訪問看護「過剰な提供と提供されるサービスのばらつき」適正化の前に、なぜ介入する必要があるのかを考えてみた

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訪問看護「過剰な提供と提供されるサービスのばらつき」適正化の前に、なぜ介入する必要があるのかを考えてみた

訪問看護への問題意識も 第1ラウンド終了 診療報酬改定、秋から具体論へ

中央社会保険医療協議会は24日の総会で、2020年度の診療報酬改定に向けた課題や論点、これまでの意見などを整理した「第1ラウンドの概要」をまとめた。

今後はいよいよ具体策をめぐる議論へ移っていく。厚生労働省は秋ごろからテーマごとに進め、年内に基本的な方向性を固める方針だ。

「第1ラウンドの概要」をみると、「介護・障害福祉サービスと医療の連携」も柱の1つに位置付けられている。在宅医療や訪問看護、介護・福祉事業者との連携について評価をどう見直すか、が最重要の論点だ。

主な意見としては、「退院できる状況にある患者が退院できていない要因の分析と対策について検討する必要がある」「在宅医療の推進へICTの利活用を含めて検討する必要がある」との考えが盛り込まれた。

また訪問看護について、「過剰な提供となっていないか、提供されるサービスにばらつきがないか、といった論点を踏まえ、重点化・適正化の観点から引き続き検討する必要がある」との認識も記された。訪問看護をめぐっては前回の会合で、PTやOTなどリハ職によるサービスばかりを提供している事業所が徐々に増えている現状を、複数の委員が問題として指摘していた。

「第1ラウンドの概要」ではこのほか、かかりつけ医の機能強化や地域づくり・街づくりの推進、働き方改革といった論点も掲げられている。

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg700.html

訪問看護に対する「過剰な提供と提供されるサービスのばらつき」

2019年7月24日に、第420回中央社会保険医療協議会総会が開催され、2020年度の診療報酬改定に向けて、検討事項に対する議論が行われた。今回の議論(1ラウンド)では、課題の整理や秋からの2ラウンドの検討を進めるための主な議論とその論点の概要が整理された。

令和2年度診療報酬改定に向けた議論(1ラウンド)の概要資料を見ると、「介護・障害者福祉サービス等と医療の連携の在り方について」が検討テーマとして取り上げられている。(*1・P29/36)

(*1)令和2年度診療報酬改定に向けた議論(1ラウンド)の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000531114.pdf

論点は、医療と介護の連携評価の在り方と、在宅医療及び訪問看護に係わる評価の在り方についてだ。

その中の意見のひとつに、訪問看護に対して「過剰な提供と提供されるサービスのばらつき」というのが上げられている。自身が経験した中でも、この意見のように訪問看護が介入する必要があるのか疑問に思うケースが何件かあるため、以下に例を紹介する。

介護ヘルパーは嫌がっても訪問介護なら受け入れるという利用者も

以下は、自身が対応した要介護2の利用者Aのケースである。

一人暮らしで近隣に長女夫婦が在住。毎朝長女が来訪し、朝食の準備とデイサービスの送り出しを行う。日中は週5日デイサービスを利用し、夕方は長女の来られない週3回、訪問看護が介入する。

訪問看護のサービス内容は、バイタルチェックなどの状態観察と服薬管理、排泄介助と浮腫み解消のための下肢のリハビリである。Aは年に数回意識消失があるため、訪問看護が介入した一番の目的は状態観察と服薬管理だ。

しかしAは、毎日看護職員の常駐するデイサービスへ通っているため、日々の状態観察は行えている。また、訪問看護の日(長女が来訪できない日)の夕食の準備は、長女が朝まとめて行っている。さらに、失禁を隠したいAは汚れた下着や服の交換を嫌がるため、衣類やベッド周り、その他居室内の環境を清潔に保つ必要がある。

これらの状況をみると、Aには介護ヘルパーが介入する方が最適であると考えられるため、何故訪問看護が介入することになったのか、担当のケアマネージャーに話を聞いた。返答は、本人の希望によるとのこと。希望と言うよりは、介護ヘルパーの介入に本人が否定的だったからだ。そこで訪問看護を提案したところ、本人も看護師なら安心して任せられると納得したそうだ。

担当ケアマネージャーも悩んだ末、長女と話し合って決めたと話していた。訪問看護が介入をする前は、夕方の服薬ができず意識消失で倒れることが増えてきていたが、介入後は倒れることがなくなり、転倒による怪我も減った。本来は夕食の準備や清掃や洗濯まで頼める介護ヘルパーが望ましいケースだが、本人が嫌がるのを無理に介入させるわけにはいかないとも言っていた。

他にもAのケースと同様に、介護ヘルパーは嫌だが看護師ならいいと言う利用者Bを知っている。Bは精神疾患があり、介護ヘルパーは物を盗むという妄想に駆られていたため、入浴介助がメインであったが訪問看護が介入した。

訪問看護は利用者たちからの信頼度が高い。そのため介入しやすいというメリットがある。今回紹介したAやBのように、介護ヘルパーを拒む利用者もいるということを念頭に、サービスの適正化が行われることを願う。

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