認定率の地域差が生じる理由は認定調査員の評価と判断の偏り?定義に当てはまらないケースに困惑する職員も

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認定率の地域差が生じる理由は認定調査員の評価と判断の偏り?定義に当てはまらないケースに困惑する職員も

厚労省、“通いの場”の成果を評価 指標例に認定率や改善率も 交付金と連動へ
□プロセス指標に専門職の関与

“通いの場”などの進捗をみる指標は現在もあるが、これに基づく評価は義務ではない。実際に評価を行っている市町村は全体の30.4%だけ。PDCAサイクルを回す土台が十分でないところが多いとみられている。

厚労省は「インセンティブ交付金」を使ってこうした状況を改善したい考え。今後の論点として、各自治体の取り組みをより適切に評価していく指標のあり方を据えている。

今月4日に開いた有識者会議では、アウトカム指標に“通いの場”の参加率や社会参加の機会の増加を含めてはどうかと提案。加えて、要介護認定率の推移や要支援者の改善率・悪化率、健康寿命の延伸なども例としてあげた。

プロセス指標の案としては、地域の多様な主体との協働や専門職の関与、行政の他部門との連携、高齢者の参加促進などを提示。このほか、市町村の支援などを中心とする都道府県向けの指標を定める意向も示した。こうした評価の仕組みと「インセンティブ交付金」をどう連動させるかはこれから詰めていく。

政府は目下、「インセンティブ交付金」の財源を来年度から倍増させる方向で調整を進めている。その機能を大幅に強化する狙いだ。自治体がより積極的な姿勢に転じれば、現場の医療・介護関係者への働きかけも強まっていくとみられる。

(引用元より一部抜粋)

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg930.html

認定率の地域差が生じる理由とは?

介護保険制度を持続していくために、これまで地域包括ケアシステムの充実や要支援者の総合事業への移行、特養入所の基準を要介護3へ厳格化するなどの取組みが行われてきた。これらのサービスを受ける基になるのは介護度であるが、介護度は認定調査や主治医の意見書などをもとに審査会が開かれ認定される。

しかし認定率に地域差があり、全国一律とはいえないのが現状だ。要因は、65歳以上の高齢者人口と認定調査を行う認定調査員の評価と選択の偏り、審査会の手順の違いなどである。

認定調査員は都道府県の研修を受けるのだが、残念ながら使用されているテキスト(認定調査員テキスト2009改定版)は十分な内容ではないというのが個人的な意見である。理由は留意点や確認方法は記載されているが、該当事例がないため判断や特記事項の記入に困るからだ。

このことについて、厚労省が行った「認定調査員研修について」の資料のなかに、事例を提示すると具体的な個々の障害者の状況を十分に踏まえず、その通りに記載してしまう調査員もいるという審査会関係者の意見が掲載されている。(*1・P10/24)

(*1)認定調査員研修について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000170581.pdf

現在の仕組みだと認定調査に偏りが生じるのは致し方ないところも

しかし事例の掲載や研修を求めている認定調査員は多い。それは高齢者の数だけ疾患や状態に違いがあり、基本調査の定義に当てはまらないケースも多いからだ。

例えば1群の麻痺等の有無についてテキストには、「右腕を、肘を伸ばしたまま肩の高さまで前方にあげて静止させてください」と声掛け例が掲載されている。では、拘縮があり肘は伸ばせないが、肘を曲げたままの状態で肩の高さまで腕をあげ、静止できる者の判断はどうするのか。振戦(震え)がある場合は静止状態として判断するのかなど迷う。

次に5群の日常の意思決定を例に取り上げてみたい。選択肢は「できる」「特別な場合を除いてできる」「日常的に困難」「できない」の4つであり、このなかから判断する。テキストでは、「着る服の判断などの意思決定はできるが、治療方針への合意などは指示や支援がいる」といった場合の選択基準は「特別な場合を除いてできる」と表記している。

では、着替えは面倒くさいため週に1度しか行わないが、タンスのなかから自分で服を出してくるといった場合はどうだろうか。

こうした判断に迷うケースは認定調査を行う回数だけあると考えても過言ではない。具体的な個々の障害者の状況を十分に踏まえず、事例の文言どおりにしか調査しないのは良くないことだが、誤った判断や選択をしてしまうのも困る。

公平に介護保険サービスを利用できるようにするには、全国のどこで認定調査を受けても差異のない結果になることが望ましい。また、今後の一般介護予防事業の評価指標例に認定率が起用するのであれば、認定調査の偏りを減らさなければ役割を果たさないと考える。

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