東京都選択的介護モデル事業|デイサービスと在宅支援を混合させる必要性に疑問

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東京都選択的介護モデル事業|デイサービスと在宅支援を混合させる必要性に疑問

東京都、混合介護の展開へ「現行制度の枠を超えたい」 通所の規制緩和を要請へ

保険が適用されるサービスとされないサービスを組み合わせる「混合介護」の展開に向けて、東京都と豊島区は、現行の規制の緩和を年度末にかけて国に求めていく方針を固めた。ターゲットに据えたのは、一定の人気や知名度があり地域の高齢者を集める機能を持つデイサービス。より有効に活用していく観点から、一歩踏み込んだモデル事業を来年度から新たに始めたいという。26日に開催した有識者会議で明らかにした。

「特区制度を活用し、今の制度の枠を超えて行いたい。年明けには関係省庁との協議を始め、年度内に特区区域会議へ提案することも視野に作業を加速していく」。東京都福祉保健局の幹部は会合でそう述べた。

混合介護をめぐっては、厚生労働省が今年9月にルールを改めて明確化するための通知を出している。東京都と豊島区は、この通知が認めていない領域のサービスの実施を目指して働きかけていく。

例えば、通所の外出支援とセットで個別の用事に対応するサービス。役所や金融機関、病院、薬局などに立ち寄ることを想定している。高齢者が通所を利用しない日に、介護職員や送迎車両の空き時間を使って外出をサポートするサービスも試したいとした。これらを有償の運送サービスとして提供する場合、「二種免許」が必要など道路運送法上の規制がネックとなる。

このほか、通所の事業所で薬剤師に活躍してもらうモデルも想定。利用者の健康状態をみて必要なアドバイスをしたり、実際に薬を手渡したりする構想を描いている。これを具現化するためには、薬剤師が業務を行う場所などを定めた薬剤師法の規制緩和が必要だ。

東京都と豊島区はこうした混合介護を、利用者・事業者の選択肢の増加、利便性の向上、地域資源の有効活用につながるとして提案していく。今年9月の時点では異なるサービス形態も俎上に載せていたが、事業者へのヒアリングの結果や利用者のニーズなどを勘案して内容を修正した。もっとも、国がほとんど容認せず態度を硬化させる可能性もある。都の担当者も「ハードルは高い」と漏らしており、どこまで実現されるかは不透明な情勢だ。

https://articles.joint-kaigo.com/article-9/pg108.html

選択的介護モデル事業の導入に向けた検討

東京都と豊島区が2018年12月26日に、「第7回選択的介護モデル事業に関する有識者会議」を行った。
これは、選択的介護モデル事業の実施にあたり、公平公正かつ客観的な立場からの意見を徴するため2017年6月に設置された。

選択的介護モデル事業は、介護保険サービスと介護保険外サービスを区分せずに組み合わせて提供することで、利用者の多様なニーズに対応したサービスの提供とサービス事業所側の運営効率の改善を目的にした新しい取組みであり、現在導入に向けた検討を行っている。

今回の有識者会議で再検討された「H31新サービスモデル」によると、下記3点が有望テーマとされている。

(1)デイサービスの機能を活用した高齢者の在宅生活支援
(2)デイサービスの場を活用した高齢者の健康・療養支援
(3)AI等を活用した生活リズムの維持・回復支援とお手軽リハ提供

※引用:H31新サービスモデルの検討について|2018年12月26日 第7回 選択的介護モデル事業に関する有識者会議

この中のデイサービスの機能を活用した高齢者の在宅生活支援では、デイサービスの外出支援と組み合わせて日常で必要な用事への対応支援を提供するサービス(サービス提供時間内の必要な支援として提供)と、デイサービス利用者のデイサービスを利用しない日の外出(用事)を支援するサービス(デイサービスの車両、運転手等の空き時間等を利用)が想定されているが、わざわざモデルコンセプトとして取り上げる必要があるのか疑問だ。

外出支援についてあえて取り上げる必要はあるのか

デイサービスでは既にレクリエーションの一環で、買い物や公園・観光地など利用者の行きたいところへ外出を行っている事業所はある。
他にも訪問介護のヘルパーが付き添いをして、近隣への外出サービスを行っている。

個別のニーズに答える外出先となると、個々別々の場所へ出かけることを想定しているのだろうが、サービス提供時間内の支援として提供するとなると、いったい1日に何人の利用者がこのサービスを受けられるのであろうか。自分の順番が回ってこないと利用者からの不平不満が上がりそうだ。

また、利用日ではない日の送迎車を使用した外出支援にしても、道路運送法の規制緩和を求めてまですることだろうか。
デイサービスの事業所によるが、入所やショートステイのサービスも行っている場合、通所の送迎以外に入所者の病院への送迎、ショートステイ利用者の送迎、緊急受け入れ時の送迎などもある。
病院受診や緊急ショートステイなどは何時送迎することになるか予測が立たない。

現実的とは言い難いモデル

100床ある施設などでは、常勤のドライバーが3人いれば1日2~3人の外出支援を行えると予測するが、ドライバーの多くは通所の送迎時間に勤務するパートタイマーの職員であるため、今回想定されている空き時間はない。
このため入所施設を持つデイサービスが外出支援サービスの提供を行う場合には、専門のドライバーの確保が必要である。

この利用日以外の外出支援も、現行の介護タクシーで充分であると考える。
介護保険が利用できる介護タクシーではドライバーが介護職員初任者研修の資格を保有しているため、ベッドから車までの移乗や目的地までの移動までをサポートしてくれる。
その他にも、買い物や着替え、食事、掃除などの生活援助を実施している事業所もある。

今回の「H31新サービスモデル」であるが、もう少し再検討していただきたい。

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