老健局、地域包括ケアシステム構築の重要性を訴え〜地域包括ケアシステムの互助には企業の手助けも必要か?

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老健局、地域包括ケアシステム構築の重要性を訴え〜地域包括ケアシステムの互助には企業の手助けも必要か?

大島老健局長「ケアマネが自信を持てる環境作りに取り組む」

徳島市で8月31日から2日間にわたって開催された日本介護支援専門員協会の全国大会で、厚生労働省の大島一博局長が講演した。

大島局長はこの中で、高齢化の更なる進行などで介護ニーズが一段と拡大していく今後に備え、引き続き地域包括ケアシステムの構築に注力する姿勢を改めて示した。

そのうえで、「様々なサービスを有機的に機能させる橋渡し役であるケアマネジャーの活躍、あるいは地域課題の把握や地域作りを担う主任ケアマネの活躍に対する期待は一層高まっていく」と強調。2021年度に控える次の制度改正・報酬改定を念頭に、「ケアマネが自信と誇りを持ちながら国民の期待に応えられるような環境作りに取り組んでいく。そのことも踏まえて制度を考えていきたい」と約束した。

加えて、「専門職どうしのネットワークがやはり大事。日頃からそれをどう形成しているかが大きなポイント」と指摘。「利用者の状態に応じた最適なサービスへといかにつないでいくか、ケアマネが果たす役割は非常に大きい」と述べた。

□「地域作りそのものに関わって」

大島局長はこのほか、サービスの担い手の減少や厳しい財政、認知症の高齢者の増加、生活支援ニーズの拡大、健康寿命の延伸といった今後の課題を踏まえ、地域作りの重要性を繰り返し訴えた。

「介護保険の給付に基づくサービスの展開と、介護保険の給付を使わずに高齢者が地域の中で安心した、充実した暮らしを送れるようにする取り組みとを、バランス良く進めていくことになる。そういう方向へ向かう」と説明。全国の関係者に対し、「ぜひ地域作りそのものに関わって頂きたい。自分の地域はどんな課題を抱えているのか? そうしたことにも関心を持ち、自ら課題の解消を図る地域の主体的な動きを引っ張って頂きたい。それが今後の日本にとって大切なことではないか」と呼びかけた。

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg918.html

新たな社会資源を創出している事例はあるが、補助金の少なさが難点か

2019年8月31から2日間の日程で開催された第13回日本介護支援専門員協会全国大会の初日に、厚労省老健局長の大島氏の基調講演が行われた。

老健局長の講演は、地域包括ケアシステムの構築の重要性を訴える内容であり、地域づくりが今後の日本にとって大切だとした。そのためには医療・高齢者・介護保険サービスの縦軸だけではなく、予防・高齢者・互助の横軸が必要とのこと。

自治体の担当部署以外も加わり、積極的に地域包括ケアシステムの整備をしていくことが、地域共生社会につながり地域づくりになるとのことだ。また自分たちの地域は自分たちの手で、地域に応じた取組みが必要であるとし、積極的に取り組んでいる各自治体の事例が掲載された冊子を資料に添付している。(*1・P16/80~)

(*1)介護保険と地域づくり 令和元年8月31日 厚生労働省老健局長 大島 一博
https://www.jcma.or.jp/wp-content/uploads/190831ooshimakyokutyo.pdf

地域住民やNPO法人、企業が主体となり行っている各事例は、地域で必要な(足りていない)ことを見つけて社会資源を創出している。今後もこうした団体を増やしていくことが大切だとしているが、活動している団体に交付される補助金が少ない。多くの自治体が年間数万円という金額なのが難点だ。

CSRの一環で地域貢献事業に取り組む企業も

活動費が足りていないが継続していくことに意義があるとし、主催者たちが持ち出しで行っている団体もある。これでは新しい活動を始めようと考えている住民は躊躇してしまい、社会や人の役に立つやりがいのある活動だと分かっていても、時間と労力を使い、加えて持ち出し金もあるのでは、活動を始める意欲が薄れてしまう。また現に活動をしている団体も、開催回数を維持していくことが難しくなるのではないかと考える。

しかし企業が主体の団体では、自治体の補助金を使わず経費を全て企業が捻出しているケースがある。この企業は地域貢献事業の一環として行っているとのこと。(*1・P41/80)

地域貢献事業は企業の社会的責任(CRS)活動にあたり、企業価値を高め優良企業を推し量る物差しとして広がりつつある。経団連のCRS実態調査によれば、「地域貢献を含む社会貢献の取組み」は、「製品・サービスの安全・品質」への取組み以上に力を注いでいる企業が多い。(*2・P13/56)

(*2)「CRS実態調査」結果 (公社)企業市民協議会(CBCC)
https://www.keidanren.or.jp/CBCC/report/201707_CSR_survey.pdf

また、今後「地域貢献を含む社会貢献の取組み」を拡大していこうと考えている企業も、「環境への配慮」の次に多い結果だ。(*2・P19/56)

資金を助成する企業も。良いサイクルが形成できるか

地域貢献事業の具体的な方法には、寄付をはじめとする資源(金銭・商品・サービスなど)を直接提供することや、NPO・NGOなど専門性の高い組織との協働・連携を図ることなどが含まれる。

企業ごとに対象団体や助成金額は異なるが、百万円単位で資金を助成している企業もある。住民主体の団体はこうした企業の助成金のことを知っているのか疑問だ。助成金が受けられれば、本格的に地域活動を始めたいと考えている住民も増加していくと考える。

社協の公式サイトでは企業が募集している助成事業を公開し、応援してもらいたい団体が応募しやすいように企業の詳細ページへリンクできるような形で紹介している。(*3)

(*3)最近の助成団体情報 全国社会福祉協議会
https://www.shakyo.or.jp/guide/shikin/sponsor/index.html

自治体も企業の助成金制度を、幅広く住民へ知らせるようにするのは如何だろうか。

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