護1・2を総合事業へ移行すべき」多様なサービスを利用する上で生じる支援側の負担は?

通所介護は総合事業へ移行を 財務省提言 要介護2以下が対象

財務省は9日に開催した「財政制度等審議会」の分科会で、今後の社会保障制度改革を俎上に載せた。

介護保険の関連では、要介護1、2の高齢者を対象とした通所介護を市町村が運営する総合事業へ移すべきと改めて主張。12月上旬にもまとめる提言に盛り込む方針を示した。今後、政府内で実現を働きかけていく構えだ。

現行の制度では、要支援1、2の訪問介護と通所介護が総合事業のスキームで提供されている。市町村が運営基準や報酬単価などを独自に設定できることが大きな特徴だ。

介護給付からの移行が始まったのは2015年度。各地域の実情に応じ、多様な人材・資源を活かした効率的できめ細かいサービスをそれぞれ展開してもらうとともに、膨張を続ける給付費の適正化につなげていく狙いがある。

厚生労働省は現在、2021年度の制度改正に向けた協議を社会保障審議会の部会で重ねている。財務省の主張はここでも取り上げられる見通し。

介護現場の関係者の間では慎重論が根強い。一方で、保険料を負担する経済界や現役世代の立場を代表する委員は実現を迫っている。厚労省は年内に結論を出したい考え。政府・与党の最終判断に大きな注目が集まりそうだ。

財務省は今回、要介護1、2の訪問介護も総合事業へ移すよう改めて注文をつけた。給付費を抑制して財政健全化に結びつけることが目的。

特に問題視しているのは、掃除や洗濯、調理などを行う生活援助だ。「必ずしも自立支援につながっていない」と断じており、介護給付から除外すべきと強く訴えている。

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1125.html

財務省が要介護2以下の区分について主張

2019年10月9日に行われた財政制度分科会の議題は「社会保障」についてだ。今回も財務省は、要介護1・2の者を軽度者と位置づけ、地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)への移行や、ケアプランの有料化、介護保険の自己負担を原則2割にすることなどを主張。(*1・P35/52)

(*1)資料 社会保障について(総論、年金、介護、子ども・子育て)財務省
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20191009/01v2.pdf

社会保障費の公費への依存を減らし、給付と負担のバランスの回復に向けた改⾰が必要だと提言した。

介護予防・日常生活支援総合事業として運営される各種サービスは、事業内容や人員基準、運営基準などを市町村の裁量で決めることができるのが特徴である。

改正前の現行相当サービスに位置付けられているサービスは、予防給付の基準を基本としているため介護給付のサービスと同様であるが、通所A~C・訪問A~Dは自治体により柔軟な基準にすることができる。(*2・P26・27)

(*2)地域支援事業交付金について
https://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h30_jigyou02a_day2.pdf

現在の人員基準だと移行は現実的ではない?

そのなかで気になるのが人員基準である。要介護1・2の者が総合事業の通所介護A(基準緩和)やB(住民主体)を利用するにあたり、支援を行う者が少ない、または介助方法を知らないボランティアばかりのサービスだった場合、お互いに負担を感じることが出てくるのではないかと考える。

利用者は疾患や後遺症を抱えている者ばかりだ。杖歩行やシルバーカーなどを利用して歩けているため、見た目は元気そうであっても、骨折しやすい・転倒しやすい・関節の可動域が狭い・麻痺がある・失語がある・脱臼しやすいなどのリスクを持ち合わせている。

看護職員を配置していないサービスもあるだろう。怪我や急変時のスムーズな対応が望めないことに不安を感じる利用者もいるはずだ。

支援する側に介護の知識がない場合は、心身共に疲れてしまう者がでてくると予測する。介助方法を知らずに力任せに介助を行っていると、腰痛や関節痛などを引き起こす。

また、上手く椅子から立たせてもらいたい・自分の言いたいことをわかってほしい・失禁してしまったらどうしようなど、利用者ごとに違う悩みやニーズを把握し、支援方法を改善していくことも課題になってくる。相談員の配置が不要な場合、管理者や専従の介護職員が対応すると思われるが、負担を感じる者もいるであろう。

要介護2以下を移行する前に体制の整備を

支援される側もする側も同じ立場。ときには支援される者が別の利用者を支援することもある。それが介護予防にも繋がるという総合事業の考え方には賛成だが、要介護1・2の者を移行するのは基準の見直しを行ってからがよいと考える。

アセスメントをどの程度行うのか、適切な介助方法を指導してくれる者がいるのか定かではないが、介護事故が起きてからでは元も子もない。要介護者を受け入れていくためには、介護給付や予防給付のサービス事業所のように研修制度を設け、支援する側の資質の向上を図っていくことも必要だ。

また、ケアプランに記載される各項目の、細かい表記と説明も重要になってくるのではないだろうか。

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