有料老人ホームで発生した孤独死を受け、日々の安否確認を通達|自立者に対するリスクマネジメントも必須では

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有料老人ホームで発生した孤独死を受け、日々の安否確認を通達|自立者に対するリスクマネジメントも必須では

「毎日1回以上の安否確認を」 厚労省、有料老人ホームの孤独死を受け通知

兵庫県明石市の有料老人ホームで入居者の男性が死後10日以上たって見つかったことを受けて、厚生労働省は5月31日、適切な状況把握・安否確認を徹底するよう求める通知を全国の自治体へ発出した。

厚労省は通知で、「有料老人ホームにおいて、入居者の心身の健康を保持し、その生活の安定を図る観点から、入居者への安否確認などは当然行われるべき」と指摘。「毎日1回以上、安否確認などを実施することが必要」と要請した。

入居者が訪問による安否確認を希望していない場合については、本人の動きを確かめられる仕掛け(例えばセンサー機器など)や電話を使ったり、食事を提供する機会をうまく活かしたりするなど、現場の実情にあった工夫をするよう促している。

共同通信によると、明石市の有料老人ホームで91歳の入居者が5月22日に「孤独死」の状態で発見された。亡くなってから十数日が経過していたという。

施設側は居室を訪ねて様子を見るなどの対応をしていなかったとみられる。時事ドットコムが報じた。

日本テレビは、施設側の対応に問題がなかったか調べる検証チームを明石市が立ち上げると伝えている。

厚労省は今回の通知で「このような事案が発生したことは誠に遺憾」とし、「安否確認などに係る指導の徹底を」と全国の自治体に呼びかけた。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg610.html

有料老人ホームにて孤独死で発見されない事案が発生

2019年5月に、兵庫県明石市の有料老人ホームにおいて、入居者の死亡が10日以上確認されない状態が継続された事案が発生した。このことを受け厚労省は、入居者の安全・安心の確保を図るよう、有料老人ホームにおける安否確認又は状況把握の実施に対する指導等の徹底について、各自治体宛てに通知を発出した。

老人ホームに入れば、周りに職員や他の利用者など人の目があるから、何かあったときに安心だ。そう思い、入居する高齢者が多いと思われるが、今回は生活の場面のなかで安否確認が行われていなかった。何故今回のような事案が発生したのか、厚労省の介護サービス情報公表システム(*1)で調べてみたい。

(*1)厚労省介護サービス情報公表システム
http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/

有料老人ホームでは「自立」の入居者も受け入れているケースも

まず、有料老人ホームの場合、入居できる年齢はホームによりさまざまであるが、概ね60歳以上からや65歳以上からが多い。入居条件は、要支援や要介護の認定を受けていない「自立」の者も入居が可能な施設がある。つまり、自立・要支援・要介護の者がひとつのホームに入居しているということになる。

また、「介護付き有料老人ホーム」となっていても、自立の者は対象外で、サービスを受ける場合は別料金が自費発生する施設がほとんどである。要介護等(要支援・要介護)の者は特定施設入居者生活介護費で行われるサービスが介護保険で利用できるため、介護度により費用は異なるが、1割から3割の費用負担で決まったサービスが提供される。

そして介護度によって、以下のように看護・介護職員の体制基準が異なるので注意が必要だ。

・要支援者
職員1人に対して利用者10人

・要介護者
職員1人に対して利用者3人

・自立者
特に基準なし

今回のホームは、「人員配置が手厚い場合の介護サービス」費用を算定し、職員体制も職員1人に対して利用者2.5人となっているため人員の厚いホームだと思うが、これは要介護者等に対しての人員体制であり、自立の者は含まれていない。入居者の数は定員149人の内、自立30人・要支援21人・要介護47人となっており、自立の利用者が多いホームである。

そうなると、要介護等の利用者が68人いるため、届出上は看護介護職員が27.2人は在籍していることになるのだが、介護職員は19.4人、看護職員は5.2人、非専従の他職員を含めて合計28.6人であった。要介護等の利用者のサービスを行うギリギリの人数である。上記のことから、自立の利用者に対する手厚いサービスには至らないと考える。

居室内で1日を完結できてしまう環境は注意が必要

また、今回のホームは居室内にキッチン・浴室・トイレが整備されている。自分でできることは自分で行うと言う自立支援の考えでは非常に良いのだが、居室内で生活動線が完結してしまうため、マンションやアパートに住んでいるのと同様なのだ。

設備が整っていることに越したことはないが、今回のような事案から考えると、キッチンがなければ1日3回は食堂へ出向くことになっていた。浴室がなければ週に2回は職員から声が掛かったはずだ。

もし自立の者が有料老人ホームへ入居する際は、「厚労省介護サービス情報公表システム」で施設検索をし、「事業所の詳細」の「別紙」のページを確認していただきたい。

・特定施設入居者生活介護費、各種前払金、月額の利用料等で、実施するサービス
自立の者は対象外のサービスも含まれている 

・別途利用料を徴収した上で、実施するサービス
自立の者も受けられるサービスが記載されている(費用の発生あり)

今回の事案の原因をまとめると、自立者に対しての施設のリスクマネジメントが機能していなかった。居室の設備が整い過ぎていて、自立者を対象としたサービスが少なかったということが考えられる。今後はモーニングコールなど、最低でも1日1回の安否確認が必要だ。

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