介護現場に外国人受け入れ!但し、訪問介護は受け入れNGか?

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介護現場に外国人受け入れ!但し、訪問介護は受け入れNGか?

来年4月から、介護士が在留資格の特定技能に新設されるが、国の運用方針案によると「訪問介護」の提供はできない方向で進められている。
これは利用者とのトラブルを避けるためであるとのこと。そこで今回は、外国人介護士と訪問介護について考察してみた。

介護の外国人受け入れ、「日本人の常勤職員の総数」が上限 運用方針原案
外国人労働者の受け入れ拡大に向けて来年4月に新設される在留資格「特定技能」をめぐり、厚生労働省が検討している介護分野の運用方針の原案がわかった。

事業所ごとの受け入れ人数の規制を盛り込んでいる。「特定技能の外国人は、事業所単位で、日本人の常勤介護職員の総数を上限とする」と明記した。現場で求められる知識・技術を有しているか確認するため、「介護技能評価試験(仮称)」に合格することを来日の要件とする考えも提示。この試験はパソコンで回答する方式(CBT)をとり、国外で現地語により実施するとしている。

原案は19日の自民党の厚生労働部会で議論される。政府は今週中にも与党の了承を得られるよう調整を進めていく。年内には正式に決める予定。

外国人のコミュニケーションスキルについては、「日本語能力試験(N4)」や新たに設ける「介護日本語評価試験(仮称)」で確認するとした。厚労省は新試験で求める日本語のレベルをまだ明確化していない。

このほか原案では、来年度から2023年度までの受け入れ見込み数を国会に提示した規模と同じ「最大6万人」とし、「これを向こう5年間の受け入れの上限として運用する」と記載した。日本の介護福祉士の養成校を卒業した人について、国家試験に合格していない状態でも「特定技能」で仕事に就けるようにする方針も盛り込んだ。現行の技能実習と同じように、訪問系のサービスを「特定技能」の対象から外す考えも示している。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg97.html

訪問介護員の離職率の高さ

現在介護現場ではどこも人手不足であるが、訪問介護も例外ではない。
(公財)介護労働安定センター「平成25年度介護労働実態調査」事業所における介護労働実態調査(*1)によると、訪問介護員の正規職員の離職率は81%で、訪問以外の正規介護職員の離職率69%を大きく上回っている。
また、訪問介護員従業員の過不足状況においては、不足・大いに不足と答えている事業所が42%と、こちらも訪問以外の介護従業員の過不足状況22.7%を大きく上回っている。

(*1)介護労働者の現状
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000071241.pdf

この要因は離職率が高く新規採用が難しいからだ。
訪問介護員の構成は、正規職員が17.5%・非正規職員が79.0%、年代別にみると60歳以上の訪問介護員が31.6%となっているが、勤続年数が他の介護職員同様に短い。

そのため本来なら新しい人材を確保していきたいところだが、今回の特定技能で入国する外国人の介護員の確保は期待できない結果となりそうだ。
新たな人材を確保しようにも国の運用方針は施設の介護職員の補充に向けた取組みばかりで、訪問介護事業所には無関係な内容である。

訪問介護員の補充は急務

2011年に地域包括ケアシステムを導入し、2015年には特養の入所要件を要介護3以上に限定と制度を改正し、地域社会で自立した日常生活を継続するといった見直しが介護保険制度改正のたびに行われてきたが、在宅での暮らしを支える要となる訪問介護員の不足は早急に解決したい問題だ。

確かに外国人一人で利用者の自宅へ伺い、状態の変化などを上手く報告できないようなことや、言葉の意味を間違えて捉えてしまい誤ったサービス提供をするようなことがあってはならないが、外国人が日本の習慣を学ぶ上では訪問介護員の業務は最適である。
施設では感じることのできない日本の高齢者の生活が垣間見れれば、施設での業務にも役立つ場面が必ずあるはずだ。

複数人の現場から始めるなど対策を

また、一人で対応しない訪問入浴の訪問介護であれば、外国人介護員の受け入れができるのではないだろうか。
訪問入浴には必ず看護師が同行する、もしくは看護師不在の場合は介護士3名で訪問することになっている。
この体制であれば、訪問入浴では問題がないように思われる。

訪問介護員は地理の把握や自動車運転免許なども必要になってくるが、いずれ訪問介護の現場でも外国人介護士が活躍する場を設けていただきたい。

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