「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」をなくす?WHILL自動運転システムの活用に期待

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「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」をなくす?WHILL自動運転システムの活用に期待

WHILL、自動運転システムを正式発表 公道での実用化、2020年にも

「世界中の歩道領域で新しい移動のスタイルを生み出していく」と宣言した。高齢者や障害者などの自由度を飛躍的に高め、現場のコストや負担は大幅に抑制していく構想を描いている。

パーソナルモビリティ「WHILL」を手掛けるWHILLが7日、これまで開発を進めてきた自動運転システムを正式に発表した。周囲を見渡すステレオカメラやセンサなどを搭載。歩くことが難しい人の主体的な行動を後押しし、車体の運搬・回収・整列もオートで行う設計となっている。

8日からラスベガスで開催される世界最大級の家電見本市「CES 2019」に出展する。昨年から注力しているMaaS(*)事業の国際的な展開につなげる計画。当面は空港やショッピングモール、スタジアム、テーマパーク、観光地、病院・施設などでの普及を図る。高齢化や人手不足に伴うニーズの拡大を見据え、2020年をメドに公道での実用化も目指す。

* MaaS
Mobility as a Service。移動手段の乗り物を買って所有するのではなく、サービスとして利用する形を指す。カーシェアやライドシェアなどが身近でイメージしやすい。自動運転や人工知能(AI)、オープンデータなどをかけ合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリングサービスも統合して次世代のよりスマートな交通システムを生み出そうという動きを言う。

http://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg308.html

歩道領域における自動運転システム

「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という一人の車椅子ユーザーの声から始まった「WHILL」というパーソナルモビリティーのものづくりを行っているWHILL株式会社が、2019年1月8日からの4日間アメリカ・ネバダ州ラスベガスで行われた世界最大級の家電・エレクトロニクス技術展示会「Consumer Electronics Show (CES) 2019」で、歩道領域のための自動運転システム「WHILL自動運転システム」を出展した。(*1)

(*1)Latest News – WHILL株式会社公式
https://whill.jp/news/22282

この「WHILL自動運転システム」は、MaaS事業を推進し、あと少しの距離を繋ぐ新しい移動手段の公道における実用化を、2020年を目途に目指している。

空港やショッピングモールなど広域の場所に限らず、下肢筋力の衰えた高齢者や身体機能に障害のある者の移動は大変である。
車いすを無理なく自操(自分で操作)できる者は良いが、車いすの車輪を漕ぐには腕の力や残存している足の力、体力が必要である。

また、後方面が見づらく健常者の多い人混みの中では視界が悪いため、広域の場所では衝突の不安があり自分の行きたい場所へ訪れることを断念して閉じこもりがちになっている者も多い。
今回の移動支援機器「WHILL自動運転システム」で障害物などを見分け安全に走行し、車椅子の運搬や回収・管理などの作業も自動化されるという優れものだ。

外出時の介助の有無が難しいところ

普段車椅子を利用している者が広域の場所へ出かける際は、予め車いすの設置されている入口を調べ、帰りも車いすを戻すために車いすの設置場所へ戻るという手間が生じる。それらを省けるだけでなく、他人や障害物に衝突しない安全面を考えても安心して利用できる自動運転システムである。

ただ、この「WHILL自動運転システム」へ乗車する時の介助も気になるところだ。
介護タクシーや家族の運転する車などで目的地へ訪れた場合は良いが、一人で自宅から自分の車椅子で出かけた者が、疲労のため広域の場所で「WHILL自動運転システム」へ移乗したいときのリソースは必要になりそうだ。

認知症患者への応用もできそう

しかし、こういった利用方法もある。それは認知症患者の移動手段としての活用だ。
目的地と自宅の地図を「WHILL自動運転システム」に記憶させれば、短期記憶力が低下してきた認知症患者が迷わず目的地に到着し、無事に自宅へ戻ることができる。

途中で気持ちが変わり降車しないことが前提であるが、降車してしまった場合も車いすが後を付いて伴走するシステムであれば、それを見かけた者が地図に載っている自宅へ連絡をしてくれるはずだ。少しは道に迷うという心配は軽減されるのではないだろうか。

画期的な移動手段として期待

また、歩行の機会が減らないためにも「WHILL自動運転システム」の動力とシステム部分が自分の所有する車椅子や歩行補助具へ脱着式で取り付けられ、必要な時に必要な場所で導入できれば、利用シーンはさらに広がりそうだ。
自宅で所持する場合は自宅から使用でき、設置されているポイントで使用する場合は移乗する必要がない。そうすれば、自立支援の妨げにもならない。

もちろんこれらは贅沢極まりない考えではあるが、技術の進んだ現代なら、そのような移動手段システムも近い将来登場するのではないだろうか。

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