地域密着型の小規模通所介護、約半数が赤字に〜通所介護の収益確保には利用率UPのための対策も急務

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地域密着型の小規模通所介護、約半数が赤字に〜通所介護の収益確保には利用率UPのための対策も急務

地域密着型の通所介護、45.5%が赤字 事業所の規模で経営に大きな差

およそ半数が赤字。非常に厳しい経営状況は今も続いているとみられる。

福祉医療機構が6月28日、2017年度の通所介護の経営実態を分析した最新のレポートを公表した。

小規模の「地域密着型」は全体の45.5%が赤字。赤字の事業所の利用率は61.5%で、黒字の事業所(70.8%)より9.3ポイント低かった。年間の営業日数も10日ほど違う。赤字の事業所は287.3日、黒字の事業所は297.2日となっている。

利用者1人1日あたりのサービス活動収益は、赤字の事業所が9537円、黒字の事業所が9922円。その差は385円で、年間のサービス活動収益額には657万5000円の開きが生じていた。

このレポートは全国4238の通所介護事業所を対象としたもの。内訳は地域密着型が18.2%の773事業所、通常規模型が72.0%の3050事業所、大規模型が9.8%の415事業所となっている。

□大規模型、赤字率は15%

事業所の経営にはその規模による較差が顕著に出ている。赤字の割合は通常規模型が35.1%、大規模型(I)が15.8%、大規模型(II)が15.4%。地域密着型は相対的に人件費率が高く利用率が低い。

2018年度の前回の介護報酬改定では、大規模型の要介護度ごとの基本報酬が“適正化”された。一方で地域密着型の一部はアップとなったため、現在は規模間の格差が少し縮まっている可能性が高い。

介護報酬は近年、介護職員の賃上げを図る「処遇改善加算」の拡充などに伴うプラス改定が続いている。こうした動向を踏まえ、「次の2021年度改定は引き下げになる」と悲観的にみる関係者は少なくない。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg651.html

平成29年度、通所介護事業所の経営状況について

独立行政法人福祉医療機構の経営サポートセンターリサーチグループが、福祉医療機構のデータに基づき、平成29年度の通所介護事業所(老人デイサービスセンター)の経営状況について分析(*1)を行った。

(*1)平成29年度の通所介護事業所(老人デイサービスセンター)の経営状況について
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/190628_No002.pdf

これによると、地域密着型の通所介護に赤字の割合が高く、事業規模が大きくなるほど経営状況が良好になる。また、各種加算の算定より、利用率を高くした方が、収益確保が確実になるとの見解だ。この利用率であるが、休みがちな利用者を予定通り通ってもらうのは至難の業である。

通所介護を予定通り利用できない例

ここでは、筆者の経験から、過去に予定通り利用していなかった(できなかった)利用者の例をいくつか取り上げたい。

利用者Aのケース(週2回の利用予定)

もともとは週3回の利用であったが、毎週1回は休みになるため週2回へ変更となった。しかしその後も休みは続き、月に1度しか利用しなくなる。原因は認知症の発症。日付や曜日が認識できていないため、利用日であることが分からなくなっていた。

息子が同居していたが関心が薄く、Aの言動が少しおかしいと思っていたくらいで認知症であることに気付いていなかった。息子の協力を得て、週に1回は利用できるようになった。

利用者Bのケース(週2回の利用予定)

週2回の利用であったが、ある時期から週1回しか来なくなる。原因は相性の合わない他の利用者がいるためであった。利用曜日を変更する提案をしたが、Bは週1回で十分との返事。家族やケアマネとも相談し、週1回の利用へ変更となった。

利用者Cのケース(週3回の利用予定)

通所に行くことを嫌がるようになり、家族も困惑していた。もう一つの事業所でも週2回のサービスを利用しているのだが、そちらは休まず行っているとのこと。原因は職員とのコミュニケーション不足だ。失語症のCにとって職員が意思伝達をするために欠かせない存在なのだが、大規模Ⅱであったため利用人数が多く、Cのために費やす時間が少なかった。

オープンしたてで利用人数が少ない事業所の他の曜日に空きがあるのを確認し、私の方のサービスは利用中止。全曜日をもう一つの事業所へ移行した。

利用者Dのケース(週4回の利用予定)

曜日は決まっていないが、毎週1回は必ず休みになる。原因は家族の都合とケアマネのアセスメント不足、事業所の対応力だ。Dは妻・息子夫婦・孫2人の大家族である。家族の誰かが家にいる日は利用を休みたいのだが、それが何曜日かは決まっていないため、一応利用予定日にしておけば、行きたい日に行ける。

追加利用がいつでも可能ならば利用回数を週3回に減らしても良いが、以前断られたことがあるため週4回にしておきたいとの意向だ。家族は月初めにならないとその月の予定がわからず、事業所も毎回追加利用を約束できないとのことで、週4回の利用予定をそのままにして継続している。

利用者の休む理由を理解した上で利用率の向上を

まだまだ他にも、利用者の休む理由はたくさんある。これらを一つずつ解決し、体調不良以外は休まず利用できる回数で契約できるようにすれば、利用率がアップするだけでなく、空いた枠に新規利用者を組み込んでいけるため登録者数も増加する。

また、入院した者の利用枠をいつごろまで空けておくかなども、利用率に関わってくる。このあたりもケアマネや本人、家族に理解してもらえるように説明をしておく必要がある。

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