介護予防の新事業、専門職のいる魅力的な通いの場とは?

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介護予防の新事業、専門職のいる魅力的な通いの場とは?

国は、加齢により心身機能に衰えが出てくる(フレイル状態)後期高齢者の支援を両者が共同して実施し、元気な高齢者を増やしていこうという取組案を、第116回社会保障審議会医療保険部会(*1)で固めた。
今回はこの元気な高齢者を増やし、健康寿命を引き上げる取組について考察したい。

(*1)高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議 報告書について
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000437250.pdf

介護予防の新事業、枠組み固まる 市町村が展開 専門職を置きサロンを高機能化
今後の最重要課題と位置づける健康寿命の延伸に向けた具体策の1つだ。もっと効率的で高い成果の出る仕組みに改良する狙いがある。

厚生労働省は6日、介護保険の介護予防と医療保険の保健事業を一体的に行う新たな取り組みのスキームを固めた。住民と距離が近い市町村が実施主体となり、地域支援事業の“通いの場”で専門職によるフレイル対策なども併せて展開していく。後期高齢者医療制度の保険者(広域連合)や国が費用を出し、保健師や管理栄養士、歯科衛生士などの配置を実現する。よりシームレスなデータの共有や課題の整理が可能となるよう、ルールを見直して保険者どうしの情報連携の自由度も高める。

社会保障審議会・医療保険部会の会合で提案し、委員から大筋で了承を得た。近く介護保険部会にも報告して正式に決める。来年の通常国会に関連法の改正案を提出する予定。スムーズにいけば2020年度から本格的に推進できるようになる。

介護予防には医療の視点が欠けている一方で、保健事業は健診ばかりで社会参加の要素が乏しい − 。厚労省の問題意識だ。制度間の縦割りで別々に進められている現状は、貴重な地域資源を有効に活かすという観点からも好ましくないとみている。両者をうまく結合させ、ウィークポイントをお互いに補い合う形で合理化を図ろうと、有識者会議を設けて9月から検討を重ねてきていた。

厚労省は部会で有識者会議のレポートを説明。これを受けた委員からは、現場に無理が生じないようにフォローしつつ展開するよう求める声があがった。

新たな取り組みの表舞台は地域支援事業の“通いの場”だ。コミュニケーションや体操・運動といった従来のメニューに加え、病気の予防、重症化の防止、口腔ケア、栄養指導、健康相談なども盛り込んで高機能化を進める。身近な地域で必要なサービスをトータルで受けられる環境を作るという。専門職の配置に必要な財源は、後期高齢者医療制度の保険料などを使う。保険者間の情報連携の強化により、優先的に支援に入るべき高齢者を抽出して誘い出したり、圏域の健康課題を把握・分析したりする精度を高めていく。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg75.html

後期高齢者医療保険制度の実際

75歳の誕生日当日に切り替えられる後期高齢者医療保険制度は、各都道府県に1団体設置されている広域連合が運営している。
平成20年4月から開始されたこの制度、「高齢者の心身の特性に応じ、健康教育、健康相談、健康診査及び保健指導並びに健康管理及び疾病の予防に係る被保険者の自助努力についての支援その他の被保険者の健康の保持増進のために必要な事業を行うように努めなければならない」こととされている。(*2)

(*2)後期高齢者医療制度の保健事業について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000200932.pdf

しかし、国民健康保険の保険者であった市町村と(※厳しい財政状況を理由に平成30年4月から都道府県に変更になっている)これまで接点がなく、後期高齢者被保険者の受診状況などの情報提供が行われていなかった。

また、広域連合と市町村が主体として行う介護予防日常生活支援総合事業とのつながりもなく、広域連合が行ってきた取組は健康検診程度であったとのこと。

本当に現実に寄り添った取組案なのか

医療専門職が積極的に関与して取組に加わることは非常に効果があるが、問題は対象者と場所である。
国が今回の取組で対象としているのは、主に外来を中心とした在宅療養中の高齢者とフレイルが顕在化しつつある虚弱な高齢者である。

そして取組を行う場所を、一般介護予防事業(住民主体の通いの場)やショッピングセンターなどの生活拠点としている。
ここに疑問が湧かないだろうか。

既に在宅療養中やフレイルが顕在化している高齢者が、通いの場やショッピングセンターへ出かけられるとは考えにくい。
送迎などがあればまだ良いが、出かける支度をするだけでも大変な状態の高齢者が、果たして参加できるのであろうか。

また、閉じこもりがちな高齢者も参加が難しい。
認知症状や疾患などが原因で閉じこもっているとすれば、誰かが声を掛けて参加の場所へ連れ出さなければ参加は皆無に等しい。
しかし、声をかけてもスムーズ連れ出せるとは限らない。

健康寿命を引き上げるためには

昨今は老人世帯や独居世帯が増加している。このような世帯では、外出が非常に困難になっているのが現状だ。
今回の取組案では、医療専門職の介入も大切だが、そこに至るまでの通いを支援する者の介入が必須である。

フレイルは早期発見で改善できる可能性が高く、医療専門職からのアドバイスは皆真摯に受け止める傾向にあるので、健康寿命を引き上げる効果も期待できると予測する。
気軽に医療専門職と関わりを持てる場の提供は非常に良いが、国と広域連合が予定している高齢者の健康状態に即した効果的な取組が、一人歩きしないことを願う。

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