有料老人ホームの安否確認について再周知〜困難なケースは自治体に相談する流れに

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有料老人ホームの安否確認について再周知〜困難なケースは自治体に相談する流れに

有料老人ホームの安否確認、契約の段階で入居者の同意を 協会が呼びかけ

「毎日1回以上、安否確認などを実施することが必要」。兵庫県明石市の有料老人ホームで入居者の男性が孤独死の状態で見つかったことを受けて、厚生労働省は先月末に出した通知でそう現場を指導した。

全国有料老人ホーム協会はこれを踏まえ、具体的な方法や注意点などをまとめた資料を公式サイトに掲載している。

入居の契約書を交わす段階で、必要に応じて居室を訪ねて安否確認を行うことについて同意を取り付けるよう促している。本人だけでなく家族の理解を得ることも重要、とも指摘した。

本人が安否確認を拒否するようになり、入居契約を維持していくことが困難となる事態が生じた場合には、まず所管する自治体へ相談するよう勧めている。

先月22日、兵庫県明石市の有料老人ホームで入居者の男性が居室で死亡しているのが見つかった。職員らはすぐに気付くことができず、亡くなってから10日以上が経過していたという。厚労省はこれを受け通知を発出。毎日の安否確認を要請した。

全国有料老人ホーム協会は今回、入居者のプライバシーに配慮しつつ安否確認を行うよう呼びかけた。センサーや電話、食事提供のタイミングなどを使う例をあげ、「ホームの構造や職員体制、入居者の希望によって適切な方法を選択する必要があります」としている。

また、「入居時には安否確認に理解を示されていても、例えば夫婦入居から独居になった後に、人生や生活の考え方に変化が現れ、ホームの活動を過干渉と受け止める方が、まれに存在します」などと説明。安否確認の契約が維持できない場合は自治体へ相談するよう助言している。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg623.html

有料老人ホームにおける安否確認方法について周知を

2019年5月に発生した兵庫県内の有料老人ホームでの孤独死の事案を受けて、全国有料老人ホーム協会が具体的な安否確認方法や注意点などを取りまとめた。
各事業者の運営上での参考にするよう呼びかけている。(*1)

(*1)公益社団法人全国有料老人ホーム協会【重要】「有料老人ホームにおける入居者の安否確認について」
https://www.yurokyo.or.jp/news_detail.php?c=&sc=&id=2242

同協会のスライド資料では、入居者の安否確認について、実施の同意とその確認方法の同意を契約時に得ておく事を促している。また実施するうえでの注意すべきポイントとして、安否確認を拒否する利用者への対応や緊急時の居室開錠を取り上げている。

その中で、自立度の高い入居者の中には、プライバシーの確保に敏感な方や干渉されることに不満を感じる方がいるため、安否確認が困難になるケースがみられるとある。(*2・P3/4)

(*2)有料老人ホームにおける入居者の安否確認について
https://www.yurokyo.or.jp/pdf.php?menu=item&id=2242&n=1

こうした場合は最終的に自治体などに相談するようにとも促している。

プライバシーの尊重をどの程度許容する?

私は自立している者も利用できるサービス事業所で勤めた経験はないが、介護保険施設に勤務していた際、プライバシーの確保に敏感な利用者がいたことがある。

通所では、レクリエーションなどへの参加を拒み、一人で自主トレを行ったり他の利用者の少ないロビーでテレビを観ていたりしている利用者がいた。入浴も一人の時間に入りたいとの希望があり、一番はじめか最後に入り、食事をする座席は一番隅である。送迎も一人を希望していたが、対応が難しいと伝え了承してもらった。

入所では、居室のドアを常に閉めた状態にしておきたいと希望する利用者がいた。ユニット式の施設であったが、様子観察が行えるようにドアの常時締切りを断っていたため、ドアにストッパーなどを挟み、数センチの隙間を作っておくことで納得してもらった。その利用者は、食事やトイレなどの時間以外は、居室で過ごすことが多かったと記憶している。

どちらも他の利用者との交流を行うことが苦手で、一人でいる方が気が楽だと話していた。実際、通所の利用者は、たまに他の利用者と話しをした時に喧嘩になっていた。

個人を尊重することが大切だと介護業界では言われている。自立の者も多く入居している有料施設の場合、健康に害がない範囲で、利用者のこれまでの生活環境や生活リズム、本人の意思を優先している事業所が多い。あってはならないが、ひどく拒否されるケースなどは対応しきれないこともあるだろう。

自治体の早期対策も迫られる

安否確認は職員の目で確認するのが一番であるが、協会が例に取り上げている安否確認の方法も参考になる。(*2・P2/4)特に居室内での動きを感知するパッシブセンサーは、利用者も干渉されていることが気にならず、不快感がないと思われる。

また、契約時に安否確認の実施や確認方法について同意を得て、最悪のケースに至った場合は自治体に相談するとあるが、自治体が対応しきれるのかが心配だ。契約解除理由に該当する行為であっても、次に生活する場所がない限り追い出すわけにはいかない。

たとえ他の施設が見つかったとしても、同じことが繰り返されるのでは意味がない。今回の協会の具体策に対し、自治体も早急に対応策を講じておかなければならない。問い合わせが急増する可能性も考えられる。

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