【科学的介護】2021年度からエビデンスを本格収集へ 厚労省、新加算の創設も
いわゆる「科学的介護」をめぐる新たな動き。そのコアをなすエビデンスを蓄積していく目的で整備するデータベース「CHASE」について、厚生労働省が初期仕様で収集すべき情報の種類を選定した。4日の有識者会議で案を出し、専門家で構成する委員から大筋で了承を得た。
実務を担う現場にかかる負担に配慮。客観的な測定が可能で、多くの事業所が既に収集を行っていたり、報酬上の評価の要件となっていたりするものを中心とした。その必要性・重要性も勘案し、収集すべき情報を大きく以下の3項目に分類している。
①基本的な項目=できるだけ多くの事業所で入力されるべき項目
②目的に応じた項目=加算の対象となる事業所で入力されるべき項目
③その他の項目=各事業所で任意に入力できるようにすべき項目このうち「基本的な項目」は30種類。性別や身長、体重、食事の形態・摂取量、既往歴、服薬情報、Barthel Indexなどが含まれている。
厚労省は今後、こうした項目を実際に集めていくモデル事業を開始する。システムのチェックやフィージビリティの検証を重ね、来年度には「CHASE」の本格稼働にこぎ着ける計画だ。
(引用元より一部抜粋)
「CHASE」の本格稼働に向けた検討会の開催
2019年7月4日に、第9回科学的裏付けに基づく介護に係る検討会が行われた。エビデンスに基づいた自立支援・重度化防止等を進めるために、科学的な検証に裏付けられた客観的な情報を収集し、「介護に関するサービス・状態等を収集するデータベース(CHASE)」に蓄積し運用していくのだが、今回はそのCHASEの初期仕様で収集する対象項目と将来的に対象とすべき項目について取りまとめを行った。(*1)
(*1)第9回科学的裏付けに基づく介護に係る検討会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198133_00006.html
取り上げられた項目は以下の通りである。(*1)
・基本的項目(既往歴、家族構成、ADLなど)
・目的に応じた項目(加算対象項目など)
・その他の項目(事業所で任意に入力する項目)
いずれも様々な関係者の価値判断を尊重して検討を行っていくことが重要であるとし、今後もモデル事業などにおいて更なる項目の整理を行うとのことだ。
科学的根拠が明らかになると、どんなふうに介護現場で活用できるのだろうか。分析結果のフィードバックを受けられるようだが、具体的にその内容と活用方法を示さないと、ただでさえ人手が不足している介護現場で情報入力の作業協力などを求めるのは厳しそうだ。
「科学的介護」で現場の負担減も期待
成果を評価した加算の算定も考えているようだが、作業量によっては困難な事業所も多々あるだろう。加算については、利用者負担が増えることを懸念する事業所もあるかもしれない。
また、アセスメントや評価を行った者や日によって、評価結果に違いがあることも調整が必要だと考える。これは評価者の受け取り方の違いだけではなく、利用者の体調や気分による変化もあるからだ。
同じ評価項目に対して、先週はできなかったが今日はできたということがありえる。そのため評価を行う者同士で統一したやり方・聞き方に加え、毎回同じ静かな場所で行うなど、周りの環境作りも大切になる。
さらに本人や家族でも忘れている既往歴については、情報収集が困難なケースが多い。罹患している現病歴であれば服薬の内容などから質問することができるが、既往歴になると本人たちの記憶に頼るしかない。どの程度の病気を既往歴として捉えるのか、または罹患していた年齢や年数で区切るなど、こちらも調整をしていただきたい項目だ。
このCHASEの情報、将来的には医療・自治体などの情報とも連携していくことを見据えているとのことだ。膨大な作業量で時間はかかるだろうが、連携されれば正確な利用者の病歴や服薬情報が得られ、ケアマネや介護事業所にとっては有益であることに間違いないと考える。