介護現場における老老介護が加速〜介護職員の平均年齢が訪問55.5歳、施設44.8歳に

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介護現場における老老介護が加速〜介護職員の平均年齢が訪問55.5歳、施設44.8歳に

【訪問介護】深刻さを増すヘルパーの高齢化、20代はたった1% 60歳以上が約4割

今や多くの人が肌感覚で知っていることではあるが、かなり深刻な実態が改めて浮き彫りになっている。

全国労働組合総連合(全労連)が24日に公式サイトで公表した調査結果では、訪問介護を支える介護職員のうち20代は1.0%しかいないと報告されている。

平均年齢は55.5歳。50歳以上が全体の73.0%を占め、60歳以上でみても37.7%と4割に迫っている。各年代の割合は以下の通り。(※引用元参照)

全労連は「早急な処遇の改善と制度の見直しが必要」と主張。「それを行わないと“介護崩壊”が進行する」と訴えている。

この調査は昨年10月から今年1月にかけて実施されたもの。組合に未加入の人も含め、1897人の訪問介護の介護職員(サービス提供責任者やホームヘルパーなど)から回答を得たという。

登録ヘルパーに限ってみると平均年齢は58.7歳。60歳以上が51.0%にのぼっていた。一部の地域を除いて訪問介護のニーズは今後さらに増えていく見通しだ。

既に人手が不足しているか? この問いに「不足している」と答えたのは57.5%。特に正規職員は82.7%と圧倒的だった。人手不足の要因は何か尋ねたところ、「賃金が低い(52.4%)」「収入が安定しない(33.2%)」などが目立っていた。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg566.html

介護現場の高齢化が深刻

2019年4月24日に、全国労働組合総連合が介護労働実態調査報告書を発表した。(*1)
調査期間は2018年10月1日~2019年1月31日、対象は訪問介護・施設・居宅介護支援事業所などで働く介護労働者である。

(*1)全国労働組合総連合「介護労働実態調査報告書」
http://www.zenroren.gr.jp/jp/kurashi/data/2019/190424_03.pdf

今回の調査目的は以下の通りだ。

目的

①介護で働く労働者の労働実態を明らかにし、19春闘など労働環境改善の要求につなげる。
②結果報告を活用し、介護労働者自身が職場や地域で、自分たちの労働実態の改善、組織強化につなげる。
③結果報告を活用し、事業者団体や職能団体と懇談、制度改善運動の共同を広げる。
④結果報告を地域の事業所訪問などに活用し、未組織の組織化、組合員拡大につなげる。

※引用:全国労働組合総連合「介護労働実態調査報告書」  

調査結果から気になる点をいくつか取り上げてみたい。
まず介護の現場には20代の若者がほとんどいないということだ。

施設で10.9%・訪問で1.0%との結果である。
また、平均年齢は施設で44.8歳、訪問で55.5歳と、介護現場の高齢化が進んでいる。

他の職種の平均年齢が気になったので、2017年度のものになってしまうが、総務省統計局の「主要職種別平均年齢,勤続年数,実労働時間数と月間給与額」を参照した。(*2)

(*2)総務省統計局「主要職種別平均年齢,勤続年数,実労働時間数と月間給与額」(※Excelファイル)
https://www.stat.go.jp/data/nihon/19.html

訪問介護の平均年齢55.5歳を超える職種は、タクシー乗務員59.4歳、大学教授57.6歳、ビル清掃員55.5歳の3職種であった。
また、総務省統計局の福祉施設介護員の平均年齢は42.4歳・ホームヘルパー48.7歳とあり、若干の誤差があるようだ。

調査結果から、介護職に人気のない理由も明確に…

それにしても、介護の現場でも老老介護が始まりつつあるのは問題である。今回の調査結果では、介護職が若者に人気のない理由も見えている。

平均賃金が全産業平均より低いということ以外に、不払い残業もあり、公休も予定通り取れていない。しかもパワハラ・セクハラまであり仕事がつらい、忙しすぎる、体力が続かないなどと最悪である。(*1)

体力面は介護職員の高齢化によるところもあるとは思うが、若者が介護現場で働く魅力を感じないことに変わりはない。

賃金の面では、介護職員の新加算である「特定処遇改善加算」の算定が始まれば少しは意識も改善されるかもしれないが、事業主は加算とは直接関係のないケアの準備や片づけなどの業務に対しても賃金を支払い、サービス残業を無くすべきである。

また、訪問介護職員に「介護サービスを提供するために不足していることは何か」という問いの回答も気になる結果であった。

「必要なサービスが提供できる時間の保障がほしい」「利用者とコミュニケーションをとれるゆとり」の2点が、過半数を超えているのだ。(*1)

利用者と向き合い質の良い支援を行いたくても、時間に追われて時間が足りないということになる。

傾聴の時間の確保がやりがいに繋がることも

また、現時点で訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等のなかに「傾聴」はない。
「サービス準備・記録等」のなかに「相談援助、情報収集・提供」の項目があるが、これらはサービスを提供する際の事前準備等として行う行為であり、状況に応じてとある。(*3)

(*3)厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000201799.pdf

そのため提供時間内ギリギリのサービス内容が詰め込まれている場合、親身に利用者の相談を聞く時間などなく「ケアマネに伝えます」「次の時伺います」と受け答えをするしかない状況になり、真面目に取り組んでいる者ほどジレンマを感じのではないかと考える。

傾聴はケアマネの業務でもあるが、利用者も「毎日来てくれる訪問介護員に話したい」「後ででは忘れてしまう」ということもある。
10分でも傾聴の時間が作られれば訪問介護員のジレンマも解決でき、更にやりがいのある仕事に変化していくと考える。

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