訪問看護ステーションにリハビリ職が増加?利用者は「24時間対応体制加算」を算定している事業所か事前確認すべき

更新日:
訪問看護ステーションにリハビリ職が増加?利用者は「24時間対応体制加算」を算定している事業所か事前確認すべき

訪問看護ステーションなのに職員はリハ職ばかり? 疑問の声が相次ぐ

来年度の診療報酬改定に向けた議論を進めている中医協(中央社会保険医療協議会)− 。17日の総会では、地域包括ケアシステムの推進や医療と介護の連携がテーマとして取り上げられた。

多くの委員が現状を疑問視したサービスがある。訪問看護ステーションだ。職員に占める理学療法士など(*)の割合が高い事業所が増えていることについて、「健全と言えるのか」「非常に危惧している」といった問題提起が相次いだ。

*理学療法士など = 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士

厚生労働省はこの日、営利法人が運営する訪問看護ステーションが2008年から2018年(4988件)の10年間で約4倍に増えたこと、全国の従事者に占めるPTなどの割合が22%(2017年)まで上昇していることなどを図説。PTなどの割合が6割以上、なかには8割以上の事業所も一部に存在しており、こうしたところは24時間の体制を敷いていないケースが相対的に多いと報告した。

「PTなどが8割超の事業所にはびっくりした。患者さんの状態像に偏りがあるのではないか。本当に健全で望ましいあり方なのか危惧している」。

日本医師会の今村聡副会長はそう述べた。全日本病院協会の猪口雄二会長は、「最近、リハビリをするための事業所がどんどん増えている。何らかの手を打たないと絶対にまずい」と指摘。「訪問リハなら当然、通所が難しい人が中心となるべきではないか。介護保険ではそうした規定が全く無い。野放し状態になっている」と述べた。

さらに、支払い側の委員からは、「どの職種がどれくらいの頻度で行く、ということを事業所が独自に決めていることに問題がある」との意見が出た。

このほか、看護職員の高齢化が進んで人材確保がさらに難しくなっている現状を懸念する声も出ている。訪問看護ステーションのあり方は、秋から年末にかけての具体策を決めるプロセスで論点の1つになりそうだ。厚労省は今後も引き続き医療と介護の連携を強化する施策について議論を深めていく方針。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg688.html

訪問看護ステーションにおける職種バランスについて危惧

2019年7月17日に開催された第419回中央社会保険医療協議会の総会において、訪問看護ステーションのリハビリ職員が増加傾向にあるとの話しがあった。なかでも理学療法士の割合が6~8割りの事業所が10.9%、8割を超える事業所が0.4%存在することについて、日本医師会は危惧しているとのこと。(*1・P38)

(*1)介護・障害福祉サービス等と医療との連携の在り方について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000529038.pdf

現在わが国では、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続ける地域包括ケアシステムの推進により、さまざまなニーズに応えられるよう高齢者向けサービスの種類が増え続けている傾向にある。特に最近では、自立支援や予防介護の取組みとして運動やリハビリを実施する風潮にあり、利用者のニーズが増加している。

またそれ以外にも、医療機関の機能の見直しにより、リハビリの場が病院から自宅へ早い段階で移行されているということもある。これらを理由として、訪問看護ステーションのリハビリ職員も増えていると考えるのだが、自宅で行うリハビリは通常訪問リハビリのサービスを利用する。

では何故、訪問看護ステーションのリハビリが増えているのか考えてみた。

リハビリ職の増加は事業所の設置基準が原因?

介護給付費分科会の参考資料を見ると、訪問リハビリの事業所数も利用者数も増加傾向であり、訪問リハビリ事業所の数が足りていない、利用者に人気がないという理由で訪問看護のリハビリに利用が偏っているということではないようだ。(*2・P4,7)

しかし訪問リハビリ事業所の増加をはるかに上回る勢いで、平成24年から圧倒的に訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問が増えている。(*2・P13)

(*2)介護給付費分科会 訪問リハビリテーション (参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000167233.pdf

その理由は、それぞれの事業所の設置基準の違いだと考える。

訪問リハビリ事業所は病院・診療所・介護老人保健施設でなければ開設できない。しかし訪問看護ステーションでは、株式会社・有限会社・NPO法人など設立手続きを行えば始められる。また看護職員の人員配置が常勤換算法で2.5人いれば他の職員の人員配置基準は特にないため、民間企業の参入がしやすい。

これから更に需要が見込まれるリハビリ産業に民間企業は参入していきたいが、医療法人などではないため訪問リハビリ事業所の開設は難しい。しかし、訪問看護ステーションでなら新規参入ができるというのが、訪問看護にリハビリ職が軒並み増加した理由だと考えられる。いわば訪問看護ステーションの名を持つ訪問リハビリ事業所が増えているということになる。

民間企業の経営力にも関心するが、それだけリハビリの需要があるのだからよしとしたい。ただしリハビリがメインとなっている事業所があるせいか、24時間体制を整えていない事業所も増えてきている。そのため重度療養で医療処置行為などが必要な利用者は、訪問看護を利用する前に「24時間対応体制加算」を算定している事業所かどうかの確認を忘れずに行うことが必要だ。

Designed by Freepik