一般介護予防事業の評価指標例、認定率の追加は時期尚早?「要介護認定適正化」の普及を先行すべきでは

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一般介護予防事業の評価指標例、認定率の追加は時期尚早?「要介護認定適正化」の普及を先行すべきでは

厚労省、“通いの場”の成果を評価 指標例に認定率や改善率も 交付金と連動へ

全国の市町村がそれぞれ予防などを推進している介護保険制度の「総合事業」− 。健康寿命の延伸を最重要課題と位置づける厚生労働省は、来年度、あるいは2021年度にこれを見直す計画だ。その方向性の一部がみえてきた。

健康づくりの“通いの場”などのより効果的な展開を現場に促していく。事業のプロセスとアウトカムをみる指標を国として新たに設定。市町村ごとに進捗を評価し、PDCAサイクルを着実に回していってもらう。これと「インセンティブ交付金(*)」を連動させ、自治体のモチベーションを引き出していく方針だ。

* インセンティブ交付金
正式名称は「保険者機能強化推進交付金」。自治体の努力や成果などに応じて、それぞれの金額の多寡を決めるルールだ。地域包括ケアシステムの構築や予防などで「頑張ったところが報われる」仕組みとして、2018年度から新たに創設された。今年度の財源は200億円。

□プロセス指標に専門職の関与

“通いの場”などの進捗をみる指標は現在もあるが、これに基づく評価は義務ではない。実際に評価を行っている市町村は全体の30.4%だけ。PDCAサイクルを回す土台が十分でないところが多いとみられている。

厚労省は「インセンティブ交付金」を使ってこうした状況を改善したい考え。今後の論点として、各自治体の取り組みをより適切に評価していく指標のあり方を据えている。

今月4日に開いた有識者会議では、アウトカム指標に“通いの場”の参加率や社会参加の機会の増加を含めてはどうかと提案。加えて、要介護認定率の推移や要支援者の改善率・悪化率、健康寿命の延伸なども例としてあげた。

プロセス指標の案としては、地域の多様な主体との協働や専門職の関与、行政の他部門との連携、高齢者の参加促進などを提示。このほか、市町村の支援などを中心とする都道府県向けの指標を定める意向も示した。こうした評価の仕組みと「インセンティブ交付金」をどう連動させるかはこれから詰めていく。

政府は目下、「インセンティブ交付金」の財源を来年度から倍増させる方向で調整を進めている。その機能を大幅に強化する狙いだ。自治体がより積極的な姿勢に転じれば、現場の医療・介護関係者への働きかけも強まっていくとみられる。

(引用元より一部抜粋)

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg930.html

PDCAサイクル指標例の一つ、要介護認定率の推移について

2019年9月4日に、第5回一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会が行われた。これは一般介護予防事業などに今後求められる機能や専門職の関与の方策、PDCAサイクルに沿った更なる推進方策などの検討を実施し、介護保険部会の議論に資するための会議である。

PDCAサイクルの指標例のひとつに、要介護認定率の推移と要支援者における改善率・悪化率があげられた。(*1・P5/26)

(*1)【資料2】PDCAサイクルに沿った推進方策について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000544165.pdf

この要介護認定率は要支援・要介護の認定を受けた者の数になるが、2000年の介護保険制度開始以来、上昇傾向にある。65歳以上の1号被保険者数が増加しているのが主な要因であるが、地域によって大きな差がみられる。(*2・P5/9)

(*2)【第15回】要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析(平成30年4月26日) 本文2
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2018/09seisakukadai15-4.pdf

しかし1号被保険者数が増加している地域の認定率がすべて高いわけではないため、地域差には他の要因も考えられるようだ。

要介護認定率の地域差はどんな理由が考えられるか?

介護保険制度の軸となる要介護等の認定調査の実施方法は、初回は自治体職員や事務受託法人が実施し、区分変更や継続時には、居宅や施設のケアマネージャーも行えるような体制である。

認定調査員になるためには、ケアマネの場合、試験合格後に行われる実務研修で1日の研修を受け、自治体職員の場合は都道府県で実施される研修を受けるようであるが、義務付けではなく配慮にとどめられている。老健局長の通知「認定調査員研修実施要綱」によれば、新任の研修時間は4時間以上、現任については必要に応じ・定期的にとしている。(*3)

(*3)認定調査員等研修事業の実施について
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6470&dataType=1&pageNo=1

その結果、研修対象の者や開催頻度は自治体によってさまざまである。(*4・P3/24)

認定調査員テキストが2000年に発行(3年ごとに見直しを実施)されているが、介護や医療現場での経験が乏しい自治体職員が年に1度の研修を受け、テキストを基に認定調査を行うのは正確性に欠けると思われる。実際、認定調査員が判定に迷う項目が多い。(*4・P4/24)

(*4)研修資料(認定調査員) 認定調査員研修について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000170581.pdf

自身の自治体では、年度により認定結果が違うと感じたことがあった。同一人物では比較できないため確実ではないが、これまで要介護認定を受けていた者と同等の状態や環境の者が、次々と要支援認定になった年がある。要介護になるだろうと予測していた居宅のケアマネたちも、驚きを隠せないほどだ。

現在は全国的な要介護認定の適正化を推進することを目的に、「要介護認定適正化事業」としてeラーニングのシステム開発や介護認定審査会訪問事業、厚労省に寄せられる質問受付窓口の運営及び回答支援などのが行えるように、民間企業に委託し見直しが行われているところだ。期間は2018年4月1日~2021年3月31日とされている。(*5)

(*5)要介護認定適正化事業 民間競争入札実施要項(案)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000513378.pdf

要介護認定率を指標例の目安にするのは、「要介護認定適正化事業」 が本稼働し、全国の自治体に普及してからがよいと思われる。認定調査を行っているケアマネの参考のために、厚労省の「要介護認定適正化事業」の公式サイトを紹介したい。eラーニングは自治体職員でないとログインできないが、その他の講義や解説動画、必要な資料のダウンロードなどができるようになっているので、参考にするのもよいだろう。

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