「国民生活基礎調査」高齢者世帯が過去最多に〜要介護の子どもを親が介護する世帯も見逃さないようなサイクルを

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「国民生活基礎調査」高齢者世帯が過去最多に〜要介護の子どもを親が介護する世帯も見逃さないようなサイクルを

高齢者世帯、過去最多に 収入「年金のみ」が半数 55%は「生活が苦しい」

厚生労働省は2日、2018年の「国民生活基礎調査」の結果を公表した。

65歳以上の高齢者世帯は、全体の27.6%を占める1406万3000世帯。世帯数、割合ともに過去最高を更新した。このうち1人暮らしは48.6%の683万世帯となっている。

高齢者世帯の所得は、2017年の1年間で平均334万9000円。仕事を続けている人が増えていることもあり、前年から16万3000円上がっている。

年金や恩給を受けている高齢者世帯をみると、これらの収入が総所得の100%を占めている世帯が51.1%にのぼっていた。金融庁は年金だけでは老後の生活費が不足すると指摘しているが、多くの人が年金のみでやりくりしている可能性が大きいことが改めて浮き彫りになっている。

高齢者世帯で生活が「やや苦しい」と答えたのは33.1%、「大変苦しい」は22.0%。これらを合わせると55.1%で、前年から0.9ポイント増加していた。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg656.html

「国民生活基礎調査」高齢者世帯が過去最多に

厚労省が今月2日に、平成30年度の「国民生活基礎調査」の結果概況を公表した。世帯数と世帯人員の状況(*1)の世帯構造では単独世帯と夫婦のみ世帯が、世帯類型では高齢者世帯が増加している。

(*1) 平成30年度の「国民生活基礎調査」世帯数と世帯人員の状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/02.pdf

65歳以上の者のいる世帯の世帯構造の年次推移を見ると、65歳以上の者のみの世帯は全体の56.3%。約半数以上が高齢者のみで生活している。健康で過ごしているのならいいが、なんらかの支援が必要な状態になったときに、サービスに結びつくのかどうか気がかりである。

親子住み世帯でも、家族内だけで解決を試みるのは危険

先に触れた「国民生活基礎調査」では、65歳以上の者のいる世帯と児童のいる世帯の結果しかないが、たとえば次のようなケースも考えられる。

40代の長女と70代の両親が二人暮らししているとする。この情報だけだと、娘と一緒に暮らしていて幸せな両親だと感じるだろうが、40代の長女が要介護5の認定を受けているとしたらどうだろうか。両親が健康でいて親子3人で暮らしているうちはいいが、両親も支援が必要になった時にうまく支援の介入ができなければ、大変なことになる。

そうなる前に、長女には何らかの介護保険サービスを利用しておくことを勧めたい。サービスを利用するにはケアマネージャーが必要であり、必ず月に1度は自宅へ訪問しに来る。そのため両親の異変に気が付くのも早い。

しかし、若い要介護者の場合、介護保険のサービスを利用することに抵抗を示す者もいる。例えばデイサービスのような通所介護の利用では、「他の利用者が高齢者ばかりでつまらない」「自分はそういった場所へ行くほどの状態ではない」などと感じてしまう。そうした結果、高齢の両親は疲弊して体調を崩し介護ができなくなり、緊急でショートステイを利用するケースもある。

親より先に子どもが要介護状態になる可能性も念頭に

また、実際に次のようなこともあった。

40代の次女は進行性の難病を発症、徐々に歩行ができなくなり自宅で寝たきりの生活をしていた。次女と2人で暮らす母親は70代後半であるため、次女を起き上がらせたり移動させたりするのが体力的に困難である。昔から馴染みの近所の住民が、介護保険の認定を受けることを勧めたおかげで支援に繋がったのだが、近所との付き合いがなければ何のサービスも受けることができなかった。

60歳を超えると、自治体により異なるのだが、単独世帯の家には、民生委員が月に1度のペースで訪問してくれる。しかし子供と一緒に住んでいる家にはやってこない。上記のようなケースの世帯の場合、見逃されてしまうのだ。

支援が必要な状態であるのに、その手が行き届かない可能性が高いのは、65歳以上の高齢者世帯だけではない。人生100歳時代になれば、親より先に子供の方が要介護状態になるケースも増えてくる。

そのため親が元気でも、家の中には支援を必要とする息子や娘がいるかもしれないということを頭の隅に入れておいていただきたい。そして介護保険の認定は、2号被保険者(40~64歳の者)も特定疾患により受けられることを知っておいてほしい。

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