いよいよ介護の自己負担増の検討開始へ〜懸念事項や判断基準に加えてほしい所得以外の項目について

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いよいよ介護の自己負担増の検討開始へ〜懸念事項や判断基準に加えてほしい所得以外の項目について

政府、介護の自己負担増を検討 2割・3割の対象者を拡大=日経報道

日本経済新聞は25日の朝刊で、高齢化とともに給付費の膨張が加速していく見通しの介護保険制度について、厚生労働省と財務省が高齢者の自己負担を引き上げる検討に入ると報じた。

2割や3割の人(*)を増やす方向だという。現行では所得水準の上位20%を対象としているが、これを上位25%へ拡げる案を軸に検討すると伝えた。

* 2割=単身で年金収入のみの場合で280万円以上など。3割=単身で年金収入のみの場合で383万円以上など

自己負担の引き上げは、2021年度に控える次の制度改正をめぐる最大の焦点の1つ。厳しい財政状況や現役世代・将来世代にのしかかる負担などを勘案し、財務省や経済界などが繰り返し「原則2割」とするよう訴えてきた経緯がある。

今回の案は相対的に所得が高い高齢者のみを対象とするもの。実現しても1割のまま変わらない人も多い。財務省などの主張に対しては、現場の関係者から「介護離職ゼロに逆行する」「サービスの利用控えが生じ、かえって重度化を招いてしまう」といった強い反発が出ていた。

日経はこのほか、厚生労働省と財務省が高額介護サービス費の見直しを検討すると報じた。現役並みに所得のある人(*)を細分化し、それぞれの負担上限額を現行の月4万4000円より高くする方向だという。

* 単身で年金収入のみの場合で383万円以上など

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1102.html

介護保険サービスの自己負担額の増加、検討へ

2019年9月24日に日本経済新聞が報道した記事に、厚生労働省と財務省が介護保険サービスの自己負担額を増やす検討に入るとある。(*1)現役世代の負担の抑制に繋げるのが目的だ。

(*1)介護利用料、高所得の高齢者は負担増へ  :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50162040U9A920C1EE8000/

これまでの第1号被保険者の負担割合の引き上げは以下の通り。

2000年4月の介護保険サービス開始~
・負担割合:1割負担  

2015年8月~
・負担割合:1割負担・2割負担  
・判断基準:年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身で280万円、2人以上世帯で346万円以上の場合

2018年8月~
・負担割合:1割負担・2割負担・3割負担
・判断基準:年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身で340万円、2人以上の世帯で463万円以上の場合

現在も介護保険の利用者負担は、年金収入とその他の合計所得を合わせた金額により、介護保険を利用するときの負担割合が1割~3割に分けられている。今回厚労省と財務省が検討するとしているのは、所得の判断基準を引き上げ、2割や3割負担の者を増やすことになる。

また、負担が一定以上になった場合に払い戻し(還付)される高額介護サービス費の負担限度額も引き上げられるようだ。これまで一般世帯では月あたり4万4400円(非課税世帯を除く)だったものが、それ以上の金額で検討されることになる。

現役世代の負担の抑制になるため、利用者の負担割合や負担限度額の基準の引き上げには賛否両論あると思うが、利用者が必要なサービスを受けられなくなるのではという心配の声が上がっている。また、介護サービスの利用を控えることのシワ寄せが家族にくることになり、介護離職者が増えてしまうのではないかと懸念されている。

所得以外に必要だと思われる判断基準は?

具体例をあげると、自宅で生活する者であれば週3回利用していた通所サービスを2回へ減らす、夕方まで利用していた通所サービスを半日に変える、訪問サービスを減らす、生活費を節約するなどだ。

施設入所をしている者であれば多床室のある施設へ移る、加算にあたるサービスを利用しないなどが考えられるほか、施設を退所し在宅へ戻る者も出てくる可能性がある。これでは家族の介護力や費用の低いサービスが地域にどの位あるかが、自立した生活を継続するうえでの要となってしまう。

介護保険制度を貫く理念である国民の努力及び義務にはこうある。

第四条  国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。
2 国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする。

※引用:介護保険法(◆平成09年12月17日法律第123号)

進んでサービスを利用したくてもできない状態では、残存機能の維持向上が望めない。しかし反面で、過剰サービスを見直すいい機会とも言える。また国民が公平に負担するために、所得だけではなく多数のサービスが必要な重度療養疾患や介護度も、判断基準に加えるのがよいと考える。

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