2021年度の介護保険制度改正に向けて対立?ケアマネジメントが利用者負担になった場合、どんな弊害が?

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2021年度の介護保険制度改正に向けて対立?ケアマネジメントが利用者負担になった場合、どんな弊害が?

自己負担引き上げ巡り対立 論点に2割・3割の対象拡大 ケアプラン有料化も

各論を詰めていく第2ラウンドがスタートした。今後、秋から年末にかけて山場に入っていく。

2021年度に控える次の介護保険制度改正に向けた協議を重ねている社会保障審議会・介護保険部会。29日の会合では、厚生労働省がこれから扱う論点を網羅的にまとめた資料を提示した。

いわゆる「骨太方針」などでアジェンダとされた利用者の自己負担の見直しも盛り込んだ。これを最大の焦点とみる関係者は多い。現行で1割、2割、3割とあるが、それぞれを分ける“所得ライン”をどう変えるのか? 結論次第でサービスの利用を控える世帯が増える可能性もあり、事業所の経営にも少なからぬ影響が及びそうだ。

財政が逼迫するなかで給付費の膨張にどう対応していくか、という問題意識が根底にある。高齢者、現役世代の保険料も右肩上がりが続いていく見通しだ。厚労省はこの日、

○ 高額介護サービス費のあり方
○ 居宅介護支援のケアマネジメントでも自己負担を徴収し始めるか
○ 施設で暮らす低所得者への補足給付のあり方

なども論点として掲げた。これを受けたディスカッションは、対立の構図が早くも鮮明に表れる形となった。

日本商工会議所の岡良廣委員は、「企業の保険料負担は限界にきている。利用者の自己負担を大胆に見直すべき」と主張。認知症の人と家族の会の花俣ふみ代委員は、「利用者の負担をこれ以上増やさないで欲しい。生活が立ち行かなくなってしまう」と訴えた。

立場の違う両者の意見の隔たりは大きい。調整は最後までもつれるとみられ、今後の政治情勢も重要なファクターとなりそうだ。

(引用元より一部抜粋)

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg914.html

介護保険における今後の検討事項などについて議論

2019年8月29日に第80回社会保障審議会介護保険部会が開催され、介護保険における今後の検討事項や介護予防の推進などについて話し合いが行われた。(*1)

(*1)第80回社会保障審議会介護保険部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06352.html

今後の検討事項は以下項目である。

  • 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)
  • 保険者機能の強化
  • 地域包括ケアシステムの推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)
  • 認知症「共生」・「予防」の推進
  • 持続可能な制度の再構築・介護現場の革新

このうちの「持続可能な制度の最高構築・介護現場の革新」においては制度の持続可能性に関わる重要な課題であり、8つの課題が取り上げられている。

(1)被保険者・受給者範囲
(2)補足給付に関する給付の在り方
(3)多床室の室料負担
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
(6)高額介護サービス費
(7)「現役並み所得」・「一定以上所得」の判断基準
(8)現金給付

※引用:今後の検討事項 令和元年8月29日 厚生労働省老健局(P19)

第2号被保険者の年齢を40歳から30歳へ引き下げることや、64歳以下の者も特定疾患に関わらず介護保険を利用できるように普遍化することなどを、引き続き検討していくとしている。そのほかにも不動産の応能負担の考え方や、入所者と在宅療養者の公平性や施設の機能についてなども、今後の論点として取り上げられている。

ケアマネジメント有料化で想定される弊害は?

ケアマネジメントに関しては、これまでにも議論が行われてきた利用者負担について検討されていく。ケアマネジメント業務が有料化した場合、生活困窮者については介護保険を利用することに負担を感じ、利用限度額ぎりぎりでサービスを利用している者は、利用できるはずであったサービスが減ってしまうということが起きる可能性がある。

そのため利用者負担を実施してくのであれば、年収に応じた補足給付を行うことや、ケアマネジメント費用は区分支給限度基準額に含まれないような配慮が必要だと考える。

またケアマネジメント費用が利用者負担になった場合、自分でケアプランを作成しようと思う利用者も出てくる可能性がある。自分でケアプランを作成する場合、介護支援専門員の資格は不要なため、近隣の社会資源について把握していれば、テキストなどを見ながらなんとか作成できると思われる。

しかし、一番はじめに作るのがケアプランの原案になるのだが、この原案を作って終わりではない。原案に載せた利用したいサービス事業者を集めて担当者会議を開催したり、毎月末頃までに提供票を作成してサービス事業者へ提出したりするほか、給付管理などを行わなくてはならないのだ。

制度改正でどう変わるのか、引き続き動向をつかんでおきたい

自分のニーズを見つめ直し、自立と重度化防止のためにケアプランを作成することは利用者本人にとっても良いことであるが、ハードルが高いのが難点である。ケアマネジメントの全ての業務を考えると、自分で行うにはサポートが必要であり、利用者がケアマネを依頼するかどうか選択できる状況ではない。

介護保険制度の基本理念は自己決定である。利用者負担にするならば、自分でケアマネジメントを行いたい者のための支援体制を整える必要がでてくるのではないかと考える。約10年に渡り、賛否両論の議論が交わされてきたが、ケアマネジメントの利用者負担については難しい問題である。

年末のとりまとめに向けて、ほかにも利用者の負担割合や家族で介護をしている者への現金給付についてなどが検討されていく。2021年度の制度改正でどう変わるのか、注目していきたい。

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