厚労省「処遇改善加算」などの書類簡素化へ〜本当に介護職員の負担軽減となるのか考えてみた

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厚労省「処遇改善加算」などの書類簡素化へ〜本当に介護職員の負担軽減となるのか考えてみた

処遇改善加算の書類、簡素化を検討 実地指導の更なる効率化も 年内に具体策

今回がキックオフ。人手不足にあえぐ現場を悩ませている課題の解消に向けた議論が本格的に始まった。秋ごろから佳境に入る。

7日、介護の事務負担の軽減に向けて社会保障審議会のもとに新設された専門委員会の初会合が開かれた。

厚生労働省はこの中で、行政が求める書類の簡素化や保険者・指定権者ごとに異なる形式の標準化を図る構想を改めて説明。自治体の関係者や事業者らで構成する委員から賛同を得た。年内に具体策の骨格を固める。

今後、「処遇改善加算」をはじめとする各種加算の取得に必要とされる書類を再考し、省略できる内容を洗い出す作業を進めていく。算定要件を満たしているか確かめるための添付書類も精査し、統一的なルールを作って「何を出してもらうか」を明確にする。職員の勤務形態の一覧表など、複数の加算で共通して求められる書類は優先して俎上に載せるとした。

今年5月に運用指針を改めた実地指導についても引き続き効率化に取り組む。現場の関係者からは、「指定権者やその担当者によって対応が大きく異なる」との指摘がなされており、有効な改善策を検討していく方針だ。このほか、事業所の新規指定・更新に伴う書類の標準化も図る。

(引用元より一部抜粋)

https://report.joint-kaigo.com/article-11/pg717.html

行政の求める書類について見直し、事業所の負担軽減へ

今年の5月に実地指導の確認項目と確認文書の標準化が行われ、サービス事業所の負担軽減がなされた。(*1)

(*1)介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000535643.pdf

今回は指導監査関連文書に加え、指定申請関連文書や報酬請求関連文書についても様式例の見直しや添付文書の標準例を作成する専門委員会が立ちあげられた。(*2)

(*2)社会保障審議会 介護保険部会 介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会(第1回) 議事次第
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000535639.pdf

これにより、自治体ごとに異なる文書の共通化・簡素化の方策が検討され、介護分野の文書に係る負担軽減を行うとのことだ。専門委員会は、2019年8月7日に「第1回社会保障審議会介護保険部会介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」を開催した。

現場職員にとっての負担はそこじゃない?

しかし介護事業所の現場職員の多くが負担に思っているのは、行政が求める文書ではなく事業所が独自に作成するケア記録等の文書である。今回焦点になっている・指定申請(変更・更新含む)・報酬請求・指導監査の関連文書は、役職者でなければあまり関係がないのだ。

ケア記録等の文書のなかでも現場職員が一番見直しを望んでいるのは「報酬請求に繋がる記録」である。国は事業所が作成するケア記録などについて、記録の整備や保存は義務づけているが行政への提出は不要とし、様式も行政が定めているわけではない。

そのため事業所ごとに記録の様式が異なり、加算を多く取得している事業所ほど煩雑な記録業務が存在している。介護職員の人手不足による業務過多を考えるならば、これを整備する必要があるのだ。

5月に示された実地指導の運用指針のなかに、標準確認項目が整備され特段の事情がない限り「標準確認文書」以外の文書は原則求められないことになった。この「標準確認文書」のなかに「報酬請求に繋がる記録」は含まれていないため、介護現場の負担も軽減すると考えられたがそうではない。

不正が見込まれるなど詳細な確認が必要と判断する場合には、監査に切り替わり「標準確認文書」に限定せず必要な文書が確認される。結局のところ、現場では引き続き「報酬請求に繋がる記録」を作成し続けなければならないのだ。監査に切り替わったときのために、煩雑な文書の記録を取り続ける必要がある。

現場職員にとっての本質的な負担とは何か、もう少し掘り下げるべきでは

国は、ITを活用して介護現場の業務負担が軽減傾向になってきていると思っているようだが実は違う。現場に必要なのは、「報酬請求に繋がる記録」の統一された様式だ。まずはここから手をつけるべきだと考える。

また、排泄や食事摂取量、バイタルなど日々のケア記録をモバイルなどに入力し、簡素化を図っている事業所も増えているが、実はさほど現場職員の負担は軽減できていない。逆に年齢の高い職員などは操作が分からず、負担に思っている者がいるのに加え、モバイル端末などの数が足りず記録を一旦メモに取り、後から入力するなど二度手間になっている事業所もある。

介護職員たちの業務過多は何か、現場のニーズをもう少し深堀していってほしい。

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