通所介護の新たな実地指導「標準確認項目」を公表〜現場の負担軽減にもなるか?

更新日:
通所介護の新たな実地指導「標準確認項目」を公表〜現場の負担軽減にもなるか?

通所介護の実地指導、チェック項目が半分に 新指針で方針 厚労省

介護保険のサービスを担う事業所に対する実地指導をめぐり、厚生労働省は先月末に新たな運用指針を公表した。「標準確認項目」とそれに対応した「標準確認文書」を明確に定め、原則としてこれ以外のチェックは行わないよう自治体に指示している。

通所介護の「標準確認項目」は45項目。約90項目あった以前の「実地指導マニュアル」から一気に半減となった。厚労省は「サービスの質の確保や利用者の保護といった観点から、『ここだけは必ず』という重要な項目のみに絞り込んだ」と説明している。

目的は効率化だ。1ヵ所にかける時間を少なくし、より多くの事業所に実地指導へ入ってもらいたい考え。手法を標準化して自治体ごとにバラバラな現状を改める狙いもある。

(※引用元より一部抜粋)

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg630.html

通所介護の「標準確認項目」45項目

2019年5月22日に厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長より通知された「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」で、通所介護の実地指導時の確認項目も半減された。(*1・P9/24)

(*1)実地指導の標準化・効率化等の運用指針
https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2019/0531131609781/ksvol730.pdf

通所業務に長年携わってきた自身にとっては興味深い。

今回の通知は実地指導の効率化が目的であるが、新しい「標準確認項目」とはどんな内容か、現場職員たちの負担も軽減されるのか、ひとつずつ見ていきたい。

以下、新しい「標準確認項目」に掲載されていた内容の中から、現場で記録・作成すると思われる文書の詳細を紹介する。

重要事項説明書 ・利用契約書(利用者又は家族の署名、捺印)

サービスの利用開始時やサービス内容の変更、基本報酬の変更などがある場合にその都度発行し署名・捺印をもらう。何も変更がなければ改めて作成をする文書ではないのだが、基本報酬の改正があると一度に利用者全員分の文書の印刷・配布・回収を行うことになる。

介護保険番号、有効期限等を確認している記録等

サービスの利用開始時に必ず確認をし、被保険者番号・有効期限・介護度・特記事項などを控える。また、利用者ごとに更新時期が異なるため、有効期限が切れる者はいないか毎月確認を行う。

有効期限が切れる場合は、利用者の家族やケアマネへ更新手続きは済んでいるか、主治医の意見書は書いてもらったか、認定調査は済んでいるかなどを確認する必要がある。介護度の変更は請求にも拘ってくるため、特に区分変更をしているかどうかは普段から気を付けていなくてはならない。

サービス担当者会議の記録

会議に出席した職員が、要点をまとめて会議録を残す。他の職員に回覧し情報共有を図り、今後の各計画書作成の参考などにする。

居宅サービス計画

担当ケアマネより計画書をもらう。もらい忘れがないように確認作業が必要である。

通所介護計画(利用者及び家族の署名、捺印)

利用者がサービスを利用するにあたり、何を目標にどんなサービスを提供するか詳細に示した計画書を作成し、定期的にモニタリングやカンファレンスを行い、介護計画内容の見直しをする。
内容が継続であっても新たに計画書を作成・発行・説明をし、利用者・家族の署名と捺印をもらい回収する。

サービス提供記録

毎日のサービス利用状況を提供記録として残す。1日毎に利用者全員の到着時刻・バイタル数値・提供サービスの実施の有無・食事量・排泄回数などを記載し、業務終了後に利用者の個人ファイルに転記する。

業務日誌

その日出勤した職員の勤務時間、担当業務などを記載する。事故や急変があればその旨も記載。

送迎記録

毎日の送迎車の出発時間・施設への到着時間・ドライバー名・乗車した利用者名(送迎順序)などを記載する。

アセスメントシート

利用者本人の既往歴や生活状況・主治医・服薬内容・自宅での日常生活動作・住環境・家族や近隣住民などとの関係性などの情報を収取し、関係職員と共有する。アセスメントシートを基に、各計画書が作成される。

モニタリングシート

各計画書の目標の達成度合いをモニタリングし、他職種の視点で意見を出し合うカンファレンスを行い、その内容を記録に残す。カンファレンスの結果を次の各計画書に盛り込む。

研修計画、実施記録

外部・内部を問わず年間の研修計画をたて、参加者を募る。外部研修の場合は参加した者が記録を残し、施設内で共有を図る。内部研修の場合は実施する者が研修内容を決め、研修の準備から実施まで一貫して行う。

苦情の受付簿・苦情者への対応記録

利用者だけでなく、外部者などからも苦情があった場合に記録に残す。受付時の詳細と対応した内容を記録したのち、改善策を話し合い、対応方法を決める。

ヒヤリハットの記録

各職員が業務に携わっている場面で、ヒヤリとしたこと、ハットしたことをその都度記録に残す。施設の事故防止委員会が集計などを行い、事故防止のため次に活かしていく。

市町村、家族、介護支援専門員への報告 記録 ・再発防止策の検討の記録

ヒヤリハットより重大な事故が発生した時の記録を残す。各機関への報告を行い、事故に至るまでから至ったあとなど収束するまでの顛末を記す。そこには事故カンファレンスを行い再発防止策なども併せて記載する。

まだ改善の余地はありそうだが…

以上、現場職員たちが直接携わり、作成していると思われる文書を取り上げてみたが、あまり現場職員の負担軽減にはならないようだ。「サービス担当者会議の記録」はケアマネも作成しているため、減らせる文書である。

また、「業務日誌」と「送迎記録」など、まとめることができる文書もあると考える。今後も見直しを進め、文書の種類自体がもう少し簡潔になることを望みたい。

さらに運用指針では、不正が見込まれない限り「標準確認項目」以外の文書は原則求めないとしているが、例えばサービス提供記録の中に、「〇〇加算算定有り」の記録がある利用者がいた場合、それを示す他の文書を確認することは本当にないということなのか。

以前、自身がデイケアの実地指導に参加した際「リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ」の確認にあたり、リハビリ実施計画書以外に

  • 「リハ会議録」リハ会議の詳細
  • 「サービス提供記録」実施の有無
  • 「リハビリ課の業務日誌」担当した職員
  • 「相談記録」家族の同意とケアマネへの報告

これらの記録を求められたことがある。

当時「リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ」は新加算であったため、担当者も慎重になっていたのかもしれないが、担当者が気になったことがあれば、次から次へと文書の提出を求められるイメージが抜けない。

実地指導にあたる担当者が今回の運用指針通りに事を進めなければ、事業所側が不要な文書を準備していない分、余計に効率が悪くなり、現場の負担が増えてしまうと考える。各自治体の担当者もやり方が統一できるように、研修などを計画するのは如何か。

Designed by Freepik