厚労省「介護現場革新会議」を発足!介護現場の負担軽減に繋がるか

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厚労省「介護現場革新会議」を発足!介護現場の負担軽減に繋がるか

平成30年12月11日に厚生労働省の中央合同庁舎第5号館省議室で行われた「介護現場革新会議」では、高齢化に対する介護現場での効率的な業務運営に係る研究や好事例を把握・分析し、それらを介護現場の革新に資する取組として横展開するとした。(*1)

(*1)「介護現場革新会議」開催要綱
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000453331.pdf

厚労省、「介護現場革新会議」を発足 業務の切り分け・介護助手の活用など推進
厚生労働省は11日、「介護現場革新会議」を立ち上げて初会合を開いた。

今後の更なる高齢化に耐えられる体制の整備に向けて、業務の効率化や職員の負担軽減を実現する具体策を話し合う。高い専門性が必要な仕事とそうでない仕事を切り分け、介護助手などを有効に活用していくマネジメントを広める手立ても俎上に載せる。年度内に「現場革新プラン」をまとめ、その後の取り組みに反映させていく。

「生産年齢人口が急激に減っていくなか、サービスの質を落とさずに介護ニーズの増大に対応していく必要がある」。会議に出席した根本匠厚労相はそう述べた。

まずは施設で実践できることから議論を進めていくという。委員も特養や老健の団体の関係者らで構成されている。

介護助手の活用は、例えば掃除や整頓、ベッドメイキング、配膳・後片付け、書類の整理などをシニア層らに任せる構想だ。一線を退いた人などが活躍できる場の確保につながる、というメリットも指摘されている。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg86.html

今回は、「介護現場革新会議」の「生産性向上(介護労働の価値を高める)の取組み」(*2)について考察してみようと思う。

元気なシニア層の取り込み

介護現場革新会議具体的な検討テーマの1つ目を、「業務仕分け・ロボット・ICT・元気高齢者活用の三位一体型効率化」としている。(*2)

(*2)介護現場革新会議(第1回)資料「介護人材対策について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/000453332.pdf

介護施設における働き方改革の取組では、地域の元気な高齢者を「介護助手」として育成し、介護職場への就職を支援するとしている。
これにより、介護人材の「すそ野の拡大」「人手不足の解消」「介護職の“専門職化”」が狙いだ。

元気な高齢者にとってもやりがいを感じられると考えるが、業務内容が気になるところである。「介護助手」ということはシーツ交換やお風呂掃除、体位交換の補助などの重労働も含まれる。
就職をした事がマイナスにならないよう、各施設においては元気な高齢者の身体に負担が掛からない業務内容を振り分けていただきたい。

また、利用者の家族の中には入所していることを知られたくないという者もいる。地域の人材を考えているのであれば、個人情報の取扱いについても慎重に行っていただきたい。

本当に職員の負担が軽減されるか

ICT化については、雑多な記録作業が簡素化されればそれに越したことはない。重複しているのではないかと思われるいくつもの記録が音声で入力されてしまえば、かなりの時間短縮が見込まれる。
ただし、PCなどに自動記録された帳票を印刷し各部署の押印をもらう事を忘れ、実地指導の時に慌てるような顛末になる事は避けたい。

また、インカムを使用し同時に複数のスタッフへ情報が伝えられれば、緊急時の伝達がスムーズに行えるだけでなく、普段も他の職員を探すために施設内を駆け回る無駄な時間が減ることになる。
両手が使えるインカムは介助の手を止めることなく応答できるため、早急に活用したいアイテムである。

今回の会議では、いずれ介護ロボットに見守りやトイレ誘導、介護業務支援、動作支援、生活支援などを行ってもらう計画のようだが、利用者が怖がらない範囲でお願いしたい。

ロボット導入に対する懸念点

現実には、介護助手を目的とした、ヒト型ロボットの開発も進んでいる。

AI搭載の「アイオロス・ロボット」、日本初上陸 “介護助手”として展開へ
サンフランシスコに拠点を置くアイオロス・ロボティクスが11日、人間の仕事を支援するAI搭載の「アイオロス・ロボット」を日本でも展開していく計画を発表した。

ターゲットに選んだのは介護の現場。サービスの需要の拡大や人手不足の深刻化などを踏まえ市場の将来性を見込んだ。アレキサンダー・フアンCEOはプレゼンで、「施設での運搬や回収、片付けなど幅広い仕事をサポートできる。業務の効率化や負担の軽減につなげられる」と述べた。

既に国内で実用化に向けたテストを始めている。11日から販売代理店の募集を開始した。来年4月からサブスクリプションの予約を受け付け、8月にも提供を開始する予定。価格は月額15万円。

ヒト型の「アイオロス・ロボット」は自律走行が可能。カメラやセンサを通じて周囲の環境を学習し、そこに誰がいるか、何があるかを見分けられる。急に倒れた人がいるなど、異常を察知するとすぐアラートを出す。長い2本のアームはモノを持つ、拾う、置くことができ、ドアも開けられる。AIが学んだ情報はクラウドからロボット間で共有される。音声で指示を与えることも可能。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg88.html

大前提として、ロボットのセットアップや故障時の対応も時間が掛かってはいけない。
それは頼る分だけロボットを1として頭数に含めるため、故障=欠勤と同じ状態になり介護職員にシワ寄せがきてしまうからである。
ロボットのサポート企業の体制も同時に整えていかなければならないだろう。

そして一番重要なことは事故が起きた時の対応と責任の所在である。
ロボットがトイレ誘導や見守りの警告音を鳴らした時に、事故が起きた後の状態であったという事は避けたい。

その場合、事故が起きた時に市町村や県へ提出する事故報告書には一体何と記入するのであろうか。利用者も家族も、「ロボットが見守りをしていました。」という内容説明で納得するのであろうか。

どの施設も事故を予防して無くすための活動をしているが、今後はロボットの動きを熟知することを議題に取り上げていく必要があると考える。

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