Q. 祖父が入院しています。先日お見舞いに行ったときに鍵のついた手袋のようなものをつけていたのですが、自分で外せないように半ば拘束された姿を見てとてもショックでした。治療のために致しかたないことだとは理解できるのですが、今後施設に入所しても、同様に動けないようにされてしまうのでしょうか。
A. いいえ、基本施設では身体拘束を行いません。
おそらく病院にいるときにされていた手袋はミトンという二股の手袋で、手を入れる部分に鍵がついている物です。素材も革のような厚い物でできている場合が多く、細かい手の動きが制限されます。これをはめることにより点滴の針を抜いてしまう行為(抜去)を防いだり、便をいじるなどの不潔行為を防いだりしますが、自分で取り外しのできないミトンの使用は身体拘束に当たりますので基本施設では行いません。
病院で行われた理由は、病院は医療を行う場所のため命を守ることが優先され、その割合も高いからだと考えられます。病院では8割の方が点滴しているが施設では2割の方しか点滴していないという具合に、適切な治療が行われるための場面も必然的に多いからではないでしょうか。
介護保険施設では、2000年からはじまった介護保険制度の中で身体拘束の禁止が規定されています。必要かつやむおえない事情がある場合に限り、家族の同意を得て身体拘束をする場合がありますが、できるだけ身体拘束を行わない方向でどの施設も身体拘束ゼロを目指しています。
身体拘束を行う時のやむおえない事情とは
- 点滴やチューブを抜く行為
- 転落の危険性
- かきむしりや自傷行為
- 不潔行為
- 車いすからの転落
- 異食行為
- 暴力行為
などが挙げられます。
その他にもさまざまな理由がありますが、施設ではそのような行為があったとしても、命の危険性(切迫性)があるのか、他に方法がない(非代替性)、身体拘束は一時的なものか(一時性)の全てが当てはまらないと身体拘束を行うことはできません。
また、身体拘束を行う時には家族に説明をしてインフォーム ド・コンセント(承諾書)に家族のサインを必ずもらいます。そのため「面会に来たら身体拘束をされていた」ということはありません。
※もし知らないうちに身体拘束をされていたら自治体の相談窓口へ連絡してください。
そして万が一身体拘束を家族の承諾を得て行った場合でも細かく記録をとり、身体拘束の解除ができるかどうか毎日毎回検討し、必要最小限で済むようにしています。(点滴を抜いてしまう行為の場合は点滴を初めて抜く行為があったら身体拘束をして、点滴が終わったら解除します)
特に非代替性について職員で良く話し合うことが多いです。点滴を抜いてしまう行為がある場合は、点滴の管を袖口から出さずに背中の方へ回すなど、本人の視線から外れるようにする、転落の危険性がある場合はベッドを外して畳を敷く、かきむしりがある場合は衣類の洗濯の方法を変えるなど、施設でできることは何でも検討し試します。
身体拘束は人権問題にもつながる大切なことですので、心配なことがあれば入所前に施設の職員へ相談しましょう。
因みに身体拘束に当たる行為は
- ミトン
- 4点柵(ベッドを4つの柵で囲む)
- 拘束ベルト(ベッドに身体を固定する、車いすに身体を固定する)
- 立ち上がりづらい椅子(椅子の高さが低すぎる、高すぎるなど)
- 介護衣(鍵付きのつなぎ服)
- 車いすテーブル(車いすにテーブルがついているもの)
- 部屋へ隔離(本人があけることのできない寝屋)
- 向精神薬(過剰に摂取させる)
など、全部で11項目が定められています。