老健局「介護保険改革」介護度別の区分支給限度基準額はどうなるのか?

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老健局「介護保険改革」介護度別の区分支給限度基準額はどうなるのか?

老健局長、介護保険改革のポイントは「人手不足、認知症、持続可能性」

厚生労働省は18日、全国の都道府県や指定都市などの担当者を本省の講堂に集め、今後の重点施策を説明する「部局長会議」を開いた。

「介護保険の見直し作業に入る」。

制度を所管する老健局の大島一博局長はそう明言。「人手不足、認知症、(制度の)持続可能性にこたえるものでなければならない」との認識を示した。

2021年度から始まる次の3年(第8期)に向けて、厚労省は来年の通常国会に介護保険法の改正案を提出する予定。今年はその内容が審議会などで本格的に議論される。制度の行方を左右する非常に重要な年だ。

政府はすでに、居宅介護支援のケアプラン作成で新たに自己負担を徴収することや、市町村の総合事業へ移すサービスを増やすことなどを俎上に載せる構えをみせている。18日の経済財政諮問会議では、民間議員が「歳出改革のさらなる強化」に取り組むことを改めて提言した。今後さらに多くの争点が浮上する見通しで、業界を騒がす大きな議論に発展していくとみられる。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg319.html

区分支給限度額を変更する方向へ

2019年1月18日に全国厚生労働関係部局長会議が行われた。
この会議の中で高齢者医療や福祉等を所掌する老健局では、今後の介護保険制度の重点施策について説明を行った。

老健局部長会議資料によると、下記内容の説明が行われたことが分かる。

1 2019年度介護報酬改定について
2 介護サービス現場の改善について
3 介護保険料の低所得者軽減強化の円滑実施のための支援について
4 2019年度保険者機能強化推進交付金の方向性について
5 認知症施策の推進について
6 平成31年度予算(案)について

※引用:老健局 重点事項説明資料 平成31年1月18日(金) 全国厚生労働関係部局長会議

この中の「1.2019年度介護報酬改定について」内の「介護保険サービス等に関する消費税の取扱いついて」では、区分支給限度基準額に関して触れている。

資料では在宅サービスについて利用者の状況に応じた適正なサービスを提供する観点から、必要な居宅介護サービスのモデルを用いて要介護度毎に区分支給限度基準額を設定とある。
これは現在の区分限度基準額が適正かどうか勘案し、今後の区分支給限度額を変更していく方向であるとみるが、ここに焦点を当ててみたい。

要介護2でも支給限度額を超えるのはなぜか

それでは実際に在宅で居宅サービスを利用している者の現状をみてみたい。
資料では、支給限度額を超え自己負担が出ている者の割合は介護度が重くなるほど高くなっているが、要介護度2の割合の3.6%と、支給限度額を超えている者の人数30,454人という点に注目していただきたい。

介護保険サービスの基本単価は要介護度が重いほど高いという設定であり、各サービスの加算項目にあたる疾患も、要介護度の重い者の方が該当する者が多いため、要介護4や5の場合はどうしても限度額を超えてしまうというのは理解できる。
しかしサービス単価が低く加算項目に該当する疾患も少ないと思われる要介護2の者が、支給限度額を超えてしまう理由は何故か。

それは要介護度を決める認定調査の項目に「置かれている環境等」が含まれていないからである。
例えば同レベルの麻痺のあるAとBという者がいたとして、Aの家庭は24時間介護者いるが、Bの家庭は皆仕事に出かけてしまい日中は一人で過ごすといった場合だ。

環境要因によって追加サービスの有無が発生

認定調査で勘案される特記事項の視点の一つに「介護の手間や頻度」があるが、要介護2の日中の「介護の手間や頻度」は昼食の準備と服薬管理くらいと考える。
しかし転倒したら起き上がることができないため、できるだけ一人でいる時間をなくしたいと考えれば、30分ヘルパーに入ってもらうより1日利用のデイサービスを利用した方が安心である。

このため前項で例示したAは、リハビリを目的に週2回サービスを利用すれば良いが、Bは週2回のリハビリと家族のいない残り3日間はデイサービスなどを利用することになる。
これに家族の出張などの時はショートステイ、家族の帰りが遅い曜日は訪問介護を利用すれば、あっという間に支給限度額を超えてしまう。

これは麻痺のある者だけではなく、認知機能が低下している者や精神行動障害がある者も同様である。
誰しも日中一人でいる時間を無くし、安心して在宅で生活することを望んでいる。

要介護度の要件を変えれば要介護2の負担は減るはず

要介護度は各樹形モデルから算出される行為区分毎の時間の合計値に、特別な医療の時間と認知症高齢者のケア時間を足した「要介護認定等基準時間」できまる。(*2)

(*2)樹形モデル図(要介護認定等基準時間の推計方法)
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/dl/text2009_4_11.pdf

要介護2が出る「要介護認定等基準時間」は50分以上70分未満である。

ここに、「置かれている家族の環境を加算」として介護者不在の時間も加えれば、日中一人で過ごしている要介護2の者も、必要なサービスを自己負担なく利用できるようになると考えるが如何だろうか。

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