介護予防・日常生活支援総合事業、住民主体の「多様なサービス」にも十分な支援を!

更新日:
介護予防・日常生活支援総合事業、住民主体の「多様なサービス」にも十分な支援を!

総合事業の訪問・通所介護、国の新たな単価が公表 今年10月から適用へ

要介護1から5と同じ。それぞれ数単位ずつ引き上げられている。

厚生労働省は8日、市町村がそれぞれ運営する「地域支援事業」の実施要綱を改正したとアナウンスした。介護保険最新情報のVol.727で広く周知している。

要支援1・2の高齢者を対象とした訪問介護と通所介護について、国として定めている単価も改められた。適用は介護報酬改定が実施される今年10月。要介護者への給付と同様に、消費税率の10%への引き上げで嵩む事業所の出費を補填する意味合いがある。確定した単価が公表されるのは今回が初めて。

例えば訪問。訪問型サービス費Iは1168単位から1172単位へ、訪問型サービス費IIは2335単位から2342単位へアップされた。通所の要支援1は1655単位に、要支援2は3393単位に変わっている。

全容は介護保険最新情報で確認できる。以下の厚労省の新旧表を見るとさらに分かりやすいかもしれない。

9月末までと10月1日以降の新旧

要支援者に対する訪問・通所介護の報酬は、この実施要綱で国が定めている単価を上限として各市町村がそれぞれ決めるルールだ。実際の金額は地域によって異なってくるが、実施要綱の単価をそのまま用いているところも少なくない。

今回の実施要綱の改正ではこのほか、新たな「特定処遇改善加算」の総合事業の加算率も明示された。訪問・通所介護ともに要介護者への給付と同率となっている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg583.html

「多様なサービス」の事業者数、現状は?

2019年10月1日から消費税10%に引き上げとなるため、厚生労働省は4月26日に「地域支援事業の実施について」の一部改正について、各都道府県へ新旧対照表を添えて通知を行った。(*1)

(*1)厚生労働省老健局長「地域支援事業の実施について」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000506705.pdf

新たな介護予防・日常生活支援総合事業における国が定める単価などが記されている。これで地域支援事業も、消費税引き上げに伴い変更が必要な処業務の準備に取り掛かれる。

ところで、介護予防・日常生活支援総合事業の実情について気になっている人も多いのではないだろうか。そこで、株式会社NTTデータ経営研究所が行った調査研究の結果を紹介したい。

まず、介護予防・日常生活支援総合事業は「現行の訪問・通所介護相当」のサービスと「多様なサービス」に分けられる。ここでは、総合事業開始の時に始まった「多様なサービス」の事業所数を紹介する。その数は以下の通りだ。

【調査結果のポイント】

○従前相当サービス以外の多様なサービス(従来より基準を緩和したサービス、住民主体による支援等)を実施する事業所が訪問型サービス・通所型サービスそれぞれで1万箇所以上にのぼっている。

・訪問型の多様なサービス 11,159事業所(平成29年6月)
・通所型の多様なサービス 10,061事業所(平成29年6月)

※引用:「介護予防・日常生活支援総合事業及び生活支援体制整備事業の実施状況に関する調査研究事業」調査結果等の概要

通所型には総合事業に位置づけられていない通いの場等の取組みも含まれているが、訪問型・通所型とも10,000件以上の事業所数だ。上記調査結果によると、実施主体は60%以上が介護サービス事業者と打倒な結果、残りの約40%は民間企業やNPO・社会福祉法人とされている。

そのなかでも国が一番推し進めたい「住民主体の多様なサービス」がどのくらいあるのか調べてみた。

要介護度が高くても参加できる通いの場も

厚生労働省の「介護予防に資する住民運営の通いの場の展開状況」によると、住民主体の通所型の多様なサービスは70,134ヶ所であり、主に、体操(運動)・会食・茶話会・認知症予防・趣味活動といった通いの場が設けられているとのこと。(*2)

(*2)平成27年度 介護予防事業及び介護予防・日常生活支援総合事業(地域支援事業)の実施状況に関する調査結果「介護予防に資する住民運営の通いの場の展開状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000141576.html

また介護度の重い者も参加できる、介護度別の通いの場の箇所数(全国)は以下の通りだ。(*2)

  • 要介護3:335ヶ所
  • 要介護4:138ヶ所
  • 要介護5:67ヶ所

介護度の重い者も参加できる通いの場が、僅かではあるが実在する。個人的には、住民主体で要介護5の者を受け入れていることに驚きである。

少ない補助金(自治体により異なる)の運営で、どのようなサービス提供を行っているのか知りたいところだが、思うような資料が見当たらないのが残念だ。しかし重度者も参加可能な住民主体の多様なサービスが全国に増えていけば、いずれ介護保険制度も必要なくなる時がくる可能性もある。

住民主体の「多様なサービス」が派生していくことに期待

また住民主体の多様なサービスの良いところは、ひとつの通いの場から様々なサービスが派生していくことだ。例えば趣味活動の通いの場に参加しているAさんがいたとする。

Aさんは歩行が困難で買い物に行けないと話していたのをBさんが知り、自分の買い物のついでにAさんの買い物支援を行う。それを知ったCさんやDさんも買い物支援を望めば、新しい住民主体の「訪問型の多様なサービス」の誕生だ。このように、ニーズを発見・把握しやすく、次に繋がりやすいのである。

地域により課題はさまざまであるが、住民主体の「多様なサービス」に今後の総合事業の担い手になってもらうことを望むのであれば、活動しやすい環境と十分な支援が必要だと考える。

Designed by Freepik