実際の負担は加算要件を満たすための文書?要件自体の見直しも必要では|介護現場のペーパーレス化へWG発足

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実際の負担は加算要件を満たすための文書?要件自体の見直しも必要では|介護現場のペーパーレス化へWG発足

介護の事務負担WG、今夏始動へ 書類の削減・標準化へ年内に具体策

長いこと現場を悩ませてきた問題。期待通りの成果が出るかはまだ分からないが、国がこれまでなかった動きをみせていることは確かだ。

厚生労働省は23日、介護現場の事務負担の軽減に向けた検討を行うワーキンググループを新たに設置することを正式に決めた。

社会保障審議会・介護保険部会で提案し、委員から大筋で了承を得た。今後、夏までに初会合を開催する予定。当面の具体策を年内に固める方針だ。

新設するWGでは、事業所の指定申請や介護報酬の請求、指導・監査に関する幅広い書類を俎上に載せる。

自治体の関係者や介護サービス事業者らと協議を重ね、省略・簡素化できるものはどれか選定していく。保険者・指定権者ごとに異なっている様式・添付書類を洗い出し、分かりやすい標準的なスタイルの形成につなげる。異なる解釈が生まれることの多い案件についてはルールの整理を行う。

これらの採用が現場に強制されることはない。厚労省は業界の合意にもとづくデファクトスタンダードの確立を目指す。その結果としてペーパーワークの効率化、ローカルルールの解消を実現したい考えだ。

厚労省の担当者はこの日の部会後に記者団に対し、「皆で話し合ってひとつひとつコンセンサスを積み上げていきたい。自治体と事業者、双方がメリットを得られるようにできれば」と話した。

介護現場の事務負担の軽減をめぐっては、自民党の厚労部会が有効な具体策を早急に立案するよう迫ってきた経緯がある。小泉進次郎部会長らは、ローカルルールの“撤廃”など踏み込んだ対応も提案した。背景にあるのは非常に深刻な人手不足だ。生産性の向上は不可避の課題で、厚労省は多方面から明確な結果を求められている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg597.html

介護現場のペーパーレス化に向けたWG設置

2019年5月23日に、第77回社会保障審議会介護保険部会が開催された。予てより、介護職員の人材不足が問題となっている。

今回、介護保険部会の下に新たに設置されたワーキング・グループでは、職員たちの負担を軽減し必要な介護サービスの質を確保する観点から、介護分野の文書に係る負担軽減を実現していくとのことだ。

これまでにも「未来投資戦略2018」では現場のICT化により文書量の半減を目指し、自由民主党の厚生労働部会ではICT化の推進による介護現場のペーパーレス化を実現する取組を進めている。

今回設置するワーキンググループは、

  • 都道府県や市区町村役所↔︎介護保険施設(ケアマネジャー)
  • 都道府県や市区町村役所↔︎地域包括支援センターと居宅介護⽀援事業所(ケアマネジャー)
  • 都道府県や市区町村役所↔︎介護サービス・介護予防サービス提供事業者

の各種届出・通知に関する文書が対象となる。(*1)

(*1)介護分野の文書に係る負担軽減に関するワーキング・グループ(仮称)の設置について
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000511205.pdf

上記の工程で、個人的に手続きが面倒だと思われる文書は、「運営規定や事業所の更新申請・変更届け」「各種加算項目の要件に関わる文書」「実地指導事前準備書類」などだろうか。

運営規定や事業所の変更届については、少しの変更でもその都度届出をしなくてはならない。
自治体により差があるだろうが、変更箇所だけでなく全て揃えて提出するのである。

また、修正箇所の文言がおかしいと連絡が入り、再提出ということになる。記入例は用意されていたが、全て当てはまる内容ではないため不備が出る。

各種加算項目の要件に関わる文書については多岐に渡る。加算の種類によりさまざまだ。加算を多く算定している事業所ほど、関連文書も増える。

加算要件を満たすための文書が負担に?

そしてこの文書類は、現場職員に直接関係してくる部分である。ICT化により1日も早く半減することを望むが、加算要件自体も見直す必要があるのではないだろうか。

例えば低栄養リスク改善加算では、月に1度専門職が集まりカンファレンスを行い、計画書を作成する必要がある。
リハビリマネジメント加算Ⅰでも、加算算定開始月~6ヵ月間は毎月家族を含めたカンファレンスと計画書の作成が必要だ。

その他でも、高い頻度でカンファレンスと計画書の作成が求められる加算が多くある。利用者の状態改善のために行われる加算項目であるが、医師や家族を含めた専門職によるカンファレンスの開催自体も調整が難しく、計画書作成の負担感も大きい。

実地指導の事前準備では、上記の文書を取り揃える以外にケア記録などが必要だ。しかし加算に関わる文書類が遅滞なく作成され、日常の記録が滞りなくその日のうちに解消されるようになれば大きな問題はないと考える。

やはり現場職員を苦しめているのは、加算要件を満たすための文書であると改めて感じる。

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