介護現場のインフルエンザ対策は職員に浸透しているのか?

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介護現場のインフルエンザ対策は職員に浸透しているのか?

介護現場へインフル対策の徹底を要請 感染拡大に注意を 厚労省

介護施設などでインフルエンザの集団感染が相次いでいることを受け、厚生労働省が改めて注意を喚起している。対策の徹底を求める通知を22日に発出。介護保険最新情報のVol.694で広く周知した。

厚労省はこれまでに、インフルエンザの総合対策や「感染症予防指針」、「感染対策マニュアル」などをまとめている。

この中では、感染すると重症化しやすい高齢者が入所している介護施設に対し、マスクによる「咳エチケット」や手洗いなどでウイルスの侵入をなるべく防ぐよう指導。定期的に利用者の健康状態をチェックしていくこと、利用者へ十分に説明したうえで予防接種を行うことなども勧めている。

加えて、施設内に専用の対策委員会を設置するよう指示。衛生管理や発生状況の把握、医療機関との連携などのあり方を定める指針を作るよう要請している。

感染の疑いがある利用者は、他の利用者から離して個室で対応すべきだという。疑いが複数の利用者に及んで個室が足りない場合は、同じ症状の人を同室にするなどの対応を促している。できるだけ早く医療機関で診てもらうほか、感染者のそばにいた人の予防についても医師に相談すべきとしている。

このほか、1週間に死者や重症者が2人以上あらわれるなど異常が認められる場合は、自治体や保健所に速やかに報告するよう求めている。

国立感染症研究所によると、今月7日から13日までの1週間の推計患者数は全国で163.5万人まで増加した。高齢者向けの施設では今月に入り、秋田県の特別養護老人ホームで4人、京都府の介護老人保健施設で1人、兵庫県の養護老人ホームで7人が亡くなる集団感染が起きている。

https://kaigonews.joint-kaigo.com/article-10/pg324.html

介護施設におけるインフルエンザ対策

高齢者が入所している介護施設では、介護保険法の規定「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(*1)に基づき、衛生管理について常日頃から慎重かつ真摯に感染症予防に努めている。

(*1)指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/hourei/12rk043.html

特に平成25年以降は厚生労働省がとりまとめた「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」(*2)を参考に、各施設においては感染対策担当者を中心に研修や勉強会などを行っている。

(*2)高齢者介護施設における 感染対策マニュアル 平成25年3月
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp0628-1/dl/130313-01.pdf

今年のインフルエンザは猛威を振るい、全国の介護施設で死亡者や重篤者が相次いでいる。
厚生労働省は1月22日に改めて「高齢者介護施設における感染対策マニュアル等の再周知について」注意喚起をした。(*3)

(*3)「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」等の再周知について
http://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/01/vol.694.pdf

感染症予防はもちろん感染症対策も

介護保険法にも定められている感染症予防について、介護施設は敏感である。
インフルエンザに関しては職員と利用者全員予防接種を行い、流行り出す時期になる少し前からマスクの着用や手指の消毒を職員全員に促している施設もある。

また、面会者や通所利用者・出入り業者にも同様に手洗いや手指の消毒の協力を得るため、掲示物で注意喚起をしたり声掛けを行うなどもしている。
それでも介護施設で感染者が出てしまうのは非常に残念なことである。

果たしてインフルエンザウイルスは何処からやってくるのか考えてみたい。入所している利用者は感染源ではないと考えたいが、外出や病院受診をした者はウイルスをもらってきてしまう場合もある。

面会に来る家族や予防接種をしている職員も発症をしていないため気づかないだけで、ウイルスを持ち込んでくることは十分に考えられる。

このように考えると、インフルエンザウイルスを介護施設から完全にシャットアウトするのは至難の業であることがわかる。
要は感染症予防より感染症対策が大切であり、インフルエンザウイルスが介護施設内に入り込んでしまった時に、どれだけまん延させないかが重要だということだ。

職員教育が適切になされるかが課題

では、感染症対策が介護施設で的確に行われているかも考えてみたい。

  • 感染症が疑われる症状が出た利用者はすぐさま隔離され面会謝絶となる。
  • 食事に使う食器などはその都度消毒されるか、使い捨ての食器類を使う施設もある。
  • 出入りする職員も限定し、それ以外の職員はよっぽどのことがない限りそのフロアーには立ち入ることができない。
  • やむを得ず感染している利用者のいる部屋やフロアーに入る場合は出入りの際にアルコール消毒をし、使い捨ての手袋とマスクの着用を行う。

このような対策をどの介護施設も行っているはずだ。

インフルエンザウイルスは飛沫感染と接触感染の両方でまん延していく。(*4)感染がまん延しないためには職員の感染症に対する意識と知識が大切だ。

(*4)政府広報オンライン「インフルエンザの感染を防ぐポイント手洗い・マスク着用・咳エチケット」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/200909/6.html

介護保険法の感染に関する規定の中に、「職員教育を組織的に浸透させていくためには、当該施設が指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な教育(年2回以上)を開催するとともに、新規採用時には必ず感染対策研修を実施することが重要である。」とある。

職員の入れ替わりが多く人手不足の多い介護業界で、状況判断と指示を的確に行える感染対策担当者の設置と定期的な教育を開催する余裕はあるのだろうか。

今回のインフルエンザウイルスのみならず他の感染症についても、まん延し集団感染にならないことを祈りたい。

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