介護人材、外国人労働者による拡大戦略と入居者の不安とは

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介護人材、外国人労働者による拡大戦略と入居者の不安とは

下記、介護業界も外国人労働者の受け入れに振り切る意思決定について考察してみた。

改正入管法が成立 新在留資格、来年4月創設へ 外国人受け入れ、介護でも拡大
来年4月に創設される新たな在留資格は介護も対象。昨年11月の技能実習の解禁と並び、外国人労働者の受け入れを思い切って拡大する方向へ舵を切る重要な政策転換となる。

在留資格の新設は、深刻な人手不足の解消につなげることが目的。政府は来年度から2023年度までの5年間で、およそ5万人から6万人の外国人の受け入れを見込む。職場環境や処遇の改善などにも注力し、国内人材の確保も引き続き進めていくと説明している。

希望者を実際に受け入れるかどうかは、分野ごとに設ける試験で決めるとした。内容は厚生労働省がこれから詰めていく。ここでどの程度の日本語スキルを求めるかが1つの焦点。現場の関係者からは、「介護ではコミュニケーション能力が非常に重要」「あまりハードルが高すぎると来てくれない」といった声があがっている。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg78.html

介護業界では万年人手不足が懸念

独立行政法人福祉医療機構が平成30年3月に行ったアンケート調査(*1)で、3,304の特別養護老人ホームのうち64.3%の施設が人材不足であると答えている。そんな中、来年4月から介護福祉士の資格が医師や弁護士に並ぶ「専門的・技術的分野」に該当する主な在留資格として認められることになった。

(*1)アンケート調査結果参照URL
http://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/180727_no.3.pdf

「専門的・技術的分野」の在留資格を得ると、通算5年であった技能実習生での在留から、在留期間の上限が付されない 家族帯同の在留資格を得ることができるのである。 この改正により介護職不足が解消されれば、今後も肥大していく日本の高齢化社会が安泰になるのであれば良いが、一物の不安を感じる。

2025年に向けて必要な介護人材確保数とは

2025年に向け約70万人規模の介護人材の確保が必要な介護職と介護業界の外国人労働者について考えてみたい。

現在外国人の介護職員を雇用している特別養護老人ホームは全国で約16.4%である。また、今後の雇用予定では56.8%(*2)の施設が検討していないと答えている。これは、いくら人手不足が重症化していても、外国人労働者に寄せる期待が薄いのが原因である。理由は多岐に渡る業務を覚えてもらうのに人手と時間がかかる、また、利用者や家族とのコミュニケーションが図れないのではないかという懸念要素が大きい。

(*2)(図表 5)外国人人材受入れの検討状況
http://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/180727_no.3.pdf

裏を返せば外国人労働者を受け入れたくても、研修する人材が適切に確保できないほど人手不足が深刻化しているというのが現状である。適切な人材が外国人労働者をフォローアップし、自信をつけながらステップアップしていける仕組みが構築されていれば、外国人労働者も少しずつ馴染んでいくことができ、日本人職員や利用者、家族のとまどいを軽減できると考える。

また、こうも考えたい。
法務省の調べによると、平成29年の在留外国人の数は約256万人である。(*3)
これに今回の改正で2023年度までにおよそ6万人の外国人労働者を受け入れ予定であり、その家族を含めれば更に多くの外国人が日本で生活することになる。その数は京都府の人口と変わらない人数である。

(*3)新たな外国人材の受入れに関する 在留資格「特定技能」の創設について P11
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai2/siryou2.pdf

今回の改正で「留学」から「介護」へ在留資格を変更し、期間制限無しの在留資格と外国人家族同帯の在留資格が得られれば、いずれ外国人の介護保険サービス利用者も増加していくことが考えられる。その時に喉から手が出るほど必要になるのが、言葉の通じる外国人の労働力である。

このため受け入れ施設側も、本腰を据えて外国人労働者を含めた新人職員のフォローアップ体制を確立したい。このフォローアップ体制が整えば、日本人介護職の離職率も減り、堂々巡りであった介護職離れに一石を投じることになるが、容易いものではないも現実ではある。

現在の老人ホーム入居状況は

現在人手不足の施設はフロアーを閉鎖し、入所希望者の受け入れさえできていないのが現状である。そんな逼迫した中で、日本に夢や希望を持ってやってきた外国人労働者のモチベーションを下げずに、単純労働だけを押し付けることなく介護現場で頑張ってもらうには、今が変革の時と考える。

外国人労働者の受け入れを施設の常勤職員総数50人以下の場合は3人などと言う前に、適切な教育・指導に値しない体制で現場を回している現実を見ていただきたい。

介護のサービスの質を下げずにこの状況を打破するには、受け入れ条件のハードルを下げて施設内で充実した教育・指導、フォローアップを行い、国はそのような施設へ外国人教育や新人教育といった新たな加算を投じることが必要である。

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