高齢者になってからも生きがいのある人生を送るには?一般介護予防事業のより効果的な展開について見直しへ

更新日:
高齢者になってからも生きがいのある人生を送るには?一般介護予防事業のより効果的な展開について見直しへ

介護予防の“通いの場”、どう展開? 厚労省、具体策の検討本格化 民間との連携も

要支援・要介護と認定される前の高齢者も幅広く対象とする介護保険の「一般介護予防事業」について、厚生労働省はより効果的に展開していくために制度の見直しに乗り出した。

体操などの“通いの場”を改良することが大きな柱。最重要課題と位置付ける健康寿命の延伸に向けて、参加者の増加や機能の強化につながる具体策を立案する。

新たに設置した有識者会議を27日に始動させた。

専門職にどう関与してもらうか、自治体向け、あるいは個人向けのインセンティブをどう設定するかなどが論点。高齢者の関心を引きつける魅力的なコンテンツが生まれると睨み、スポーツジムやカフェなど多様な民間事業者にコミットしてもらう仕掛けも設けたい考えだ。

夏までに施策のアウトラインを固め、秋以降に細部を詰めていく計画。年末までに取りまとめを行い、社会保障審議会・介護保険部会へ報告する。2021年度に控える次期改正の目玉の1つになるとみられる。

□参加率、まだ5%

介護保険の「一般介護予防事業」は、市町村がそれぞれ運営している「地域支援事業」の一環。65歳以上の全ての住民を対象とし、ニーズの把握や普及啓発、地域作りなどが実践されている。体操などの“通いの場”はメインメニューの1つだ。

厚労省によると、2017年度の時点で“通いの場”を開催している市町村は全体の86.5%に至っている。その数は全国で9万1059ヵ所にのぼっており、以前と比べてだいぶ普及してきたと言える。

ただし、高齢者の参加率は4.9%と低い水準のまま。これを引き上げていくこと、なるべく頻度を高めてもらうことが重要な課題となる。厚労省は「自治体間のバラつきが大きい」との問題意識も示す。交付金によるインセンティブの強化などで取り組みの底上げを図る構えだ。

医師や保健師、栄養士、リハ職などにもっと力を発揮してもらい、サービスの専門性を向上させることも重要な課題となる。今月15日には国会で関連法が成立。後期高齢者医療制度の事業と連動させたり、保険者間で情報を円滑に共有したりする環境も整っている。

27日の有識者会議は、委員どうしのフリーディスカッションがメインだった。厚労省は現状を整理したうえで、「“通いの場”の推進方策をどう考えるか?」などと意見を求めただけ。まだゼロベースで様々な可能性を検討している段階、という態度を崩さなかった。次回の会合は6月の予定。そこで論点がもう少し絞られれば、具体策の輪郭くらいは見えてきそうだ。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg601.html

一般介護予防事業等の更なる推進を

2019年5月27日に、第1回一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会が開催された。(*1)

(*1)「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」開催要綱
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000512175.pdf

検討会では、専門職などの効果的な関わりやPDCAサイクルに沿った方策などを行い、一般介護予防事業等を更に推進していくことを目的としている。

65歳になると介護保険被保険者証が交付される。もちろん介護認定を受けていない場合は介護度の記載のない被保険者証であるが、これが届くと「歳をとった」と感じるみたいだ。

今回の検討会の参考資料の中にこんなアンケート結果がある。(*2・P8)

(*2)厚生労働省老健局老人保健課「一般介護予防事業等について」令和元年5月27日 厚生労働省老健局老人保健課
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000512177.pdf

「高齢者とは何歳以上か」との質問への回答だが、65歳以上からと答える割合が、1998年度から2012年度にかけて8%減少している。今の世の中、高齢者とは70歳を超えている者を差すようだ。

本質的な「生涯現役」とは?

実際に体力テストでも若返りの傾向にある。(*2・P9)平成29年体力・運動能力調査の結果を見ると、どの年代も軒並み合計得点が上昇している。

国ではこれまでにも、健康寿命を延伸するために高齢者全体のリスクを下げることを目的として、機能回復を中心とした通いの場を提供する地域づくりを行ってきた。しかし平成26年の法改正からは、生きがいや役割をもって生活できるような、居場所と出番づくり等が更に必要だということになった。(*2・P23)

個人的には、元気な高齢者は仕事をしなさいと言っているようにも聞こえるのだが…。

ここで平成30年の経済産業省の資料「生涯現役社会に向けた雇用制度改革について」を紹介したい。

(1)高齢者の就労・社会参加の促進
いくつになっても、意欲さえあれば、柔軟で多様な働き方で就労や社会参加できるような環境を整備するため、どのような課題に取り組むべきか。

①65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けた検討
②高齢者未採用企業への雇用拡大策
③AI・ロボット等も用いた職場環境整備
④介護助手制度などの高齢者の社会参加の機会の増大

※引用:生涯現役社会に向けた雇用制度改革について 平成30年10月 経済産業省

この資料の中でも、元気で働きたい高齢者が多いため、就労と社会参加できる環境「生涯現役」を推進している。しかし勘違いしてはいけない。高齢者が働きたいのは「体力的に辛くなく、自分のやりたい仕事」というのが前提のはずだ。

一般介護予防の対象者は、65歳以上の元気な男女

ある大手チェーンの有料老人ホームの取組みとして、とあるもの見かけた。施設でボランティアを行うとポイントがもらえる仕組みなのだが、そのポイントを自分や親族がグループの老人ホームへ入居する時の前払い金に充てることができるというものだ。

ボランティアを行うには面接が必要だが、内容は歌や踊りの披露でも、お茶やお花の講師でも、囲碁や将棋の相手でも何でも良い。もちろん介護助手としても受け付けている。

自分の得意分野や好きなことが活かせてポイントが貯まるボランティアだ。また、ポイントは現金にも換金できる。

専門職の更なる関与やPDCAサイクルも良いが、今回発足した検討会で忘れてならないのは、一般介護予防の対象者は高齢者ではなく、65歳以上の元気な男女であるということだ。

Designed by Freepik