「データヘルス改革」2025年に向けた新たな計画へ〜医療と介護、理想の情報共有項目とは?

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「データヘルス改革」2025年に向けた新たな計画へ〜医療と介護、理想の情報共有項目とは?

厚労省、AIの開発と社会実装を加速 介護も重点分野 新たな計画を発表

様々なデータやICTを駆使して医療・介護の生産性を高める「データヘルス改革」を進めている厚生労働省は9日、これから2025年度までに展開していく施策を整理した新たな計画を決めた。

AIの開発と社会実装を加速させる取り組みに力を入れる考えを改めて明記。サービスの高度化や現場の負担軽減に結びつける方針を明確に打ち出した。

創薬や画像診断、手術支援などと並んで「介護・認知症」も重点分野の1つだ。これまでのところ、ケアプランの提案や介護記録の作成、見守りなどの領域でAIをうまく活用できると想定している。その実現を阻む障壁を着実にクリアしていくための工程表を、今年度中にも策定する考えを盛り込んだ。

根本匠厚労相は9日の「改革推進本部」で、「人工知能などの技術革新は目覚ましい。世界に先駆けて超高齢社会に直面する我々は、新たな技術をより質の高い医療・介護サービスの提供につなげる必要がある」と述べた。

厚労省はこれまで、2017年度に打ち出した計画に基づいて「データヘルス改革」を推進してきた。この計画が主に2020年度までを見据えたものだったため、今回、2025年度までを念頭に置いた内容へと改定した格好だ。直近の施策やイノベーションの最新動向などを反映させたという。

新たな計画には、入退院時の関係者間の情報共有をよりスマートに、効率的に行えるシステムの構築を目指す構想も描かれた。介護現場の事務負担の軽減や「科学的介護」の実践に引き続き注力する考えも示されている。

https://kaigo.joint-kaigo.com/article-12/pg926.html

データヘルス改革の推進、2025年を念頭においた内容へ

2019年9月9日に第6回データヘルス改革推進本部が開催され、今後のデータヘルス改革の進め方について話し合いが行われた。 医療と介護現場においては過去の医療などの情報が適切に確認でき、より質の高い医療・介護サービスの提供を可能にするため、各情報の利活用の実現を目指す。

情報とは、薬剤情報・健診情報・診療情報である。いつでも過去の診療記録などが参照できる仕組みにすることで最適な医療が受けられるほか、重複投薬などの適正化や入退院時の迅速な情報共有ができるようになるとのことだ。 (*1・P16/19)

(*1)今後のデータヘルス改革の進め方について(概要)
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000545973.pdf

介護老人保健施設では施設長である医師が入所者の主治医のため、医療も施設内で行われる。しかし専門医の診察や老健で行えない検査が必要だと施設医師が判断した場合、病院受診(他科受診)をすることになる。

その際、施設医師が診療情報提供書を作成し、これを受診する病院の医師へ渡してもらい情報共有を行うのだ。診療情報提供書は、いわゆる紹介状にあたる書類である。診察が終わると、今度は病院の医師が作成した施設宛ての診療情報提供書を持ち帰り、施設医師や看護師、薬剤師が情報共有を行うという流れだ。

スムーズなデータ共有に一役買うか

施設医師が作成した診療情報提供書には、現在の状態や血液検査・尿検査・心電図など必要に応じて行った検査の結果、他科受診が必要になった経過などの情報が書かれている。そして病院の医師が作成する書類には、診察や検査をした結果や医療処置行為、対処法、処方薬など、医療・療養で必要な情報が書かれているため、どちらも大切な書類である。

しかし受診に付き添う者への渡し忘れや、病院からのもらい忘れ、受診日が急に変更になるといったことがあり、後から渡しに行く・もらいに行くといったことが起きる。

また病院を退院する者が施設へ入所、または通所リハビリを利用する際には、診療情報提供書に加えて看護サマリーやリハビリサマリーがあると情報を得やすく、適切なサービス計画を立てやすい。

そのため入院中に施設サービスの利用の申し込みがある場合は、施設側から病院へサマリー類が必要だと伝え用意してもらう。しかしサマリー類は発行してほしいと伝えなければ用意してもらえない書類のため、退院後に施設サービスを申し込んだ場合、サマリー類が間に合わないことがある。

今後データヘルスケア改革で容易に情報共有ができるようになれば、診療情報提供書の作成が不要になる。さらにサマリー類の情報も共有されれば、書類をもらわずに退院した者も、書類をとりに何度も病院へ足を運ぶ必要がなくなるほか、サービス開始までに必要な情報を収集することができる。

介護情報との連携について、データ項目などの精査が検討されていくとのことだが、診療情報提供書に記載される内容・看護サマリー・リハビリサマリーと同等の項目も情報共有できるようになるのが理想だ。

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