民間企業の賃金アップに対し、介護保険3施設も足並みを揃えていく必要性あり

更新日:
民間企業の賃金アップに対し、介護保険3施設も足並みを揃えていく必要性あり

セントケア、特定加算で新給与制度を導入 ベテランは年98.4万円以上の賃上げ

消費増税とあわせて介護報酬が改定された1日、大手のセントケア・ホールディングが新たな人事給与制度を導入すると発表した。

新設された「特定処遇改善加算」の取得を前提としたもの。10年以上の経験を持つ正社員の介護福祉士などを「マスターインストラクター」と位置付け、手当を従来より月8万2000円以上、年98万4000円以上増やすという。

大手では既にSOMPOケアが、社員の介護福祉士などの給与を各地域でトップクラスの水準まで引き上げる計画を出している。今月から最大で年80万円ほどアップし、2022年には看護師と同等のレベルまで持っていくという。

介護サービスの担い手の不足は今後ますます深刻化する見通し。これに伴い、業界内の人材の獲得競争も激しさを増していきそうだ。

(引用元より一部抜粋)

https://www.joint-kaigo.com/1/article-13/pg1112.html

セントケア・ホールディングが賃金アップの実施へ

訪問介護や訪問入浴、居宅介護支援や福祉用具レンタルなど、幅広いサービス提供を全国展開しているセントケア・ホールディング株式会社が、2019年10月1日に介護職員の賃金アップを実施すると公表した。(*1)

(*1)介護を担う人材の職業的地位の向上を目指し、2019年10月より新たな人事給与制度導入します。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/2374/ir_material/127613/00.pdf

介護福祉士としての経験年数と役割に応じた新たな人事給与制度を導入し、介護福祉士全体の評価を向上させながら、スキルアップとキャリアアップを目指せる仕組みであるとのこと。職務経験3年の者であれば年額444,000円、経験10年になると年額984,000円以上の増額が見込めるとある。

大々的な賃金アップを行う民間企業はこれで2社目。介護職員たちの賃金アップには賛成だが、介護保険3施設も足並みを揃えていかなければ、人材確保がさらに困難になると考える。

介護保険3施設とは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設(老人保健施設)・介護療養型医療施設のことだ。これら3施設は、民間企業がそのままでは参入できない領域。それぞれの設置主体は以下の通り決められている。

  • 特別養護老人ホーム:社会福祉法人・地方公共団体
  • 老人保健施設:医療法人・社会福祉法人・地方公共団体など
  • 介護療養型医療施設:医療法人・地方公共団体など

社会福祉法人は社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人、地方公共団体は都道府県や市町村、そして医療法人は病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所または介護老人保健施設を開設しようとする社団または財団のことである。

民間企業が次々と介護職員を獲得するために賃金アップをしていけば、この3施設の介護職員の離職者が増加することに加え、新卒や転職人材の獲得も困難になる。

介護保険3施設も対策を講じる必要あり

内閣府が16歳~29歳の若者を対象に行っている「子供・若者白書」の「特集就労等に関する若者の意識」では、仕事を選択する際に重要と考える観点について、「安定していて長く続けられること」と「収入が多いこと」が重要だと88.7%の者が答えている。(*2)

(*2)内閣府「子供・若者白書」特集 就労等に関する若者の意識
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30gaiyou/s0.html

そのため同じ業種で業務内容もさほど変わらないのであれば、高収入の道が望める民間企業が運営する施設などへ就職・転職していくと想定される。

こうして介護保険3施設の介護職員が減少していった場合におこる事態は、人員不足による入所制限だ。居室が空いていても介護をする職員がいないため、入所できないということが発生する。そして人材確保ができない状態が続けば、行く末は入所希望者を減らすために、入所条件自体が改正になる可能性もある。

例えば特養であれば現在の要介護3から要介護4や5、老健であれば要介護1を要介護2や3などからの入所だ。そうなれば民間企業が運営する特定施設などに利用者が流れ込む。民間企業は介護職員の獲得=利用者の獲得=会社の利益と考えているはずだ。介護保険3施設も早い段階で、民間企業と同様の介護職員の賃金アップを実施することが課題であると考える。

Designed by Freepik