未来投資会議にて成長戦略の素案提示|特定疾患の重症化防止には特定保健指導の早期介入が効果的?

更新日:
未来投資会議にて成長戦略の素案提示|特定疾患の重症化防止には特定保健指導の早期介入が効果的?

介護予防のインセンティブを抜本強化 交付金を倍増へ 成長戦略素案 政府

政府は5日の未来投資会議で、今年の新たな成長戦略の素案を提示した。

健康寿命の延伸に向けた介護予防の展開も柱の1つ。より積極的な取り組みを自治体に促すため、その努力や成果に応じて配分額を決める「インセンティブ交付金」を抜本的に強化する方針を打ち出した。

来年度からの予算の倍増を図る。今年度の「インセンティブ交付金」の総額は200億円。これから年末にかけての予算編成過程で調整し、400億円程度まで積み増したい考えだ。

自治体ごとの「インセンティブ交付金」の配分額を決める評価指標については、地域支援事業などの“通いの場”の拡充を重点的に評価するとした。体操・運動などで民間のサービスを活用したり、参加者にポイントを付与したりすることもあわせて求めていく。このほか、

○ いわゆる“元気高齢者”の介護助手への参加人数
○ 介護助手やボランティアへのポイントの付与

なども高く評価し、社会参加の機会を増やしていく計画も盛り込んでいる。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg616.html

第28回未来投資会議の開催、新しい成長戦略を提示

2019年6月5日に第28回未来投資会議が行われた。(*1)

(*1)未来投資会議(第28回) 配布資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai28/index.html

成長戦略実行計画案(*2)の「第3章全世代型社会保障への改革」では、「70歳までの就業機会確保」「中途採用・経験者採用の促進」「疾病・介護の予防」の3つのポイントが提示されている。

(*2)成長戦略実行計画案(P33)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai28/siryou1.pdf

疾病・介護の予防において、国民が将来的に不安だと感じていることの多くは「自分の健康」だとしている。医科診療費の内訳では生活習慣病が全体の1/3にあたり、なかでも糖尿病は重症化が進むにつれて医療費が急増するため、重症化予防が必要とのことだ。

糖尿病は初期段階で自覚症状がなく、見た目からも病気だとは分からない。健康診断などを受けて医師から指摘されても、あまり気にしていない者が自身の周りにもいる。

糖尿病は重症化リスクがある一方で…

厚労省は2018年の12月に、国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組に関する調査を行っている。(*3)

(*3)自覚症状のない糖尿病の重症化を防ぐために。― 国民健康保険における糖尿病性腎症重症化予防の取組に関する調査 ―
https://www.mhlw.go.jp/content/12605000/000464416.pdf

やはり糖尿病の初期段階においては自覚症状が乏しいため、医療機関での未受診や治療中断の傾向があるとのことだ。そのため糖尿病が強く疑われる者のうち服薬を継続している者の割合は、ほぼ半数に留まっているとのこと。また人工透析の患者数は年々増加傾向にあり、1983年では約1.1万人であったのが、2016年では約3.9万人という結果が出ている。

糖尿病のリスクは医療費がかさむだけではない。自己レベルで考えた場合、血管が傷つき重症化すると合併症を発症する確率が高まることである。恐ろしい主な糖尿病の合併症は、心臓病や失明、腎不全、足の切断などだ。(*4)

(*4)糖尿病の慢性合併症について知っておきましょう | 糖尿病情報センター
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/020/02.html

自身がこれまでに担当していた利用者にも、糖尿病の合併症により、失明や腎不全、足の切断をしていた者がいた。個人的に思う彼らに共通していた点が、食の好き嫌いが多いことである。

また、「好きな物を食べることを我慢してまで長生きしたくない」とも言い、食事制限での治療や療養が困難な者が多かった。痛みや苦痛を伴う自覚症状がないため、自己コントロールが難しいようだ。

「疾病・介護の予防」には、自己コントロールが苦手な患者へのサポートも

腎不全の合併症の者は週に3回透析通院をしていたが、1回に数時間かけて行う透析は体力を消耗し、その日は疲れて何もできないと話していた。網膜症で失明した者や足の切断をした者は、日常生活全般で不自由さを感じ、外出の機会もほとんどなくなったと言っていた。

今回の成長戦略実行計画案では、糖尿病の重症化予防には特定保健指導の早期介入が効果的だとしている。保健師等が生活習慣の改善を支援する制度を活用し、合併症が予防できれば、生活の質(QOL)が維持できる。365日休むことができない透析の苦痛や、視力や両足を失う喪失感ははかり知れない。

自己コントロールが不向きな者には、特定保健指導を率先して活用することを勧めたい。

Designed by Freepik