防災情報の警戒レベルを5段階に改定〜介護職員の危機管理意識の向上とBCPの策定が課題

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防災情報の警戒レベルを5段階に改定〜介護職員の危機管理意識の向上とBCPの策定が課題

防災情報、危険度を5段階で分かりやすく 介護施設などに周知 厚労省

大雨や洪水、土砂災害などの危険を国や自治体が伝える「防災情報」の運用が変わり、新たに5段階の「警戒レベル」とともに公表されることになった。

介護施設などが避難を始める目安となる従来の「避難準備」は、新たな警戒レベルの「警戒レベル3」にあたる。

厚労省はこれらを周知する事務連絡を事業者団体などへ出した。「リアルタイムで発信される情報を自ら把握し、早めの避難措置を講じる必要がある」などと改めて呼びかけている。

国が新たな警戒レベルを使い始めたのは、避難のタイミングを分かりやすくして逃げ遅れを防ぐことが狙い。警戒レベルごとに取るべき行動を明確化することで、住民などがより直感的に理解できるよう改善した形だ。昨年7月の西日本豪雨などを受けて、これまでの「避難準備」「避難指示」「避難勧告」といった言葉が難解でうまく伝わらないことが、被害をより深刻にする一因だと指摘されていた。

5段階の警戒レベルと取るべき行動は以下の通り。(※引用元参照)

気象庁が発表する「早期注意情報」が「警戒レベル1」、「洪水注意報」や「大雨注意報」などが「警戒レベル2」にあたる。国や市町村が発令する「洪水警報」「避難準備・高齢者等避難開始」などが「警戒レベル3」だ。「避難勧告」「避難指示」「氾濫危険情報」などが「警戒レベル4」に該当する。国は今回、こうした種々の用語をその危険度に応じて5段階に整理した。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg645.html

防災情報を5段階の警戒レベルに改定、社会福祉施設へも周知

2019年3月29日に「平成30年7月豪雨による水害・土砂災害から避難に関するワーキンググループ」がとりまとめた報告の内容をふまえ、避難勧告等に関するガイドラインの改定(*1)が行われたが、梅雨の時期に入り改めて厚労省より社会福祉施設等への周知がされている。(*2)

(*1)避難勧告等に関するガイドラインの改定 ~警戒レベルの運用等について~ 平成31年3月 内閣府(防災担当)
http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/pdf/guideline_kaitei.pdf

(*2)防災情報を5段階の「警戒レベル」により提供することの社会福祉施設等への周知(依頼) 厚生労働省老健局老人保健課
http://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/06/R1_0607keikaireberuunyokaishishakaifukushishisetu_jimurenraku.pdf

内容は5段階の警戒レベルのうち、警戒レベル3の時点で自力避難が困難な高齢者は安全確保のために、避難を開始するようにとのことだ。また、社会福祉施設等の避難を開始する時期や判断基準が適切であるか確認し、適さない場合は適宜見直しを行うようにと通知された。

施設職員の危機管理意識向上を

施設では介護保険法に遵守し、非常災害対策の取組みを行っているが、概ね火災を想定した設備や訓練が多い。学校や一部の施設などは、地震発生時や不審者の侵入時の訓練なども実施しているが、多くの施設では数人の職員が火災時の避難訓練を行う程度である。

それでさえ、ただ業務的に行われているのが現実だ。これでは実際に非常災害時に、適切な対応と利用者たちを避難誘導できるのか疑問である。

火災に関して言えば、大規模建築物においては、自衛消防業務の講習終了者を自衛消防組織の管理者や班長として設置することが消防法で義務づけられている。(*3)

(*3)自衛消防業務講習:日本消防設備安全センター
http://www.fesc.or.jp/jukou/jiei/index.html

しかし規模を満たさなくても、社会福祉施設などでは同様に義務付けをした方が良いと考える。なぜなら、施設の消防訓練時に消防隊員が来て一緒に行うこともあるが、消火器の使い方を数人が覚えて終わりのケースを見てきた。

このような状態で、消火栓や緊急通報装置の使い方がわかる職員が、365日24時間常駐しているとは考えにくい。また、火災の時と共通すると思われるが、地震で建物が揺れた時でさえエレベーターに駆けつける職員はいない。これらのことから、全ての施設とは言わないが、危機管理の意識が非常に低いと感じるからだ。

最小限の被害で事業再開するために

リスク管理に関しては、食料やオムツなどの日用品・医療用品の備蓄や発電機などを備えている施設が多い。民間企業が運営している大手グループでは、太陽光発電や井戸水、電気自動車などまで完備している施設もある。さらに最近では、BCP(事業継続計画)を策定している施設も増えてきている。

東日本大震災を経験した立場から言わせていただくと、建物に大きな損害はなかったが、停電の影響でエレベーターが止まり、入所利用者の食事を職員全員でバケツリレーのように運んだのを覚えている。

また、マンションの7階に住んでいる利用者を、男性職員4人で車椅子ごと担いで送り届けたとも聞いた。電車も信号も止まり遠方の職員は出勤できず、施設近隣に住む職員が駆り出された。

人員が不足している介護業界では、危機管理に対する意識の向上と、最小限の被害でいち早く事業を再開するBCPの策定が利用者のためにも必要であると考える。

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